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ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
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第二章 確証④

「隊長…感染者です」

『なら、今すぐラボに連れて行くんだ』

「それが…感染者に間違いないのですが、症状が出ていなくて…」

『…解析に回せ。感染者のあらゆる検体を採取し、解析班に分析させるんだ。感染者はとりあえず、“ラボ”に隔離だ。…ラボのことは誰にも悟られるんじゃないぞ…』

「…了解」


 イクソラは検査棟へと戻り、デュランタたちを集めた。

「女性は感染の可能性がある。とりあえず、女性のあらゆる検体を採取してくれ。皮膚、唾液、血液など、分析に使える検体を全て採取するんだ。その後のことは私に任せてくれて構わない。デュランタ以外は男性二名の適性検査に…以上だ」


 医療班のメンバーはどこか腑に落ちない顔をしていたが、幹部の指示は絶対。逆らうことも、異議を申し立てることも敵わなかった。


「イクソラさん、検体の採取が終わりました。これ…」


 デュランタは検体を採取し終え、病理組織容器やプレイン容器、ポリスピッツ容器に入れた。そしてそれをイクソラに手渡した。


「助かった。ありがとう。あとはこっちでやっておくから、君は適性検査室へ行ってあとの四人を手伝ってやってくれ」

「はっ、了解しました!」


 デュランタが隣の部屋に入っていったのを確認し、イクソラとライラックのみが知る隠し扉を開く。普段は壁に同化し見えないが、バンドをある場所にかざすと反応し開くようになっていた。イクソラは女性を車いすに乗せると、通路へと進み、“ラボ”と呼ばれる場所へ降りて行った。二人ほどの人数がやっと入れるほどの広さで、他のエレベーターとは異なる、独自の電源を持ち合わせたもの。これをイクソラが見つけた際にライラックは彼を副隊長に任命したのだ。

 エレベーターの扉が開いた。数段の階段を下ると、厳重なロックがかかった扉が見える。バンドをかざし、ロック解除番号を入力する。すると、電子音と共に白い光が目に入った。思わず目がくらむ。


「待ってたぞ…」

「隊長…」

「この女性か?」

「はい」

「確かに、症状はないな…。彼女を隔離したら、すぐ検体の分析にかかるんだ」

「了解しました」

 

 二人は短い会話を交わし、女性を隔離した。どこからともなく聞こえる唸り声。イクソラは奥へと進み、ある一室をじっと見る。そこにいたのは地上にいるはずの感染者の姿だった。


「いつか、あなたを治します…絶対に…」


 イクソラはそれだけを言うと、部屋の前にあるプレートを指でなぞった。彼は唇を噛み締め“ラボ”から逃げるように部屋を出ていく。【天鷲正尚(あまわしまさなお)】プレートにはそう書いてあった。

 解析班の部屋へと戻ってきたイクソラ。彼の顔は憔悴しきっていた。それに気付いたのか西条が声を掛ける。


「主任、どうかしたんですか?」

「え…あ、いや。何でもない。それより、新たに分析するものがある。何も聞かず、これを分析してくれ」

 彼はそう言ってデュランタが採取した検体を台の上に並べた。

「血液に皮膚片…これって…」

「ある患者の検体とだけ言っておく。それ以外のことは言えない」

「…またそれですか…」


 西条がイクソラに何かを聞こうと近づいたが、真理子は彼の服を掴み、西条がイクソラに近づくのを阻止した。

「…やりますよ。分析…」

 西条たちは細心の注意を払って、容器のふたを開けスポイトやシリンジを使い、専用の器具の中へと検体を移動させる。

「…この検体は誰のです?感染しているようですが…」

 顕微鏡から目を逸らし、西条がイクソラに尋ねる。

「機密事項だ」

 そっけなく答えるイクソラ。ため息をつき、再び顕微鏡を覗いた西条。何かの異変に気付いたのか、黙って真理子に合図した。彼女は促されるまま顕微鏡を覗く。

「これって…」

「ああ。恐らく、この検体を提供した人物は“キャリア”なんだと思う。だが…」


 西条の話を遮るかのように、静かな部屋に大きな音が響く。何かが割れる音…音の発生源はコリウスだ。西条たちの話に気を取られていた彼は検体が入っているガラス瓶を床に落としたのだった。腕が赤く染まっている。血液を浴びたのだ。驚いた顔でコリウスを見る一同。

「あ…血が…う、腕に…これ…」

 パニックを起こし、言葉もままならないコリウス。ただ一人、西条だけは冷静だった。彼は手元にあったアルコールをコリウスの腕にかけた。そして流し台へと連れて行き、消毒薬で腕を洗う。コリウスは真っ青な顔をして立ち尽くしていた。

「それって…血液だよな…」

「“Ⅹ”って言うのがある血液…だよね…?」


 ペンタスと羽衣が言った。それを聞いたコリウスは余計に真っ青になる。口を魚のようにパクパクと動かしている。過呼吸を起こしかけているのだ。


「コリウス、落ち着くんだ。…主任、医務室に彼を連れて行ってください。恐らく一瞬だったので発症はしないだろうが、念のために隔離したほうが良い。それと、この部屋を消毒しないと…」

「分かった…。彼は私が連れて行く。君たちはこの部屋の消毒をしてくれ。ゼウスに言えば大丈夫だ」

 イクソラがコリウスを連れて出た。それを確認した西条は、ゼウスに呼びかける。

「ゼウス、この部屋を綺麗に消毒してくれ。感染の恐れがある」

〈承知しました。消毒を致します。皆さまは、一度部屋の外へ出てください〉

「みんなここから出よう…」

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