17/18
回想 14 カラスの獣人とマリーの横顔
マリーは甲斐甲斐しくこどもの獣人を看護した。
医師の話によれば、彼はカラスの獣人だという。ひどい栄養失調状態であり、回復を見込むのは難しいとも。
だが、マリーは諦めていなかった。
まだ目の覚めぬカラスの獣人の子にずっと寄り添っている。
マリーダは、マリーがマリーダの育った孤児院に寄付をしていることを知っていた。
幾日もカラスの獣人によりそうマリーに、マリーダは一度だけ尋ねたことがある。
「マリー。なぜ、そこまでするの」
マリーはカラスの獣人の子から目を離さない。 清潔な服に包まれたその子は 、今にも消えてしまいそうだった。
「この国の民の幸せを守るのは…私の使命です」
手袋をしていない手で傷だらけの小さな手を優しく包み込んでいた。
マリーの口元は引き締められている。いつもの太陽のように笑う彼女からはかけ離れた、なにかを決めてしまったような表情だった。
声が、届かない気がした。 マリーダは突然、マリーが知らない人のように見えた。
病室を満たす酒精の匂いだけが、ふたりのあいだに残っていた。




