表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
32/51

第三章 エンデミック⑤

『まず、自分で動ける者を移動させる。一階まで全員を上げろ。あとはイクソラと私が引き受ける。良いか、君たちはあくまでも一階まで連れてくるだけだ。リコリスはその場にいさせろ。他の者を見張りにつけるんだ』

「了解、隊長…」

「了解しました」


 二人はライラックの指示通り、リコリスを除いた四人を立たせ、それぞれが班員の脇を抱える。そして、エレベーターに乗せた。その間、ライラックはイクソラに指示を出し、エレベーターホールで待つように命令した。エレベーターの表示がだんだんと近づいてくる。いつの間にかライラックも合流している。扉が開くと、感染した四人の姿が目に入る。体は赤くなり、呼吸も苦しそうになっていた。


「隊長、お二人で大丈夫ですか?俺も行きましょうか?」

「いや、あとはこっちでやる。君たちはすぐに医療班に戻ってくれ。そこでまた待機だ。あとで連絡する」


 二人がエレベーターに乗り込むのを確認し、ライラックとイクソラは班員を抱え、歩き始めた。適性検査室を通り、検査棟へ向かう。そして、二人だけが知る扉を開け、専用エレベーターに乗り込み、地下八階にあるラボへと直行する。


「隊長…すみません…自分…感染して…」

「デュランタ、話さなくていい。必ず助けてやるからな」


 それぞれ、ライラックとイクソラに脇を抱えられた四人は、ぐったりしていた。地下八階、ラボの扉が開き、四人を隔離室へと入れる。ベッドに寝かせてやり、扉のロックを掛けた。


「隊長…リコリスを入れたら、隔離室は満杯ですよ…どうします?」

「何とかする…。リコリスを隔離したら、私たちと制圧班、保護班は消毒だ。その後は施設内を一斉消毒する。そして、生存者の男性二名と所属班の二班も検査だ。覚悟しなければな…」


 ライラックの指示通り、彼はリコリスを隔離し、施設内と職員を消毒した。そして、男性二名が所属する班員と共に医務室へと向かった。


「みんな、この綿棒で口内を擦り、唾液を含ませてくれ。それが終わったらこの容器に入れて、軽く振る。そして私に持ってきてくれ」


 立ったままの班員たちは、イクソラに言われた通りの手順で、迅速検査を行っていく。検査が終えた班員は、皆イクソラの前に並んでいった。彼は、班員の状態と検査結果をパソコンに打ち込んでいく。

 数十分後、全員の検査が終わった。結果は透明。非感染者だ。イクソラはほっとした。全滅だけは避けられた。一息つく間もなく、彼はライラックに報告した。


『そうか…。分かった…』


 素っ気ない返事だったが、彼が誰よりもほっとしているのは、イクソラが一番知っていた。班員たちを班室へと戻し、イクソラもまたライラックの元へと戻っていく。


「隊長…これ全員分の検体と、状況を記したデータです」

「うん…ありがとう…」

「全滅は医療班だけでした。それがせめてもの救いかと…」

「そうだな…。私はとりあえず、アマリリス様のところへ行って報告してくる。イクソラも班室へと戻って、業務を再開してくれ…」


 雅子の元へ向かうライラックを見送り、彼は解析班へと戻った。

 たった一時間ほどの出来事なのにも関わらず、急に疲れが出た。


「あ、主任!何があったんですか?」

「どうせ、話すわけがない。聞くだけ無駄だ…」


 西条の言う通り、彼は一言も話さなかった。しかしそれは“言わない”ではなく“言えない”だった。

 モニターが並ぶ薄暗い部屋。衝立(ついたて)の裏には雅子とライラックの姿。施設内で起きた事態について雅子に報告していたライラックは、彼女の言葉に驚きを隠せなかった。


「いや、しかし…」

「私が言っているのに、従えないの?いいから、非感染者と感染者の検体を解析班に持って行って。そして分析してもらうのよ…。そして、治療薬を作り出させるの」

「ですがアマリリス様…」

「いい?こっちがいくら隠したところで、あの二人なら全て見つけ出すわよ?この事態を起こした真相も、私たちの計画も。だったら、今のうちにあの二人を懐に取り込んでおきなさい」


 雅子の指示に渋々従ったライラックは、解析班に入ってきた。


「この検体を君たちに託す。こっちが非感染者、透明だ。で、これが感染者、青色だ。これを分析してもらいたい」

「…何を?分析して、一体何を見つけ出すんだよ。それを教えてもらわないと、こっちだって動けないのですが…」

「薬だ…。ラルドウイルスに対する治療薬を作ってもらいたい」


 ライラックの口から思いもしなかった言葉が出てきた。


「薬を作って、感染者たちを治すのか?それとも、他のことに使う気なのか?」

「ブルースター、口の利き方に…」

「ブルースター、君たち二人は優秀だ。とてもな。だからこそ、治療薬を作ってもらおうと、検体を持ってきた。ここの機械や試薬とやらも全て揃えた。ここまでしてるのに、なぜそんなに疑う?」

「そのままだ。信用できないんだよ。この施設のこともあんたらのことも。俺はここにきて腑に落ちないことばかりだ。この施設自体が全て怪しいんだよ。一体何を企んでる?計画ってなんだ?」

「君の疑問、いつか全て答えよう。だから今は治療薬を作ってくれ。君が知りたい答えは、治療薬と引き換えだ。約束しよう…」


 ライラックはそう言うって、手を差し出した。「分かった。これは男の約束だ。裏切るなよ」と手を伸ばす。真理子とイクソラの前で、二人の手は固く結ばれた。

 ライラックが出て行った部屋、イクソラの見張りの中、二人は検体を取り扱う前の準備をしていた。万が一のことを考え、部屋の隅に台や機械を移動させる。そして、それらを取り囲むように感染予防のための透明なカーテン、防護ビニールカーテンを取り付けた。


「何をしてるんだ?それは?」

「今から感染者たちの検体を扱うんだ。安全や二次感染には注意するが、万が一のことを考えて、対策を取った。俺たちも防具を身に着ける。あんたもそこから出して、自分に着けておくことを勧めるよ…」


 西条は冷たい物言いだが、ちゃんと質問には答え、イクソラにも防具を付けるよう指示した。真理子は何だかおかしくなって小さく笑った。


「どうした?」

「だって西条さん、冷たいし素っ気ないし、でもちゃんと答えて防具渡すんだもん。冷たいのか優しいのか分からなくって」

「い、いいからそんなこと。準備できたらまとめて分析するから、早く手動かして…」


 西条は照れているのか、無言になりてきぱきと動き始めた。そして、準備が整った解析班の部屋。


 「じゃあ、始めるか…」


西条は声を掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ