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ルークス~最後の希望~  作者: 文月ゆら
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第二章 疑惑④

 真理子は部屋の中に佇む男性を見て目を疑った。そこにいたのは幹部の一人、イクソラだった。彼は真理子たちを見て、優しく微笑む。


「私はイクソラです。皆さんお気づきかと思われますが、私は幹部の一人です。ここでは各班に一人の幹部が入ることになっているんです。ちなみに私がここのチーフを担当させて頂くことになりましたので。…では、順番に自己紹介しましょうか。コードネームだけで構いません。この施設で生存者の経歴は必要ないですので…」


 隊員として行動しているときと、全くと言っていいほど雰囲気が異なるイクソラを前に、真理子と西条は体が固まってしまう。隣を見ると、羽衣たち残りの四人は笑顔で頷いていた。


「じゃあ私から。私はカンナです。今日からよろしくお願いしますっ」

「わ、私はカクタスです。よろしくお願いします」

「僕はコリウスです。よろしくお願いします」

「俺はペンタス。よろしく」


 四人が自己紹介を終えた時、メンバーの視線が二人に注がれた。四人の後ろではイクソラがじっと二人を見ていた。その視線に気づいた西条が口を開く。


「俺はブルースター。よろしく」

「あ、私はアネモネです。よろしくお願いします」

「カンナさん、カクタスさん、コリウスさん、ペンタスさん、ブルースターさん、そしてアネモネさん…私を含めたこの七人が、今日から解析班として仕事をしていくことになります。一緒に頑張りましょう」


 イクソラはそう言うとメンバーに一瞥(いちべつ)をくれる。心なしか、真理子は自分が見られたような気に陥った。そしてイクソラは部屋の中の設備について説明を始める。


「まず、重要なことから説明します。入室時、退室時には必ずセンサーにバンドをかざしてください。そうしないと、扉は開きません。それに、ゼウスがいつ、だれがこの部屋に入ったかを記録しています。なので必ずバンドをかざすように。また、基本一日の多くはここで過ごすことになるかと思われますが…、食事の時、お手洗い、休憩時には自由に退室して構いませんので。では、機械の説明を始めますね」


 ここでもゼウスが管理…か…。真理子は西条を見る。西条もまた彼女と同じことを思っていた。この部屋にある装置はULIのものとほぼ同じ。二人には説明を聞くまでもなかった。


「ところで、今までに一度でも研究や実験などの職業に就いた経験がある方はいますか?」

 真理子と西条の二人はここで手を挙げるべきか迷った。出来れば目立ちたくない。下手に動けなくなるからだ。しかし、そこで思わぬ声が上がる。


「アネモネとブルースターは以前の職場で、確か何かの研究をしていたよね…?何だっけ…細菌…?分析…だったかな…そうだよね?アネモネ?」


 真理子は羽衣の言葉に戸惑いを隠せなかったが、ここまで言われてしまっては仕方ない。西条は「ええ。以前の職場で分析の仕事をしてました」と答える。イクソラは「そうですか。なら心強いですね。主な解析はお二人にお任せして、そのほかの解析や分析類は私たちが行いましょうか」と言い放った。四人は「賛成です」と口々に言い始める。


「困ったな…あまり目立ちたくなかったのに…」

「仕方ないよ、アネモネ…。彼女に悪気はないだろうし。それに俺たちが解析すれば、誰よりもいち早く情報を手に入れられる。前向きに捉えよう…」


 西条は真理子をなだめ、イクソラに聞いた。


「ここでは何の解析をしているんですか?それを教えてもらわないと、分析するものによって手順が異なるんですが…」

「まあ、それもそうですね。分かりました。ですが、ここでの仕事は他言してはなりませんよ。あなたたちなら、大丈夫だとは思いますが…」


 イクソラは、釘を刺すように二人を見た。そして、室内にある冷蔵庫へと歩いていき、中から小さな箱を取り出した。

 箱をアルミ製の袋から出すと西条に手渡す。目で開けろと合図し、箱を開けさせた。


「これは…」

「これって血液ですよね…?」


 真理子はイクソラに尋ねた。だが、イクソラは何も答えない。


「皆さんで分析してください。そしてそれが何の液体なのか、なぜ分析しなければならないのか、突き止めてください。実を言うと、私も何をどう進めていくのか、聞かされていませんので」


 イクソラはそれだけを言うと、壁際へと下がる。しかし、彼の視線は真理子と西条に注がれたままだった。


「仕方ない…やるか。俺は左側のビン、まり…アネモネは右側のビンを頼む」

「そうですね…分かりました。カンナ、カクタス、手伝ってくれる?」

「え、いや、私やったことないし…」

「大丈夫。私が教えるから、その通りにやって」


 戸惑う二人に言い聞かせ、やっと分析の準備が整った。西条もまた、コリウス、ペンタスを助手に分析を始めて行く。


「まずは、この液体が何かを突き止める。見た感じは血液だけど…ただの血液じゃないかもしれない」


 真理子は部屋を見回し、薬品棚を確認したり、光学顕微鏡や電子顕微鏡があるかを確認する。そして小さく頷き、指示を出す。

 

「カンナ、あそこにあるシャーレ…透明のお皿みたいなの持ってきてくれない?その小さいほう。カクタスは、薬品棚から青いラベルの試薬と、黄色いラベルの試薬を持ってきてくれる?」


 真理子に指示を出された二人は、動き始める。西条は真理子とは違う方法で、液体の正体は何か突き止めるようだった。羽衣はシャーレを真理子の前にセットし、カクタスは言われた試薬を持ってくる。


「今から、これが本当に血液かどうか調べるわね。そして、血液だったら血液型を調べる。あとできっと役に立つはず」


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