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[31万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』④讃岐の『天領化』

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『芝生組』②



 私(長慶)は皆の返事を聞き、静かに頷いた。

 そして机の上の阿波国絵図を畳む。

 代わりに広げたのは、より大きな地図だった。

 阿波だけではない。

 四国全図。讃岐、伊予、土佐、そして阿波。

 少年たちの間にざわめきが広がる。


「殿(長慶)?」


 小一郎が首を傾げる。

 私(長慶)は頷いた。


「阿波だけではない」

「四国だ」


 まだ正式発表前とはいえ、彼らも噂は聞いている。

 帝の詔。四州近衛家。そして四国全土天領化。


「父上が守ったのは阿波だ」

「だが私(長慶)が預かるのは四国になる」


 静寂。


「だから、お前たちも阿波だけを見ていてはならない」


 私(長慶)は地図の上を指でなぞる。


「阿波」

「讃岐」

「伊予」

「土佐」


「これから学ぶべき相手も違う。覚えるべき地理も付き合うべき人々も違う」


 私(長慶)は皆の方を振り返った。


「今日、お前たちを四つに分ける」


 皆が息を呑む。


「ただし」


 私(長慶)は言葉を続ける。


「私の近習となる者は別だ」


「篠原小一郎。大西頼武。一宮成助。佐々木高経。新開元実。小笠原長政。森元村」


 私は彼らの名前をあげる。


「お前たちは私と動く」


 全員が即座に頭を下げた。


「はっ!」


 彼らは単なる城主候補ではない。

 私(長慶)の手足となる。

 未来の政所奉行。勘定奉行。検地奉行。学問奉行。そして軍奉行。

 つまり次世代の四州近衛家そのものを支える中枢だ。


 私(長慶)は地図を叩いた。


「まず阿波」


 阿波は本国。『四州近衛』の拠点になる土地。

 ここからは家名で振り分けていく。


「丹治家」:阿波の井上城周辺をまとめる在地国人層。

 元は父親(井上城主)が守護(細川氏)の被官していたが、海雲の呼びかけで嫡子が千熊丸(長慶)の側近候補になった時(『芝生組』)、父親は海雲に引き抜かれていた。


「海部家」:阿波南端の昔ながらの有力国人。「阿波南部を支配した海の豪族」

 本拠は現在の徳島県南部(海陽町、宍喰、浅川、牟岐周辺)

 海部氏は普通の山城国人との違い、船を持ち、港を支配する。関銭を徴収し、水軍を動員できた。つまり軍事的に重要であり、尚且つ「物流支配者」でもあった。主に、南阿波の安定、海路監視、土佐との緩衝を担っていた。嫡子(海部友光)が『芝生組』に選ばれた。


「赤沢家」:信濃小笠原氏の庶流。元は細川政元の重臣、その後、細川澄元派の中核武将。三好之長・三好元長と同じ政治陣営だった。その後、海雲の呼びかけで嫡子(赤沢重経/相伝)が千熊丸(長慶)の側近候補になった時(『芝生組』)、父親は海雲に引き抜かれていた。


「桑野家」:阿波の国人層。桑野城(阿波・現在の徳島市周辺)を拠点にした在地領主層。元は細川の影響下にあったが嫡子(桑野義明)が『芝生組』になった為、海雲に引き抜かれている。


「鎌田家」:阿波の国人層、主に名東みょうどう城方面の在地支配者層。守護(細川)の影響下にあったが嫡子(鎌田光久)が『芝生組』になった為、海雲に引き抜かれている。


「伊沢家」:阿波の国人層(在地武士)、伊沢城(現在の徳島市周辺)を拠点にした地域支配者。ここも守護(細川)に従属する在地勢力だったのを嫡子(伊沢頼俊)がいわゆる『芝生組』に入った為、海雲に引き抜かれた。



 呼ばれた少年たちが前へ出る。


「お前たちは阿波を学べ」

「検地」

「治水」

「街道」

「港」


「まず阿波を完成させる」


 皆が頷く。


讃岐組


 続いて私は地図の東側を指した。


「次に讃岐」


 瀬戸内海の玄関口。商業の要だ。


「讃岐組は港と商いを学べ」


 何人かの少年が呼ばれる。


「塩、船、市、倉。讃岐が豊かになれば四国全体が豊かになる」


伊予組


 次に西へ。


「伊予」


 瀬戸内海最大の海上交通圏。


「伊予組は水軍と海運を学ぶ。船を制する者が瀬戸内を制する」


 将来関わることになる名を挙げる。



土佐組


 最後に南。


「土佐」


 少年たちが地図を見る。


「遠い、しかも山が多い。けれども…」


 私(長慶)は言う。


「土佐は未来だ」


 皆が首を傾げる。


「木材、紙、鉄、海。まだ誰も価値を知らぬ。だからこそ先に学ぶのだ」


 土佐担当に選ばれた少年たちは真剣な顔になる。

 そして私(長慶)は全員を見渡した。


「十年後」

「二十年後」

「三十年後」


「お前たちはそれぞれの地で働く。だが忘れるな、」


 私(長慶)は四国全図の中央を指差した。


 阿波、徳島城。


「お前たちは確かに四つに分かれる。しかし四つの家になるのではない。四国は一つだ」


 誰かのこくりと喉を鳴らす音が聞こえる。


「阿波も讃岐も伊予も、そして土佐も皆、四州近衛家の家臣である」


 少年たちの目が輝く。


 その日、徳島城政所で後に四国天領を支えることになる最初の人事配置が、静かに決まったのであった。


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