『輿』の中の女子会?
実は『はるちゃん』から、今日の参内は自分たち二人だけでと主上から直々に言われていたと聞いたのは昨日の夕食の時。
実父海雲もだけれど『近衛家』の義祖父や義父も互いに顔を見合わせたが、何か思うところがあったのか、主上の思し召しということもあり、まあ、問題ないやろということで『夫婦』二人で参内することになった。
乗り物は婚儀の時に使われた『皇家の紋』と『四州近衛家』の紋の入った輿だ。
促されて中に入ってみると、結構大きく作られていた。
子供の二人が乗るだけだ。十分過ぎる広さだった。
輿の担ぎ手は『皇家』の者らしく、話は通っていたのか、自分たち二人が輿に乗り込むとすぐに出発した。
そういえば『輿』に乗ったのは初めてだなと思った。『近衛家』が参内したときは牛車を使ったからだ。それに比べると、担ぎ手たちもその道のプロ? なのか、振動しない。させないぞという強い意志を感じさせるような見事な担ぎっぷりだった。
まあ、子供二人だけだったから軽かったというのもあったんだろうけど。
『輿』の中は『はるちゃん』と女子会みたいなノリになっている。
中身は彼女から見れば祖母か曽祖母くらいの年齢かもしれないけれど、一応『令和のおばちゃん』だ。
『昭和』『平成』『令和』の女性の身なりのお話くらいはできる。娘も育ててたし。
『阿波国』のトレンドの話もしたよ。
皆、眉毛剃ってないしお歯黒もしてない。って言ったらびっくりしてた。
その要因を作ったのが自分で。自分の母親のその顔にビビって何度も泣いたことで『阿波国』では成人しても既婚しても眉剃りとお歯黒はしないことになった。そう話すとぷわっと可愛らしく吹き出す『はるちゃん』。
自分も京では仕方ないから、これ(眉剃り、お歯黒)だけど、『阿波』に戻ったら戻すんだ!と言い切ると「私もそうするわ。怖いんでしょ?」そういうとコロコロと笑い出した。
「うん。怖いの。ほんとに。夜とか、蝋燭のほのかな灯りだともっと怖い」
「今でも怖いの?」
「うん、怖い。ここでは我慢してるけどね」
「そうなの?」
「本音でいれば、やめてほしい。なんでそんなことするのかわけわかんない。眉大事よ。お歯黒も。虫歯対策にはなるみたいだけど。あれで、夜笑われたり。ニタリとされると、ビビっちゃうよ」
「そうなのね。だから、いつも微妙なのね」
「もちろん、虫歯対策は大事だから、歯ブラシ作ったし、歯磨き粉も作ってるよ。薄荷味だけどね」
「それなら、献上すればいいのよ。この前も『おしろい』は体に良くないからって『阿波』のをくれたでしょ? あれも献上してくれれば皆使うと思うわよ」
「そうなのかな。じゃあ、一緒に考えてくれる?」
「そうね。楽しみだわ。『阿波』ってどんな感じなのかなって」
「そう言ってくれると嬉しいな」
と、こんな会話を交わしていると『輿』が止まった。どうやらついたらしい。先に降りると、前回『近衛』の義祖父たちと来た時とは違うところに降ろされたらしい。
あれ? と思いつつ、『はるちゃん』に手を差し伸べて『輿』から降りるのを手伝うと、「ありがとう」と満面の笑みで返してくれた。
勝手がわからず立ち尽くしていると、「こちらから」とついてきてくれた侍従さんらしき人から案内された。




