交流会という名の体験学習
「『紙』の時も自分が体験して初めてわかることも多くて。『布』もこうやって繊維をとりだして、『糸』になるまでの前準備が大変なのこともわかると、自分たちの身につけている衣装というものはとてつもない労力がかかっているんだなということがわかります」
次郎(一宮成助)くんが感慨深そうにそう言うと
「そうですね。寒の時期の甘味の樹液集めの時もものすごく大変でした。でも凍えながら穴をあけた木から樹液が溢れてきて。それを舐めた時、寒さで全く味が分からなくて」
太一郎(新開元実)くんがそういうと
「そうそう、あの時は大変だったけど、あれをに煮詰めて、ほんの少ししか蜜が取れなくて。え〜、こんだけしか取れないのか。って思うと大事に食べないとって思った」
小太郎(大西頼武)くんもそう言いながら頷く。
「蜂蜜も、あんな箱の中に巣を作るなんてびっくりした」
佐々木太郎(右京進)くんが思い出したかのように呟く。
「あの箱も作り方覚えてから、自分ところでも試してるんだ」
と、四郎(小笠原長政)くん。
「うちも。いっぱい作った」
森彦太郎(元村)くんが言うと、みんなが一様に頷いた。
「蜂蜜、おいしかった!」
佐吉(篠原佐吉兵衛)くんが明るい声をあげる。
「そうだね。蜂蜜も樹液の蜜も花の樹木の種類で味や匂いも変わるなんて初めて知りました」
小一郎くん(篠原長房)くんが中々いい感想を口にした。
そんなこんなで時間が来ると芝生城からお迎えが来たので、みんなで一緒に帰る。
夕餉は大広間で参加した全員が親と共に食事をとる。
その後、解散。お泊まり組は城の客室で家族と過ごす。翌朝、鍛錬の後、朝餉を家族それぞれとって、解散。
最初は人質じゃないかって少し疑心暗鬼ぽかった城主もいたけれど、参加した方が良さそうだと気がついたのか徐々に参加者が増えて五十組くらいに増えたので、二班に分けて、同じルーティーンですることにした。
評価は上々。
お側要員候補は何故か両方参加してる。
同じことの繰り返しなのに。
まあ、いいけど。
母上たちはというと婦人会(ママ友会)で子育てから始まって、城内の家政のお悩みとか和気藹々としながら新作ご当地料理や染め物、縫い物をしながら交流を重ねている。
ちなみにご婦人方は自分達の家族分の食事も作ってもらっている。この辺は一応危機管理のためでもある。
あ、材料は、もちろんうち(三好)から提供してるよ。
献立内容は、あらかじめ母上と相談してる。
初めての料理の場合は特にね。
それと、実は令和式家計簿(複式簿記)を母上に学んでもらって、それを領内統一規格にしようと頑張ってもらってる。
あ、数字は漢数字じゃなく、アラビア数字を覚えてもらうことにした。もはやなんでもありだ。
女性陣だけでは浸透に時間がかかるので、父(海雲)にも同じように学んでもらって城主仲間で導入してもらえるようにお願いしている。
書式というものは決めてしまえば便利なら活用されるのだ。
読み書きだけでなく算術も『寺子屋』を通して無料で学べる仕組みが領内全域に浸透したのもいい影響になったのかもしれない。
こうやってみると、戦国時代ってある分野では極めたけれど、日本全体から行くと損失がはるかに大きかったと思う。
阿波国内で言えば、海雲やその側近たち、阿波国の城主とその家族、生きて内政に力を注ぐだけで大きな利益を生み出してる。
そういう意味で、戦国期の要因となったほとんど全て(阿波公方家と阿波細川家)が阿波から始まっていたことを考えると、これを早期に歴史舞台から排除(管理)するだけで歴史は大きく変わったような気がする。




