第三章 エンデミック①
真理子が見たもの、それは地上での様子だった。
町は崩壊し、人が住めるような状態ではなく、あちこちに感染者の姿が映っている地獄のような街の姿。
「今の地上だ。ウイルスは自然拡大し、ここまで広がった。今は、関西のありとあらゆるところに感染者がいる。まさか、こんなに早くラルドを突き止められるとは思ってなかったよ…君たちは優秀だな」
「そんなこと関係ねえ。俺が聞いてるのは、これが人工ウイルスで天然痘と緑膿菌を掛けわせたものなのか、何でここに天然痘があるのかを聞いてんだよ!これはお前たちが言ってるラルドってやつなのか!?」
「君の質問に一言で答えるとすれば、イエスだ。君たちはそこまで突き止めたのか…。君の言う通り、これは天然痘と緑膿菌を掛け合わせた人工ウイルス・ラルドウイルスだ」
「…ラルドウイルス…?あの、それって…」
「私の口からは言えない。これは機密事項だからね…。ただ、もうすぐお帰りになる、あの方なら話してくれるかもしれないよ…?」
「あの方って…?」
「…中原雅子…だろ?確か、コードネームはアマリリス…」
ライラックは「さすがだ」と手を叩いた。そして、コントロールルームの扉が開き、雅子が入ってきた。真理子は思わず駆け寄って雅子に抱きつく。
「おばちゃん!!」
「マリちゃん…」
「一体どういうこと?これ…」
「アマリリス様…この二人がラルドとベクターについて突き止めました…」
雅子は二人を交互に見て、「そう…やっぱり早いわね…」と微笑んだ。
「二人はどこまで知ってるの?」
ライラックが説明しようと口を開いたとき、西条がそれを遮るように話し始めた。これは人工ウイルスで、天然痘ウイルスと緑膿菌を掛け合わせたものだと言うことを。
「天然痘ウイルスは、ソマリア人の青年を最後に自然感染の患者は報告されていない。それに、今の地球上で天然痘は存在しないと言われている。あるのは、BSL4の研究施設二か所だけだ。それなのになぜ、ここに天然痘ウイルスがあるんだ…」
「それはね…天然痘ウイルスをくれた人がいるからよ、西条くん。あなたたちが知らないことも、この世界にはたくさんあるの。あなたたち二人は、そのうちの一つを突き止めただけよ」
雅子はそう言うと、自分の席に座り、二人を外へ出すよう命じた。それにライラックたちが従う。
「くそっ…。絶対に突き止めてやる。何が何でも、全部…」
部屋に戻ってからの西条は様子がおかしかった。さっきまでの彼とは違い、どこか鬼気迫るものがあり、少し恐ろしく感じた。
「ブルースターさん…」
真理子の呼びかけにも反応せず、ただひたすらに検体の分析をしていた。扉が開き、イクソラが入ってくる。
「何の用だよ…」
「私は解析班の主任なんで、ここにいるだけだ」
「主任か…監視だろ?どうせ隊長にでも言われたんじゃないのか?“あいつらを見張れ”って」
図星だった。イクソラはため息をつきながら答えた。
「そうだ…。隊長から頼まれたんだ。君たち二人を見張れって。それと、伝言を預かってる。『今日から君たち二人には他の職員との接触を禁じる。二人の安全のために、自室に戻ることは許さない。許可があるまでは班室にいること』と仰っていた」
「何が安全のためだ。隔離…いや、監禁だろ…。だいたいの想像はつく。俺たちが病原体を突き止めたことによって、他の職員に漏らされることを危惧してるんだ」
「君たち二人は優秀すぎる。こんなに早くラルドウイルスを突き止めるとは思ってなかった。最後の計画を遂行するまで、君たち二人は監視させてもらう」
イクソラはそう言って丸椅子を取り出し、静かに座った。二人のことを本当に監視するようだ。
「どうせやることなくて暇なんだったら、あんたは検体でも取ってくる仕事をしてくれよ」
西条はそう捨て台詞を吐き、分析に戻った。
「西条さん…」
「アネモネさん、ここでは名前は禁止だと最初に言ったはずですが…」
「別に良いだろ。ここには二人しかいなくて、俺たちは知り合いだ。それに、あんたが俺たちに指図できる筋合いはない。マリちゃん、続きやろうか…」
イクソラは何も言わず、口を閉じた。西条はわざとなのか、真理子をコードネームではなく、敢えて名前で呼んだ。ULIで仕事をしていた時のように。
そろそろ西条のキャラが崩壊しますよ。もちろん、意図的に変えてます
ウイルスが何なのか判明しましたが…これから二人はどうしていくんでしょうね…
全く見当も付きませんね…




