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[31万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』④讃岐の『天領化』

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讃岐の天領化③



 評議が終わると、少年たちはそれぞれの宿舎へ戻っていった。

 政所には私(長慶)と側近たちだけが残る。

 そして私(長慶)は立ち上がった。


「父上のところへ行く」


 小一郎が頷く。


「讃岐行きの件ですね」

「うん」


 何しろ五十名近い国人城主の嫡子たちを連れて国境を越えるのだ。

 父、海雲に黙ってやる話ではない。


 芝生城の奥。執務の間、そこでは父、海雲が書状を読んでいた。

 障子の向こうから声を掛ける。


「父上」

「入れ」


 中に入ると海雲は顔を上げ、私(長慶)をみる。


「評議は終わったか」

「はい」

「どうだった」


 私(長慶)は向かいに座る。


「『芝生組』を四つに分けました」

「ほう」

「阿波」

「讃岐」

「伊予」

「土佐」


 海雲が静かに頷く。


「妥当だな」


 海雲もさすがにそこに異論はないらしい。

 私(長慶)は続けた。


「ただ」

「何だ」

「最初の讃岐行きは全員で行きます」


 海雲の眉が少しだけ上がる。


「全員?」

「はい」


 私(長慶)は理由を説明する。


「讃岐担当だけが手順を知っていても意味がありません」

「なるほど」

「将来、伊予でも土佐でも同じことをします。なので全員に見せることにしました。『どう話し、どう調べ、どう記録し、どう納得してもらうか』を」


 海雲は黙って聞いている。私(長慶)はさらに続けた。


「私(長慶)は天領化を命令で広げたくありません」

「うむ」

「願われるものにしたい」


 海雲はそこで初めて小さく笑った。


「お前らしいな」


 しばらく沈黙。そして海雲は書状を脇へ置いた。


「千熊丸」

「はい」

「一つ聞く」

「はい」

「なぜ讃岐なのだ」


 海雲の試すような問いだった。

 私(長慶)は答える。


「一番近いからではありません」

「ほう」

「讃岐は商いの国です」

「続けろ」

「港が、塩が、市があるので、天領化の利益を見せやすいと思いました」


 海雲は黙る。


「伊予から始めれば海の話になり、土佐から始めれば開発の話になります。けれど讃岐ならば、銭の話ができます」


 海雲は私(長慶)の言葉に完全に納得したように頷いた。


「なるほどな」

「はい」


『戦を減らしたいなら、まず人を豊かに』それは未来で学んだことだった。


 海雲は腕を組む。しばらく思案した後


「良い」


 海雲の許可が下りた。しかし話はそれでは終わらなかった。


「ただし条件がある」

「何でしょう」

「お前も学べ」


 私(長慶)は海雲の言葉に少し驚く。


「私(長慶)も?」

「そうだ」


 海雲は真顔だった。


「お前は知識を持っている」

「はい」

「だが、讃岐の人間ではない」


 海雲のその言葉に私(長慶)は黙る。

 確かにその通りだった。今の私(長慶)は『阿波』しか知らない。


「お前は確かに未来を知っている」

「じゃが、讃岐の百姓が何を困っているかは知らん」


 海雲に痛いところを突かれた。


「港の商人が何を考えているかも知らん」

「……はい」

「ならばその声を聞け」


 海雲は私(長慶)に言い含めるように言う。


「まず聞け」

「教えるな。まずは現場の声を聞け」


 私(長慶)は深く頷いた。


「はい」

「それが国を治める第一歩だ」


 そして海雲は最後に笑った。


「もっとも」

「?」

「お前は昔から人の話を聞くのは得意だからな」


 私(長慶)は少し苦笑した。


 未来を知る「稀人」…それなのに、海雲が求めるのは未来の知識ではない。

 まずは人の声を聞くこと。


 天領化の第一歩は、制度でも詔でもなく、讃岐の人々の話を聞くことから始まろうとしていた。


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