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[31万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』④讃岐の『天領化』

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讃岐の天領化⑤


 数日後、徳島城の中庭は、かつてないほどの賑わいを見せていた。


 少年たちが荷物をまとめている。

 従者たちが馬を整えている。

 書記役が帳面を束ねている。


 そして、海雲は腕を組みながら、その様子を眺めていた。


「増えたな」

「増えましたね」


 隣の篠原長政も苦笑している。

 最初は五十人、保護者? も入れて百人ほどだった。

 ところが、私(長慶)が


「見学なら実物を見せた方が早い」


と言い出した結果、人数が倍近くになっていた。


「千熊丸」

「はい」


 海雲に呼ばれて振り返る。


「あれは何だ」


 海雲が指差した先には鍬を担いだ男たち、測量器具を手にする男たちの集団がいた。


「測量班です」

「測量班?」

「はい」


 未来なら当たり前の言葉だが、この時代では珍しい。


「土地を測ります」

「……」

「讃岐の田、川、用水、港。全てを測量して記録します」


 海雲はしばらく黙り込む。


「戦ではなく土地を測るのか」

「戦より重要です」


 即答だ。


 その私(長慶)を見て篠原長政が笑う。


「殿(長慶)らしい」


 さらに、別の集団がいる。


「ではあれは?」

「大工です」

「大工?」

「橋を見せます」


 海雲が首を傾げる。


「橋?」

「はい」


 私(長慶)は当然のように答える。


「橋は国力です」


 この場にいる者のほとんどが理解できなかった。だが私(長慶)だけは確信している。未来を知っているから。


「橋があると荷が動きます」

「荷が動くと市が栄えます」

「市が栄えると税が増えます」


「なるほど」


 海雲が頷く。戦の理屈ではない。国づくりの理屈だ。さらに…


「こちらは?」

「鍛冶です」

「鍛冶?」

「農具を見るためです」


 その言葉に海雲のそばにいた篠原長政が吹き出した。


「武具ではなくか」

「武具は人を殺します」


 海雲の言葉に私(長慶は)真顔で答える。


「農具は人を生かします」


 場が静まった。

 未来の知識を持つ少年の言葉は時々こうして大人を黙らせる。

 そして、最後の一団。学者とも僧とも見える者たち。


「こちらは?」


 海雲が尋ねる。


「書記と寺子屋の先生です」

「ほう」

「記録を残します」

「記録?」

「はい」


 私(長慶)は帳面を掲げる。


「何人の百姓がいるか、田はどれだけあるか、どの港にどれだけ船が来るかを全部書き、記録します」


 海雲は思わず笑った。


「お前の国づくりは」

「はい」

「帳面ばかりだな」

「未来もそうでした」


 私(長慶)は真顔だった。

 海雲が腹を抱えて笑う。


「未来の武将は槍を持たぬのか」

「持ちます(国によってはだけど)」

「持つのか」

「でも帳面も持ちます」


 さらに笑いが起きた。そんな中、小一郎(篠原)が静かに尋ねる。


「殿(長慶)」

「何?」

「なぜ技術者を見せるのです」


 私(長慶)は少し考えた後、


「皆に覚えてほしいからだ」


 自分へ目を向けている少年たちを見る。


「城主になる者は」

「はい」

「武士だけ見ていてはいけない」


 静かに言う。


「田を作る百姓、船を造る大工、鉄を打つ鍛冶、橋を架ける職人。その方が大事だ」


 誰も喋らない。


「国を支えているのは誰だと思う?」


 彦太郎(森元村)が答える。


「百姓でしょうか」

「正解だ」


 私(長慶)は頷く。そして付け加える


「そして職人だ」


 未来では当たり前の話。だが戦国時代では珍しい考え方だった。


「今回の讃岐行きでは」


 私(長慶)は全員を見回した。


「国人も商人も百姓も職人も見る。全員だ」


 そして笑った。


「讃岐を学ぶなら、讃岐を動かしている人間を学ぶこと」


 その言葉に、少年たちは静かに頷いた。


 こうして一行は、武士だけではなく、測量師、大工、鍛冶、船大工、書記、学者、僧侶まで加えた、この時代としては異例の「学問と実務の視察団」となった。


 後に讃岐の人々は驚くことになる。

 阿波から来たのは軍勢ではなかった。

 彼らは槍よりも帳面を持ち、刀よりも測縄を持ち、城よりも港を見ていた。


 そして、その奇妙な一団こそが、後に四国天領化を支える最初の種となるのであった。


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