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[31万PV達成!感謝]長慶さんに転生してしまった!  作者: 天の樹
孫次郎の『徒然日記』④讃岐の『天領化』

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『芝生組』①

更新遅くなってすみません。

話は前後する。


ちょうど阿波の天領化に全ての了承がされた直後。


――1534年、如月初  徳島城、政所。


 評議の場には丁度私(長慶)と同世代の少年たちが五十名ほど集まっていた。  

 彼らのほとんどが、芝生城で父元長が呼び寄せた阿波国の城主の嫡子たちだった。

 そう、千熊丸が『稀人』であることを隠すために、そして、次世代の千熊丸の手足となる側近候補を育てるために集められた少年達。


 小一郎ーー篠原小一郎(長房)が一同を見渡しながら



「今日は殿(長慶)から大切なお話がある」


 その声に、皆が私(長慶)に注目する。

 私(長慶)は、こほんと小さく咳払いをする。


 私(長慶)は一同を見渡した。

 見知った顔ばかりだった。

 幼い頃から芝生城に集められ、一緒に読み書きを学び、一緒に畑を耕し、一緒に川を浚い、一緒に塩を作り、一緒に堤を築いた仲間たち。

 彼らはまだ十二、三歳前後の少年だが、将来は阿波各地の城主となり、郡代となり、奉行となり、この国を支える者たちだ。

 私(長慶)は静かに口を開いた。


「皆、知っての通りだ」


 部屋が静まり返る。


「先月、帝より阿波の天領化についてお許しが下された」


 その言葉に少年たちの顔が引き締まる。

 正式な発表はまだだが、父や家中から聞き及んでいる者も多いのだろう。

 私(長慶)は続けた。


「これより阿波は変わる」


 誰も口を挟まない。


「城も残る」

「家も残る」

「領地も残る」

「だが、今までと同じではない」


 私(長慶)は皆の顔を見る。

 小一郎こと篠原長房。

 小太郎こと大西頼武。

 次郎こと一宮成助。

 昼間の太郎こと佐々木高経。

 牛岐の太郎こと新開元実。

 重清の四郎こと小笠原長政。

 彦太郎こと森元村。

 鎌田光久。

 桑野義明。

 伊沢頼俊。

 そしてその他の嫡子たち。皆が真剣な顔で聞いている。


「これまで皆の父は、自分の城と領地を守るために働いてきた」

「だが、これからは違う」


 私(長慶)は机の上に広げられた阿波国絵図を指した。


「これ全部が一つの国になる」


 阿波国全図。

 それまでなら各城主が己の領地だけを見ていた。

 

「桑野が飢えれば海部が助ける」

「名東が困れば重清が支える」

「勝浦で橋が流れれば皆で直す」

「どこか一つだけ栄えても意味がない」


 少年たちは静かに聞いていた。


「阿波全部が豊かになる。それが天領だ」


 誰かが小さく息を呑む。

 私(長慶)は言葉を続けた。


「だから皆に聞く」


 そこで言葉を切った。


「お前たちは何になりたい?」


 ざわり、と空気が揺れる。

 城主になりたい。

 武将になりたい。

 そう答える者もいるだろう。

 だが私(長慶)は首を振った。


「違う」

「城主など父上がおる間は父上がやる」

「武将など戦がなければ不要だ」


 何人かが目を丸くする。

 戦国の世で武将不要など聞いたことがない。

 だが私(長慶)は真顔だった。


「これから必要なのは」


 一人一人を見ながら言う。


「人を飢えさせぬ者」

「水を引く者」

「道を作る者」

「船を動かす者」

「銭を回す者」

「学問を広める者」


 静寂。

 皆が言葉を失っている。


「父上は阿波を守った」

「だが私(長慶)一人では阿波を豊かにはできない」


 私(長慶)は真っ直ぐ彼らを見る。


「だから、お前たちが必要だ」


 その時だった。

 奥の方にいた彦太郎こと森元村が手を挙げた。


「殿」

「なんだ」

「もし戦になったら?」


 少年らしい問いだった。私(長慶)は少し笑った。


「その時は戦う」


 皆が頷く。


「だがな」


 私(長慶)は続けた。


「戦に勝つより難しいことがある」

「何です?」


 今度は四郎こと小笠原長政が尋ねる。

 私(長慶)は阿波国絵図を指先でなぞった。


「五十年後も百年後も、この国が豊かなままであることだ」


 今はまだその言葉の意味を完全に理解できる者はいない。

 だが皆、何か大きな話を聞いていることだけは分かっていた。


「私(長慶)はそのための仕組みを作る」

「お前たちはそれを動かせ」


 そして私(長慶)は微笑んだ。


「今日から、お前たちは単なる城主の嫡子ではない」


 少年たちの背筋が伸びる。


「阿波を支える最初の代官であり、奉行であり、学び舎の同門だ」


 そして最後に言った。


「百年後の阿波を作るぞ」


 その言葉に、五十人の少年たちは、一斉に頭を下げた。


「はっ!」


 その声はまだ幼い。

 だが後に阿波天領を支えることになる最初の世代の、確かな返答だった。



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