『勅使』が阿波にやってくるってさ!
晴元少年の法要からひと月も経たぬ内に畿内から早馬が芝生城にやってきた。
海雲が対応している。届けられた文を見て、周囲に言い聞かせるような大きな声で命じる。
「後四日ほどで『勅使』が来る。お迎えする準備をせよ」
「え? 『勅使』? 何故?」
そんな疑問に誰も応えることなく、バタバタと戦さ準備が始まるかのように城内が慌ただしくなる。
「勝瑞でお迎えする。連絡せよ」
海雲はそう指示を出しながらも何通かの文をしたため、公方様と細川様にお届けするようにと使いを走らせる。
「千熊丸、先にわしと共に『勝瑞』に向かうぞ」
そういうやいなや千熊丸をひょいと抱きかかえると、自分の馬の前に乗せ、海雲もその後ろにのり、そのまま走らせた。
その後ろに海雲の側用人が同じように駆けてくる。
馬に乗る練習はしているけれど、こんなに速がけするのは初めてで思わず舌を噛みそうになった。
子供が混じってるので流石に途中で小休止を挟む。
道の舗装がされていないにもかかわらず二時間弱でついてしまった。
馬、やばいくらい早い。車なみ?
乗せてもらっただけなのに、全身の衝撃強すぎてガクガクしてる。
動けずにいると海雲は苦笑いしながら荷物を持ち上げるかのように縦抱きにすると、館に入って行った。
勝瑞に着いた時には陽が傾きかけていた。
こちらも連絡がすでに入っているのか、人の出入りが激しい。
いつの間にか部屋に通されると身体のサイズが測られた。
多分衣装の採寸? 測り終わるとみんな出ていき、一人になった。
? 『勅使』ってどういうこと? 何かしたっけ?
自分の中の長慶おじさんに問いかける。
長慶おじさんも状況が把握できないらしい。
ただ、こちらはこの時代での経験値が高い。副王とまでいわれていただけのことはある。すぐに切り替えた。
接待料理とお土産を用意しろ。子供ができることは提案程度だ。
というので、部屋を出て、父(海雲)を探す。すぐに見つかった。
なので、料理とお土産について確認するとすでに手配済みだという。
海雲さん、なんかすごい。めちゃできる人?
見た目もいいし、教養もあるし、武術にもたけてる。
よく考えたら、私はあれこれアイデア出してるだけだけど、全部形にしてるの海雲さんだよね。この人を失わずに済んだことだけでもこの時代にきた甲斐あると思う。
父である海雲さんを心の中でベタ褒めしている私に対して、長慶おじさんは『そうだろ? 父上は素晴らしい方なのだ』とものすごく喜んでる。父愛めちゃ強いんだね、長慶おじさん。
そんなこんなであっという間に時間は過ぎて『勅使』を迎えることになった。




