回想10 はじめてのお茶会とわがままいじわる公爵令嬢
はじめてのお茶会は王宮の園庭で行われた。
誰にでも分け隔てなく接するマリーの姿が気にくわない者がいた。
スカーレット・バーミリオン公爵令嬢。
彼女は少しでも自分の思い通りにならなければ、癇癪を起こす性格であるらしかった。
スカーレット公爵令嬢は尊大な態度でマリーに近づく。
「 王女マリーでございます。本日はこのような場にお越しいただき、心より感謝申し上げます。 」
「 挨拶を賜り光栄でございます。王女マリー様。私はバーミリオン公爵家が長子、スカーレットと申します お近づきの印に贈り物があるのですが受けとっていただけますでしょうか?」
「まあ!うれしいわ。ありがとう。スカーレット様」
スカーレット公爵令嬢は傍仕えを呼び、小さな小箱を持ってこさせた。
傍仕えは紙のように白い顔をして箱をマリーへと献上する。マリーの目は箱に釘付けだった。マリーダが代わりに受け取る。紫色のビロードのリボンをかけられた薄桃色の箱は、中身が無いかのように軽かった。嫌な予感がしたのは、マリーダだけだった。
「スカーレット様!開けてもよろしいでしょうか。」
マリーはウキウキとした気持ちを隠しもせずに問う。マリーダが静止しようとマリーに目線を送るが、マリーは”初めての同年代の少女からの贈り物”に浮足立っていた。
「ええ。もちろんでございます。」
スカーレットはしてやったりと得意げな表情を作る。
キラキラしたマリーからの目線に耐えかねて、マリーダは渋々、小箱のリボンをほどき、蓋を開けた。
「「「「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー」」」」」
少女たちが散った。反してマリーは嬉しそうに「まあ!」と頬を桃色に染め、目をキラキラ潤ませた。
箱の中には、紫と黒のまだら模様のトカゲが、こちらを見上げていた。赤色の瞳が、毒々しい紫色の舌に舐められ、ぬらりと艶めく。
「まあ!まあ!まあ!なんて素敵なの!
シコントカゲだわ!なんて綺麗で状態がいいのでしょう!捕まえるのは大変だったでしょう!雨上がりのわずかな時間にしか土の中から出てきてくれないものね!」
マリーにとっては最高のプレゼントに他ならなかった。
箱をマリーダから取り上げると、大事そうに抱えてスカーレット公爵令嬢ににじり寄る。スカーレット公爵令嬢は顔を引き攣らせて、半歩ほどさがったが、逃げ出すことはしなかった。
「うれしいわ!本当にありがとう!!」
手をにぎられてぶんぶんと振られるスカーレット公爵令嬢は口元をひきつらせながらもほほえみをたもっていた。
「喜んでいただけて、光栄、ですわ」
ふたりが固く握手を交わす姿にマリーダは、目を細めた。




