御簾の中
どうやら『身内』(この場合は『はるちゃん』)の出入り口から入るらしい。
え? 自分も入っていいの? かなり躊躇したけど、まあ、一応『身内』扱いになるのだとか。
えっと身なりは一応正装。つまり『束帯』。十一歳とまだ子供だけど、『元服』してるし、成人扱いだ。
今回は大活躍してる。用意してくれた『近衛家』にか感謝だ。
『はるちゃん』も『降嫁』はしたものの『天皇の娘』。身なりは、唐衣装といわれる、いわゆる十二単を身につけている。
そんな状態で『輿』に乗ったり、移動したりっていうのはかなり大変なのだ。自分もだけど『はるちゃん』も服に着られてる状態だ。
エスコートってほどじゃないけど、お互いに転ばないようにと思って、手を繋いで移動した。
ある部屋の前に着くと『はるちゃん』がついてきた人たちを下がらせた。
どうやら二人だけで部屋に入るらしい。
「永寿でございます」
『はるちゃん』がそう小さいけれどはっきりとした声で名乗ると、すっと襖が開けられた。
促されて二人で入ると、襖を開けてくれた侍従さんが入れ替わるように外へ出ていった。
三部屋ほどが襖が開け放たれた状態で、奥の部屋は御簾によって仕切られていた。一番離れたところから挨拶しようとしたら、御簾の中から「そんなところでは話せぬではないか」と叱られた。
『はるちゃん』はクスッと笑うとそのまま御簾の中に入ってしまった。
え〜! 『はるちゃん』、そっちいっちゃうの?
びっくりして立ち止まると、再び
「稀仁もこちらへ入れ」
と。指名された。まじ?
躊躇しまくっていると
「そなたにとって朕は『義父』であろう? 中で顔を見せてくれぬのか?」
ここまで言われてしまうと、拒否もできない。
かと言って、そう簡単に『主上』の尊顔を拝してもいいのか、脳内の『長慶おじさん』かなり躊躇してる。
『令和のおばちゃん』的には『天皇家』の皆さんの顔を見るということにはそれほどためらいはないのだけれど。『長慶おじさん』的にはありえない状態に置かれてしまったみたいだ。二人の意思が統一されていないからか、その場で立ち尽くした状態でフリーズしてしまった。
そんな夫に痺れを切らしたのか、『はるちゃん』が御簾の中から出てくると、私の手を掴むとそのまま御簾の中へと引き入れてしまった。
おかしいな? なんで自分はここにいるんだろう…




