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商工戦士オーダンナ―  作者: 宮城 英詞


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6/11

スイッチ一発!!商工戦士オーダンナ―始動!

 「なんでこんなことになったんやろ……」


 数分後、ミオは自分の部屋で着替えを済ませ工場へ降りてきた。


 プロテクターと一体になった服というのは判るが、各部がぴったりフィットの素材で作られたいかにも趣味の産物なのが傍目にもわかった。


 これ、体形が気になる人なら絶対に着られない奴だ、とチカは内心思ったが、また彼女が嫌がりそうなので、あえて口には出さなかった。


 そもそも、こんな服とヘルメットを娘に内緒で用意するとは、いくら父親でも許されていいのかという疑問もあるが、他所のうちの話だし、という事でこれも口に出さないことにした。


 当然、ヒロシは上機嫌である。


「ミオ、カッコええで!よし、写真とっとこか」


「やめんか!恥ずかしい!」


 こういう時でもやはり親は親、子は子である。


 にこやかに写真を撮ろうとする、ヒロシに、やはり嫌がるミオ。


 結局、なんだかんだ二人の写真のシャッターを押すことになったチカは、


「一応、避難勧告出てるんだけどなぁ」


 と、アットホームな空気に小さな声でぼやいた。


 そんな呑気な空気に水を差したのは、ベルタとアポロだった。


「ネットの情報によれば宇宙人は生駒山に着陸、こちらに向かってイマス」


「起動、急ぎまショウ」


 二人のことばにヒロシは大きく頷く。


「オーダンナー」のコックピットは開かれ、搭乗用の梯子もかけられている。


 準備は万端のようだった。


「ええ?守るんはこの近所だけやからね?」


 そう言うと彼女は、胴体部のコックピットに乗り込む。


 その操縦席に、彼女は見覚えがあった。


「これは……!」


 驚くミオに、同じく梯子を上ってきたヒロシはそれに満足げに頷いた。


「そうや、こないだまでウチにおいてあったゲーム機をそのまま組み込んだ。やはり使い方の試行錯誤の回数は今やゲーム機が先を行っとるからな」


「ほなウチにタダでやらしてたんも……」


「そうや、すべてはこのためや。もう訓練は要らんやろ」


 それを下で聞いていたチカは彼女専用というのも、あながち嘘でないと思った。


 確かに、あれほどの腕前ならある程度ぶっつけでも操縦はできるだろう。


 だてにゲームセンターのゲーム機をただで持ってきていたわけではないという訳である。


 そしてヒロシは、ミオに備え付けのヘルメットを渡す。


 それもミオは見覚えがあった。


「げ、これゲーム機のVRゴーグル付いてるやん。最近見んと思ったら……」


「ディスプレイも、ヘッドマウントディスプレイにしたんや、整備性やら価格やら考えたら替えの効く部品が一番やろ?」


 言いながら、ヒロシはヘルメットから伸びるケーブルを繋ぐ。


 ミオがそれを被り、スイッチを入れると、ゴーグル内と、チカが見ているサポート用のパソコンに工場内の光景が映し出される。


 どうやらそれは、頭部のカメラから映し出された映像のようだった。


 システム担当の長田がそれを確認すると、梯子の上のヒロシにOKサインをだした。


「頭部の動きはミオの視点と連動するようにしてある。これで、ほぼ人と同じ視界で動けるはずや」


 ヒロシがそう言うと、カメラの映像と、オーダンナーの頭部が動く。


 どうやらそれは、ヒロシの指示に従って彼女が首を動かした結果のようだった。


「……確かにこれやったら、操縦はできるけど……なんか宙に浮いてるみたいで気持ち悪いわ」


「視点が急に六メーターになったからな、まぁじきに慣れるやろ……コックピットハッチ閉めるで」


 そう言うとヒロシは梯子を下り、アポロとベルタに合図を送ってハッチを閉めさせた。


 それを確認すると、今度は、傍らにいた荒本に声をかける。


「よっしゃ、空気注入や」


 その声とともに、なにやら空気が注入される音が響いた。


 それに、中のミオから通信機越しに声が上がる。


「ちょ、ちょっと何?なんか膨らんできたんやけど?」


 どうやら、コックピットで何かあったらしい。


 チカが補助PCを見ると、そこには、VRゴーグル付きのヘルメットを被りながら、狭いコックピットの中でいくつもの風船のようなものに囲まれるミオの姿があった。


 それに対し、通信機でヒロシが説明を加える。


「安全装置の一種や、膨らみっぱなしのエアバッグやと思ったらええ。粘性の高い水を入れようという案もあったんやけど、車部品メーカーさんの協力で、こんな感じになった。理論上は核兵器が落ちて来ても中は安全!これで遠慮なく格闘戦できるで!」


 ヒロシがそう言うと、関係者らしき人が一礼して、周囲から拍手が起こる。


 なるほど、確かにいろんな人の技術が使われているようである。


 だが、当のミオは無邪気にはしゃぐ気分にはなれないようである。


「……できたら、格闘戦なんかしたないねんけど」


 彼女はそう言うと、風船に身を任せぐったりしていた。


 だが、「スーパーロボット作ろう会」の皆さんはテキパキ動いていた。


 梯子を片付け、「オーダンナー」の背面につながれたケーブルを確認する。


 そしてもろもろの確認ののちに、ヒロシは大きく頷いた。


「よっしゃ!いよいよエンジンに火を入れるで」


 その言葉に、一同に緊張が走る。


 チカはアポロとベルタが運んできた大きなレバーの付いた物々しい装置に流石に尋ねた。


「何か特別な動力なんですか?」


 それに、ヒロシはよくぞ聞いてくれたと、満面の笑みで答えた。


「これぞ我が、天王寺製作所の発明にして「オーダンナ―」の心臓部。人の精神をエネルギーに変える夢の動力、「霊子力エンジンや!ワシがアポロとベルタの助けをえて作った究極の動力なんや」


「霊子力エンジン?そんな事が出来るんですか?」


 それは聞いたこともない代物だった。


 精神エネルギーを動力に変えるなどという事が果たして本当に可能なのか?


 それに対し、ヒロシは明確な回答を返した。


「基礎理論および実証実験は一切出来上がっていない!なので、補助として99.99%は電力で賄う!」


「いや、それは補助とは言いませんよ……」


 拍子抜けする回答にチカは全身の力が抜ける思いがした。


 つまるところ、気分でくっつけたなんかよくわからない変なパーツがあるというだけの話らしい。 


 なんでそんな得体の知れないものを実験もせず入れちゃったんだろう?


 チカの疑問を尻目に、ヒロシは興奮した様子でレバーに手をかけていた。


「よっしゃミオ!ご近所の電力、お前に預けたで!」


 そして、ヒロシはレバーを下げた。


 次の瞬間、ケーブルを強烈な電流が流れる。



 落ちないように改造されたブレーカーが悲鳴を上げ、周囲の照明が落ちた。


 あちこちからスパーク音が轟いたのち、工場内は異様なほどの静寂に包まれた。


 固唾を飲む一同。


 そして、それは、小さく、そして低い音として聞こえてきた。


 何かが定期的に動く音。


 それは間違いなく「オーダンナ―」の心臓部の鼓動そのものだった。


 そして、「オーダンナ―」の目の部分に光が灯る。


 それはさながら巨人の目覚めのようだった。



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