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[31万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』⑥土佐の『天領化』

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土佐の天領化⑥



――1534年、神無月中旬


 阿波国・徳島城。


 帝の密命を受けた海雲は、表向き何も変わらなかった。


 朝は評定に出る。

 昼は書類を見る。

 夜は酒を少し飲む。

 いつもの海雲だった。

 しかし、小一郎(篠原長房)だけは気付いていた。



「海雲様」

「何だ」

「護衛が増えておりますね」


 海雲は笑う。千熊丸の側近もよくここまで育ったものだと感心した。


「気付いたか」

「当然です」


 実際、その時の徳島城は少し変わっていた。


 海雲直属の近習の配置。

 船着場の警備。

 城門警備。


 全て増強されていた。

 小一郎(篠原長房)は察した。

 土佐が動いたからではない。

 もっと別の理由、海雲自身が何かを決めたのだ。



 その夜、海雲は永寿内親王はるちゃんと話していた。

 そのことを私(長慶)は知らなかった。(後日彼女から聞かされた)


 徳島城奥御殿。


「姫様」

「はい」

「もしもの話です」

「もしも?」

「私に何かあれば」


 永寿内親王はるちゃんは即座に首を振った。


「なりません」

「話を聞いてください」


 海雲は穏やかだった。


「もしもの話です」

「……」

「その時は、千熊丸をお願いします」


 永寿内親王はるちゃんは静かに答える。


「お支えするのは当然です」

「違います」


 海雲は首を振った。


「支えるのではなく」

「止めてください」

「え?」

「無理をしたら止める」

「抱え込んだら止める」

「自分を削り始めたら止める」


 海雲の願いに永寿内親王はるちゃんは黙った。

 彼女もまた彼女の夫となったよし様(長慶)を誰よりも理解していた。

 自分より他人を優先する。

 民を優先する。

 国を優先する。

 そして、最後に自分を置く。

 それがよし様(長慶)だった。


 数日後、私(長慶)の知らないところで、海雲は密かに命令を出す。


「小一郎(篠原長房)」

「はっ」

「お前は千熊丸直属だ」

「は」

「何があっても離れるな」

「御意」


「小太郎(大西頼武)」

「はい」

「技術者と学校を守れ」

「承知」


「太郎(佐々木高経)」

「はっ」

「兵站を守れ」

「承知しました」


 一つ一つ、配置が決まる。

 戦のためではない。

 継承のためだった。

 仮に誰かが倒れても。

 国が止まらないように。

 阿波式そのものだった。

 人ではなく仕組みで残す。

 海雲自身も実践していた。


 そして神無月末


 新たな報告が届く。

 長曾我部側。兵を集めている。

 だが、予想外の情報もあった。


「しかし、長曾我部に同調する兵が集まっていません」


 小一郎(篠原長房)が読む。


「……」

「本山氏参加せず」

「安芸氏参加せず」

「津野氏参加せず」

「一条氏参加せず」


 海雲は頷いた。

 当然だった。

 彼らは既に阿波式の恩恵を見始めている。

 学校。医療。道路。港。捨てる理由がない。


 長曾我部は孤立し始めていた。


 その頃、私(長慶)は別のことを言い出していた。


「父上」

「何だ」

「土佐の子供たちを受け入れたい」


 海雲は笑った。やはりそう来る。


「難民か」

「うん」

「戦になったら困る」

「そうだな」

「だから先に受け入れる」


 海雲は深く頷く。

 これが息子(長慶)だった。

 敵を倒すことより、子供を守ることを考える。

 発想そのものが全く違う。

 帝が保護しろと言った理由が分かる。


 1534年 霜月初め


 徳島城。


 天守から見える港には、無数の灯。


 阿波。讃岐。伊予。土佐。

 船が行き来している。

 ほんの一年前には、考えられなかった光景だった。

 その灯を見ながら、海雲は静かに思う。

(まだ死ねぬな)

 未来は始まったばかりだ。

 千熊丸はまだ十二歳。

 制度も学校も未完成。人材育成もまだ途中。


 そして、帝からの密命もある。


『稀人に荒事をさせるな』


 この先も『錦の御旗に反旗を翻す』ことが起こりうる可能性がある。

 ならば、自分が前に立つ。

 千熊丸が未来を作る間、自分は盾になる。

 海雲は、静かにそう決意するのだった。


 そして1534年 霜月上旬

 

 四国天領化は新たな局面迎える。


 だがその時、長曾我部国親もまた、自らの運命を決める大きな選択を迫られることになる。


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