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[4万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』① 元服と婚姻と四州近衛家

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『伏見宮』の再定義②



 沈黙が落ちた。

 だがそれは、重苦しいものではなかった。

 もっと静かな、長い時間を見据える者達の沈黙。

 主上は、ゆっくり茶を口にされる。


「四州近衛家は、いずれ皇家へ取り込まれていくであろう」


 静かに、だがはっきりと言われた。

 私は目を瞬かせた。


「……取り込まれる?」

「うむ」


 主上は頷かれる。


「最初は武家でよい。公武の橋であればよい」

 けれど。

「百年。二百年。三百年と続けば、血は混ざる」


 方仁親王が静かに続けた。


「娘は皇家へ。宮家へ。親王家へ嫁ぐ」

「その子らは、再び皇家の血となる」


 私はゆっくり理解していく。

 つまり。

 四州近衛家は、独立した巨大武家として残すのではない。

 むしろ逆。

 時間をかけて、皇家へ還していく。

 方仁親王が静かに言う。


「其方の家は、“外にある皇家”になる」


 背中に冷たいものが走る。


「外にある……皇家」

「完全な宮家ではない。されど、皇家と切り離せぬ家」


 その言葉は、どこか伏見宮に似ていた。

 だが違う。

 伏見宮は皇統男子を残す家。

 一方、四州近衛家は、女子を通じて皇家へ血を返していく家。

 主上が静かに言われる。


「皇家は、閉じれば弱る」

「……」

「されど開きすぎれば、皇家ではなくなる」


 だから。


「近すぎず。遠すぎず。繋ぎ続ける」


 その均衡。

 それこそが、数百年続く家に必要なもの。

 『はるちゃん』が、少し照れたように笑う。


「つまり私達の子供達は、かなり大変そうですね」

「間違いなくな」


 方仁親王が即答した。


「特に女子」

「やっぱりですか……」


 私は頭を抱えたくなった。

 娘達、絶対に幼少期から縁談が飛び交う。

 しかも相手が。

 皇家。 宮家。 摂関家。

 政治的重量が重すぎる。

 後奈良天皇が少し笑われた。


「まあ、其方に似れば案外うまくやるやもしれぬ」

「どういう意味ですか」

「諦めが早い」

「ひどい」


 『はるちゃん』が吹き出した。


「でも少し分かります」

「『はるちゃん』まで!?」

「よし様は、覚悟を決めると急に達観しますもの」

 

 否定できなかった。

 戦国を生きてると、ある瞬間から“もう腹を括るしかない”となることが多い。

 方仁親王が、ふと真面目な顔になる。


「ですが」


 その声は静かだった。


「これは、血を利用するという話ではありません」

「……」

「“残す”のです」


 その言葉に、私は顔を上げた。


「五百年後、形は変わるでしょう」

「はい」

「男系という言葉も、女系という言葉も、今とは違う意味を持つやもしれぬ」


 未来では、制度も価値観も変わる。

 けれど。


「それでも、“この国と共に続いてきた家”という記憶は残る」


 主上が静かに頷かれる。


「皇家とは、血のみではない」

「……」

「人々が、“この国の象徴”として受け継ごうと願う心。それもまた、皇家を支えるものよ」


 私は、令和の景色を思い出していた。

 災害の時、静かに被災地へ向かわれる天皇。

 国民に寄り添おうとされる姿。

 あれもまた、“続いてきたもの”だった。

 主上は、窓の外へ視線を向ける。


「だから余は、血を残すだけでは足りぬと思っておる」

「はい」

「“皇家が皇家であり続ける理由”も、共に残さねばならぬ」


 その言葉は、妙に胸へ響いた。

 戦国の、困窮した帝。

 武力も金もないと言った人。

 けれど…

 五百年後まで続く“何か”を、確かに見据えている人だった。


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