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[4万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』① 元服と婚姻と四州近衛家

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『伏見宮』の再定義③


 しばらく、誰も口を開かなかった。

 主上の言葉は、あまりにも重かったからだ。

 やがて… 方仁親王が静かに言う。


「ですが主上。それでは、再び皇統男子が減ります」

「……うむ」

「伏見宮だけでは、五百年先までは持たぬでしょう」


 その瞬間、。主上の目が、静かに細められた。


「だから変える」


 空気が止まった。


「これより先、天皇家男子は、基本的に仏門へ入れぬ」


 私は思わず顔を上げた。

 『はるちゃん』も息を呑む。

 それは、この時代では、かなり大きな転換だった。

 皇家男子が出家するのは、長い伝統。

 政治争いを避け、皇位継承権を整理する意味もある。

 だが。


「それでは、皇統そのものが細る」


 主上は、はっきり言われた。


「戦乱。病。夭折」


 静かな声。


「この国は、あまりにも人が死ぬ」


 ……重い。

 だが真実だ。

 戦国時代の平均寿命は短い。 子供が成人するだけでも難しい。

 その中で、 皇家男子を自ら減らしていては、 いずれ行き詰まる。

 方仁親王が静かに頷く。


「つまり」

「うむ」


 主上は続けられた。


「皇統男子は、宮家として残す」


 『はるちゃん』が小さく目を見開く。


「新たな宮家を……?」

「必要であれば、増やす」


 私は戦慄した。

 この人。

 本気で“未来の皇室制度”を作り替えようとしている。

 主上は静かに言われる。


「伏見宮のみでは足りぬ」

「ならば、新たな枝を作る」


 方仁親王が問い返す。


「ですが、枝が増えすぎれば争いになります」

「ゆえに、役目を分ける」


 主上の声は落ち着いていた。


「本流。伏見宮。そして新宮家。それぞれ、皇家を支える柱とする」


 『はるちゃん』が呟く。


「まるで大樹ですね……」

「うむ」


 主上は微笑まれた。


「幹が一本では、嵐で折れる」


 だから。


「枝を持つ」

 

 私は、令和を思い出していた。

 もし…

 もし本当に、この時代からそうした制度が続いていたなら。

 未来の“旧宮家問題”は、かなり違う形になっていたかもしれない。

 そもそも『伏見宮』系統は一枝のみ残される。

 その結果、令和でいう伏見宮系統の『旧宮家』は存在しなくなるだろう。

 この世界線では、宮家は天皇の直系のみになる。

 仮に途絶えかけても、宮家には常に天皇の直系男子が配される。

 常に天皇家の近しい男系男子によってそれは維持されていく。

 『宮家』の形が自分の知る形と変わっていく。


 これによって、五百年先の日本の分断を防ぐことができる可能性もある。


 主上がこちらを見る。


「稀仁」

「はい」

「其方の四州近衛家も、その枝の一つよ」

「……皇家の?」

「そうだ」


 私は言葉を失った。

 武家なのに。公家なのに。なのに、皇家の枝として扱われている。

 方仁親王が静かに補足する。


「ただし、四州近衛家は特殊です」

「特殊?」

「皇統男子を出す家ではない」


 その代わり。


「皇家女子を受け入れ、また皇家へ返す」


 血を循環させる役目。

 閉じすぎないための外殻。

 後奈良天皇が小さく笑われた。


「いずれ後世の者達は、“なぜ皇家が続いたのか”を議論するであろう」

「……はい」

「だが実際には、こうして泥臭く繋いでいくしかないのだ」


 その言葉が、妙に胸へ刺さった。

 神話でも奇跡でもない。

 制度。婚姻。養育。政治。

 人間達が必死に考え、守り、繋いできた結果として、皇家は続く。

 『はるちゃん』が、ふと柔らかく笑う。


「でも、少し安心しました」

「何がです?」

「もし男子が皆、仏門へ入るままだったら」


 彼女は静かに言った。


「未来は、もっと苦しかった気がします」


 主上は、ゆっくり頷かれた。


「余もそう思う」

 

 そして。


「だから、今ここで変えるのだ。五百年後、国を二つに分けぬように」


 その声には、戦国の混乱の中でも、未来へ道を残そうとする強い意志が宿っていた。


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