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ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
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第三章 エンデミック③

 この自分たちがいる関西で、そんな会議が行われているとも知らず、真理子と西条は分析を続けていた。

 分析を再開してもう何時間も経った。

 昼食もこの部屋で…。イクソラが運んできたのだ。他の隊員たちとの一切の接触を禁じられていた。

 部屋から出ることなく分析を続けている二人の疲労はピークに達している。


 「これもダメか…」

 「西条さん、天然痘のワクチンって種痘ですよね…」

 「そうだ…それがどうかしたか?」

 「このラルドウイルスが、天然痘と緑膿菌を掛け合わせて作られたものなら、それぞれに効果のある薬を掛け合わせる…なんてことは無理ですか?」

 「種痘は今ここには無いし、天然痘の治療と言っても対症療法しかない…」

 「そうですか…あ、だったら…」


 真理子と西条はいろいろな方法を試しながら、何とか薬を創ろうとしていた。それでも、治療薬はなかなか作ることが出来ない。ふと真理子が何かを思い出した。


「西条さん…私…今、思い出したんですけど…。二回目の分析をしたとき、キャリアの血液がありましたよね?それ、もしかしたら…」

「キャリアと言うことは病原体はあるが、発症しない…。発症しないと言うことは耐性がある…その耐性がなにかを見つけられれば…」


 二人は顔を見合わせ、血液の分析に取り掛かった。血液を走査型電子顕微鏡で観察する。赤血球、白血球、血小板、ラルドウイルス、それ以外に見えるものはなかった。真理子は、「西条さん…ウイルスだけ取り除いて染色してみませんか?もしかしたら、何か分かるかも…」と、提案した。


 「よし、こうなったら思いついたものは全部やってみよう…」


 西条は器用に器具を使い、ウイルスだけを取り除いていく。数分後、取り除いたウイルスに特殊な染色液を使用し、ウイルスを染めていく。しかし、どれも綺麗には染まらず、ラルドウイルスのみを鮮明に観察することは出来なかった。


「何でだ…これで染まりそうなものなのに…。人工ウイルスだから、一筋縄ではいかないってことか…」

「西条さん、これでやってみてください!」

「これは?」

「薬品棚にあるのを見つけたんです。メチレンブルーと酢酸オルセイン、ビクトリア青染色液、普通のウイルスでないなら、普通の染色から外れてみませんか?」


 西条は染色液のビンを真理子から受け取ると「なるほど。常識から外れてみよう。マリちゃんも染色手伝ってくれ」と言った。二人はウイルスを取り出しては染色する。何度も、何度も…ずっとその繰り返しだった。そして、一つ一つ観察を進めていく。


「あ、これなら鮮明にウイルスが見えますよ!」

「本当か!?どうなってる!?」

「これは…結構複雑な形だな…。普通の天然痘でもないし、普通の緑膿菌でもない…。さすが、人工的に作られただけあるな…」

「当たり前ですけど、こんなの初めて見ました…。何か、恐ろしいですね…」


 西条たちが観察をしたラルドウイルスは、今までにみたことのない形をしていた。煉瓦型にも関わらず、緑膿菌のように一つが長細い細菌の形にも見える。初めに真理子たちが言った“ウイルスのような細菌のような”は的中していた。


「ウイルスの周りに僅かにある点状のものって何でしょうか…。エンベロープではないみたいですけど…」

「そうだな…エンベロープではないし…もしかしたらこれが、キャリアの元になってるのかも。これ、拡大してみよう」

 

 顕微鏡の横に設置してある画面いっぱいに、ウイルスが映し出される。


「これ、一つの細胞のように見えますね…。細かい点が集まってるんだ…」

「よし、この点状のものを集めて、シャーレ内で感染させるぞ。その時に、どう反応するかだ」


 二人は実験をしてみることにした。採取した点状のものを意図的に感染させる。その時、それがどう反応するかを見てこれからのことを決めて行く。そういう手順だった。

 一方その頃、他の班では異変が起きていた。最初の異変は医療班だ。


「隊長!聞こえますか!?デュランタです!隊長っ!」

『どうした!?何があったんだ!?』

「分かりません…リコリスが…真っ赤で…」

『君たちはそこを動くな!すぐに応援をやる!』

 

 ライラックはデュランタの通信を切り、制圧班と保護班の班室へ連絡をした。


『制圧班、保護班、聞こえるか!?』

「こちらルピナス、聞こえます」

「カッシアです。聞こえてますよ隊長」

『医療班で感染の恐れ。直ちに急行してくれ。私が放送を掛ける。放送を掛けたあと、君たちに連絡する。突入するのはそれからだ』

「分かりました。到着後、迅速検査行います」

『頼む。それと…恐らくリコリスは感染者だ…』


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