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ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
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第三章 完成④

「西条さん、班室に戻る前にお手洗いに…」

 真理子はそう言って、西条と分かれた。

「え~っと…この階にトイレは…あ、あったあった…」


 真理子がトイレから出てきてすぐ、エレベーターの扉が開いた。真理子は思わず隠れてしまう。

 中から出てきたのは、あのカクタスだ。声を掛けようと一歩前に出るが、辺りを見回しているカクタスの様子がおかしいことに気づき、トイレの中へ戻っていき。少し隙間を開け外の様子を伺うと、カクタスはまっすぐ、真理子が入ったトイレに向かってきていた。トイレに入るのかと思いきや、それを通り越し突き当りの壁を曲がっていく。

 真理子はカクタスの後をつけた。


「保管庫…関係者以外立ち入り禁止…?」

 真理子は扉に書かれている文字を口に出した。よく見ると、扉は完全には閉まっていない。ここで、真理子の悪い癖、好奇心が勝った。

 隙間に指を差し込み、指でゆっくりと扉を引っ張る。音が鳴らないように慎重に…。

 他は自動扉なのに、ここだけ普通のドアなんて何かおかしい。真理子はそう思った。

 自分が入ることのできる隙間を作ると、体を滑らせ中に入り込んだ。なんていうか…このスリルがちょっと好きであったりする。

 足元に気を付け、置かれているものに当たらないよう細心の注意を払う。


「あ…」

 静かに声を出した。目の前にいるのはカクタスの姿。

 手にはタブレットとオレンジのバンド、幹部だけが持てるバンドだった。

 どうしてここに…?あのバンドは…?


「まさか、あなたがここにくるとはね…」


 突然、カクタスがそう言った。バレた…と思ったが、カクタスはタブレットに向かって何か言っている。自分じゃないのか…?


「同じところに配属されるとは思ってもなかった。私は経験のない仕事だし、あなただってこんなところでもそんな仕事をするなんて思ってもなかったでしょ?」

『…確かに…ここでも前と同じ仕事をするとは思ってなかったよ…』

 タブレットから聞こえてきた声は男性の声だった。

 声だけじゃ連絡の相手が誰だか判別できない…


「それで…進捗状況は?」

『薬は出来たかもしれない。ただ今は治験の段階だ…治るかは分からない…』

「そう…でも別に治らなくてもいいわ…だってあの人は…お兄ちゃんを…」

弥代(みよ)、そのことはもういいんだ。俺も忘れたよ…昔のことなんか…』

「お兄ちゃん!忘れちゃだめよ!あの人がしたこと、ずっと覚えてなきゃ」

『俺はあの人が治ればそれでいい。そう言えば、弥代の方は?』

「私は相変わらずよ。新たな配属先でもうまくやってるわ。お兄ちゃんがくれたバンドも役に立ってる。でも、よくこれ手に入ったわね…」

『まあね…ちょっと危なかったけど…』

「お兄ちゃん、そういえばアネモネ…安藤真理子は?」

『アネモネは上手くやってるさ。薬も作れたし、やっぱり彼女はすごい人材だ。新世界に選ばれるくらいの…』

「彼女、中原雅子と仲が良いわ。知ってるでしょ?」

『ああ。よく知ってるさ…』

「気を付けてよね…私たちの関係がバレないように…待って…誰かいるかもしれない…」


 真理子はとっさにロッカーの後ろに隠れた。

 カクタス…いや、弥代は辺りを見回し、誰かいないか探し始める。

 お願い…見つけないで…見つからないで…


「気のせいか…ここへきてから、やけに周りが気になる…。きっとバレないように神経を巡らせているからね…。にしても、お兄ちゃんは甘いわ…あの人がしたことを忘れるなんて。私は許さないからね…」 

おやおや…怪しいものがまた一人…

にしても、カクタスって弥代って名前だったんだ…

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