睦言:『婚姻の儀』①
白無垢姿の『はるちゃん』は『令和のおばちゃん』的にもドキッとするほど綺麗だった。
『はるちゃん』は『御簾入り』の時は儚げな美少女だった。緊張していたのもあっただろうし、夫になる人の顔も知らない状態でのことだ。ところが、入ってきたのはまだ第二次性徴期前の子供だった。(いや、多少は身長とかは伸びかけてきてるけど)。つまり、身の危険を感じなくていいというのが緊張が解けた理由だった。それからはちょっとお姉さん風を吹かせていた。『令和のおばちゃん』的にはそれはそれで可愛いものだ。
『爆弾(『稀人』)』を何発も落としてくれたけどね。
『三々九度』や『祝膳』の後は『床入り』。前回同様、緊張感はない。
そのまま寝ちゃうのかなって思ってたら、この時を待っていたとばかり『はるちゃん』がサイドの『爆弾投下』を始めた。
「おもう様 (お父様)に叱られたの。だから今日は話してもいいことだけを話すわね」
えっと、つまり主上に叱られたってこと? まあ、だよね。っていうか、話すことが前提なのか。おいおい。
「そうですか。では昨日のことは忘れた方がいいですか?」
「大丈夫みたい。とりあえずは」
とりあえずは? かーい! 突っ込みそうになったよ。
「えっとね、『石板』のお話したでしょ? あれのことなんだけど、『豊聡耳皇子』が皇家に生まれた今の所最後の『稀人』様なの」
「『豊聡耳皇子』? どこかで聞いたな。あれ? もしかして『聖徳太子』?」
「そう、そうともお呼ばれになっていらっしゃるわ。もしかして『令和』の時代でも有名なのかしら」
「有名… まあ、お札(高額貨幣)になる程だからね。『十七条の憲法』(日本最初の律令)とか『冠位十二階』と作った人だよね」
「そうなのね。さすがだわ」
ちょっと夢みがちな『はるちゃん』。でも彼女の言葉の意味を知った『令和のおばちゃん』的には『マジか』を心の中で連発してた。
まさかの『聖徳太子=稀人』説! 阿波の三好の息子の一人として生まれた自分とは境遇が違いすぎる。とか思っちゃったら『長慶おじさん』が脳内で拗ねた。
えっと、つまりは『令和の誰か』が本来の『聖徳太子』の中の人で、『聖徳太子』のやったことをやったってこと?
それとも自分と同じようにあれこれやったことが私の知っている『歴史』になったってことなのかな?
あれ? わけわかんなくなっちゃった。「卵が先か、鶏が先か」だよね。
自分たちの世界に『稀人』なんてものは完全なファンタジーの世界にだけ存在するものだった。多分ね。きっと。そうだよね。
この世界では『稀人』という概念があるみたいな感じがする。でなければ『もののけ憑』扱いされたはずだ。命までは奪われなくても仏門の世界に放り込まれていた可能性もあるからだ。
「よし様」
思考の海に飲み込まれている自分の名前を耳元で読んで現実に引き戻してくれた『はるちゃん』、ちょっとご機嫌斜め?
「話を続けますね。それで、『令和』の時代の『聖徳太子』様は、それ以前に集められていた『石板』を全て特殊な方法で書き写されたの」
特殊な方法? 疑問が顔に出ていたのか
「方法は秘匿事項だって言われたわ。なのでこれ以上はごめんなさい」
「了解。大丈夫」
「それでね『写』があって、おもう様から『婚姻祝い』だといただいたの」
え? なんで、そんな爆弾落としてくるの?
もしかして、それ読んどけ! みたいなことなのかな。
「それと『未来記』というものも『写』があって、その『写』もいただいたの」
なんかもう、やめて! って叫びそうになったよ。
それって『都市伝説』界隈の話じゃないの?
気分は『楠木正成』。見てはいけないもの触れてはいけないものを目の前に『どうぞ、自己責任でご覧ください』って言われた気分になるよ。
そんな風に『婚儀の儀』の二日間を終えた。




