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ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
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第三章 完成⑤

 カクタス改め、弥代がその場から去ったのを確認し、真理子は班室へと戻った。西条は扉の電子ロックの解除音がするなり、慌てて片付け始める。


「あ、マリちゃん、おかえり。大丈夫?」

「大丈夫です…ちょっとお腹が…」


 真理子はそういうと、使った器具を綺麗に消毒した。

 やっと一息ついた。体も心も解放された気分になる。


「西条さん、お疲れ様でした」

「いや、マリちゃんもお疲れ」


 二人はお互いの疲れ切った顔を見て、思わず笑いが込み上げてきた。西条が、何かを思い出したかのように真理子を見る。どうしたのか尋ねると、西条は質問してきた。


「薬が出来たのは、マリちゃんのおかげだ」

「そんなことないです…。私はただ…」

「ただ、分子標的薬を作ればと提案した。どうしてだ?」

「ど、どうしてって…もしかしたら、分子標的薬ならウイルスに効くと思ったからです…」

「タンパク質から、分子標的薬を作ろうと、君は言った。けど、君が“タンパク質”と言った時にはまだ、あの粒状の細胞がタンパク質だとは分からなかった。それなのにどうして、タンパク質だと分かった?あの時、中原さんと何を話したんだ?」


 真理子は俯き、西条から目線を逸らした。西条が近づく。彼が真理子の手を取り「教えてくれ」と頼んだ。真理子は小さな声で話し始める。

 

「あの時、おばちゃんがこう言ったんです。“キャリアの女性はタンパク質が防御してるのよ”って。だから、私もふと思ったんです。人体はタンパク質で出来ている。だったら、ウイルスを防御するタンパク質もあるって。それで、がん治療の薬を思い出して…」

「それで、分子標的薬か…。なるほど…」

「だから、薬が出来たのはおばちゃんが教えてくれたから…。西条さん、私、おばちゃんが悪い人だとは思えなくて…。おばちゃん言ってました…。“私は二人の味方だ”って。“ここを潰すためにいる”って。と言うことは、やり方は違っても、私たちが暴こうとしているのと同じってことですよね?」

「俺たちの味方なら、何でここにいないんだ?ここへ来てから、一度も会わなかった。食事中も、仕事中も。怪しいだろ。味方なら、何で傍にいないんだ?」

「それは…きっと何か理由があって…」

「理由ってなんだ?自分はここの幹部で、皆を見張らなきゃいけないから、そばにいれないんだってか?それとも…」

 

 西条の言葉を遮るように、班室の扉が開いた。入ってきたのは雅子だった。


「西条くん、そこまでよ。あなた、マリちゃんに言いすぎじゃない?…私の口から話すから、二人ともここへ座って…」


 雅子は二人を目の前に座らせると、オレンジのバンドを扉にかざし、ロックを掛けた。


「いい?今から話すことを聞いて。誰にも言ったらダメよ?二人がこの施設のことを暴こうとしているのは、薄々気が付いてた。だから、協力しましょう?」

「何であなたと…」

「この施設には表と裏の顔がある。私はそれを暴くためにここに潜入してるの。まあ、スパイってやつね」

「表と裏…?スパイ?」

「ここが研究施設なのは、もう分かってるでしょ?表の顔は“Institute For Global Relife(IFGR)”つまり、世界規模の救済研究所って意味。まあ大層な名前だけど、簡単に説明するとあらゆる病原体や、人体に関する実験と研究をしてる。それに創薬もね。でも本当は裏の顔がある。それが世界再建計画・特殊作戦部隊、通称・ガイア部隊の基地よ」


 二人は雅子の話すことが、上手く処理できていなかった。真理子に関しては、キョトンとした顔で雅子を見ている。


「いい?表の顔は世界に認められてる研究施設、裏の顔は水面下で実験、研究を繰り返している簡単に言うと、マッドサイエンティストの施設ってこと」

「ここで何の研究を?計画って?」

「国民が腕に着けてるバンド型ICチップを利用して、水面下で実験をしていたの。新世界に相応しい人類を選ぶために。そして、計画を立てて今回の事態を招いた。この計画を阻止するためにここに来たのが、私ってこと」

「おばちゃんは何者なの?」

「私は、本当は中原雅子じゃないのよ、マリちゃん。本当は新田朋子(にったともこ)っていうの。ごめんね、騙してて…」


 西条は雅子改め、朋子を質問攻めにした。


「ラルドウイルスってのも、ここが?それも計画なのか?」

「ラルドウイルスを作ったのはここじゃないわ。ここにはウイルスを作れるだけの知識を持った人はいないもの。ただ、それをばら撒くのも計画の一つだったの。そして、その計画の後にはもう一つ計画が残ってる。私は今度こそ、その計画を阻止しなければならないの。あなたたち二人が治療薬を作ってくれて、本当に良かった。このことを、私は報告してくるわ…」


「報告って誰にだよ…。それに…ちょっと待ってくれ…あんた“新田”って言ったよな…もしかして政府の…」

「私が報告する相手、私をここへ送り込んだのは総理よ。大道寺総理。いい?覚えといて。もし何かあったら、大道寺総理に会いなさい。彼なら、きっと二人を守ってくれるから」


 朋子はそう言うと、部屋を出て行った。


「一体どうなってんだよ…。これ、現実か?まるでドラマじゃねえかよ…今の俺たちのこの状態、小説一本書けるぞ…」

「でも私の言った通り、おばちゃんは悪い人じゃなかった。でしょ?」

「中原…いや、新田さんは政府のスパイで、この施設の実態を暴き、計画を阻止しようとしてるってことか…。信用していいと思うか?」

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