第二章 確証③
地上に研究所が見えてくる。屋上には緑のバンドをしたグループが見えた。医療班だ。ヘリはゆっくりと屋上ヘリポートに着陸する。デュランタがヘリの扉を開ける。カッシアたち隊員が下りてくると、奥に生存者三名が確認できた。
「三名に感染兆候なし、迅速検査でも以上なしだ。男性二人に怪我はなし。女性は左足骨折。以上だ」
「了解であります。あとのことは自分たちに任せてください」
「おう。じゃあ頼むな」
「はっ!お疲れさまでした!」
デュランタが頭を下げると、制圧班・保護班のメンバーは先に検査棟へと入っていった。施設内に入るには、屋上ヘリポートから検査棟、適性検査室を抜けて、エレベーターに乗り込むしか内部に入る方法はない。手間はかかるが、その分安全性が確保されているのだ。もし仮にこの研究施設で感染者が発生したとしても、すぐに制圧できるように設計されている。
「君たちも今日はご苦労だったな。初めての実践にしては大したものだ。よく落ち着いて行動が出来たな。保護班のメンバーもご苦労だった」
カッシアはエレベーター内で現場へ赴いた班員たちを労った。
「あ、ありがとうございます」誰かがそう言ったのと同時に、エレベーターは各階に到着していく。そしてそれぞれが自分の持ち場へと戻っていった。生存者が到着したとイクソラに連絡が入った。彼は解析班の班室から出ると、廊下で対応に当たる。
『イクソラ、聞こえるか?』
「はい、聞こえます」
『検査棟には連絡を入れておく。今から向かってくれ。もし万が一のことがあれば…』
「分かっています。任せてください…」
ライラックは彼のその言葉を聞くと通信を切った。そして、検査棟にいる医療班へ連絡する。
検査棟では救助された三名の検査が行われていた。問診、事態発生から今日までの一連の流れ、怪我や病気の有無、持病など様々な質問と共に、検査が進められていた。
「では、事態発生から今日までは、スーパーなどの商業施設にいたんですね?」
「はい…。まずは水や食料を確保したほうが良いかなと思って…。でも、すでに持ち去られたりしてて…。やっとあの場所で水を手に入れられたんです。あとは救助を待つだけだと思っていたら、一緒に逃げてた女性がケガをして」
「あの女性はお知合いですか?」
「いえ、逃げてるときにたまたま。女性が一人だと危ないかなと思って、声を掛けたんです」
医療班の一人、コキアが男性に質問をしていた。ある場所ではもう一人の男性の検査が行われていた。
「では、腕を出してください。採血をしますね…」
「これは何の検査なんですか…?」
男性が問いかけるも、返事はしない。
そしてある場所では骨折した女性の検査と処置が行われていた。女性は固定の痛みに顔を歪め、額に汗を滲ませている。
「もう少しで終わりますからね。ギプス固定したら、痛みは落ち着くはずです。しばらくは安静にしてくださいね。よし、これで終わりです。次はレントゲンに行きましょうか…」
処置にあたっていたのは、リコリスだった。女性は頷く。レントゲンが終わったら、通常の検査…。彼女は頭の中で次の流れを確認していた。その時、検査棟に放送が響く。
『ライラックだ。検査中に申し訳ない。イクソラをそっちへやった。あとは彼の指示に従い、行動してくれ。以上だ』
「みんな、聞いたか?…イクソラさんが来たら、全員の状態報告をしよう。それが終わったら、あとはイクソラさんの指示に従うんだ」
デュランタがそう言ったとき、検査棟の扉が開いた。
「デュランタ、現状報告を」
「はっ。男性二名の検査は異常なし。現在は問診等行っています。女性に関しては、骨折していたので処置を行い、この後レントゲン撮影を。その後検査、問診を行います」
「女性はどこに?」
「リコリスが処置に…奥です」
イクソラはデュランタから場所を聞くと、部屋の奥へと歩いていった。カーテンを開けると、ギプス固定を施した足が見える。その正面ではリコリスが問診をしていた。
「あ、イクソラ様…」
「状態は?」
「あ、はい。左足の骨折です。ギプス固定をしてレントゲン撮影を終えました。すでに血液検査は終えてますので、あとは結果を見て感染徴候がないことを確認します」
「分かった。問診と流れは?」
「既往症なし、アレルギー、持病なし。事態発生から今日までは男性二人と逃げていたようです。スーパーに入るときに骨折。その後はスーパーの中に隠れていたと…」
「…骨折時の状況は?」
「あ、それはまだ…今から…」
リコリスがそこまで言いかけた時、ネモフィラが血相を変えて走ってきた。手には青く光る液体と、タブレットがある。
「あ、イクソラ様、リコリス…ちょっと」
ネモフィラは二人を女性から離し、震えた声で話し始めた。
「時間がないので、単刀直入に言います。…あの女性は感染者です。実はさっき保護班から連絡があり、女性の検体だけが青く光っていると報告がありました。現場での迅速検査では異常なしと判断されたようですが、検査薬の反応が遅かったか、上手く検体が採れなかったことが原因かと…」
「つまり、ここへ連れてきたは良いが、感染者だということだな?」
「はい、そういうことです」
「で、でも…女性に症状は出ていません。体温は正常ですし、皮膚症状はありません…問題はどこにも…」
イクソラは周りに聞こえないよう一人で適性検査室へ入り、ライラックに報告した。
「隊長…ついに出ました…感染者です」
そろそろ施設内でも変化がありますよ…
感染者…裏切者…あ、これはネタバレなので秘密ですが…




