地上の基地で応援を呼びかけたオヤジ
『ミオちゃん?大丈夫?起きて!』
チカの言葉が頭に響く。
あれ?なんだっけ?
今どこにいるんだっけ?
ミオは周囲を見回した。
周囲は宇宙空間。
今、ウチはロボットに乗っていて……。
とそこまで考えていたところで、ミオは我に返った。
「……そうや、バリアを破って船に突っ込んだんやった……」
ミオはそう呟くと周囲を見渡した。
オーダンナーは大型宇宙船に腰までめり込みそのまま止まったようだった。
そしてこちらの無事が伝わり、地球の感性とチカの声が届く。
『大丈夫?怪我無い?』
その言葉に、ミオはゴーグルを額まで上げて、コックピット内を確認する。
「おかげさんで今のところ無事やけど、満身創痍やな。腕は両方どっか行ったし、「オーダンナー」は動かれへん。なんかアラートが一杯でとるけど……もうどれが何やら……」
バリアを破ることに集中しすぎて後の事を考えていなかった。
毎度この調子なら一撃で相手を仕留めていたのだが、どうも、相手の大きさとバリアに集中しすぎたせいでイメージ、すなわち霊子力が追い付かなかったようである。
どうすれば?
辺りを見回す、ミオに今度はヒロシからの声が届いた。
『関節部の磁力をカットするんや。それで各関節はバラバラになる。いったん脱出して、もう一度霊子力で引き寄せるんや』
「……関節外して脱出するようなもんか」
危険だが仕方ない。
ミオは、父の言葉に、手元のパネルを操作した。
たちまち、コックピットブロックである胴体が腰から離れ、腰と足とが離れる。
どうにかそれで船体から離れたミオだったが、再度、磁力をオンニしても、離れすぎているのか、分離したパーツは戻ってこない。
ミオは、再度ゲージを確認し、絶望的な顔になった。
「……あかん。人型でなくなったせいか霊子力が足らへん。このままやと……」
そして、ミオは今度は強烈な衝撃に見舞われた。
それは付近から飛んで来たレーザー砲の狙撃だった。
声を上げる間もなく、回転モーションがかかり、ミオはぐるぐると回る。
必死の調整にもかかわらず、オートバランサーは機能せず、ミオはイメージをする事もままならない。
やっと回転が止まったと思ったら、ミオは「ハサン号」のクローアームに捕獲されていた。
どうやら、背部に装備したイオンエンジンを狙撃で破壊されたらしい。
ミオは動くこともできなくなっていた。
『どうやら我々の勝ちのようだな、地球のスーパーロボット。お前が飛び込んでくれたおかげで、宇宙空間を探す手間が省けた。感謝するぞ』
そして、ガイの勝ち誇った声が聞こえる。
回転によるダメージと悔しさで、ミオは言葉を返すことができなかった。
「……捕まってシマッタ……!」
アポロが絶望的な声を上げる。
その声と共に、種子島の指令本部には重苦しい空気が垂れこめた。
「オーダンナー」はバラバラになり、メインパーツは推進機すら失っている。
もはやどうにもならない。
そんな中、チカは必死に呼びかけていた。
「ミオちゃん!逃げて!」
だが、そんな、チカの肩を安野はそっと叩いた。
「逃げても、外は何物もない宇宙だ。この場合は、むしろ捕まった方が安全だ」
安野はそう言うと深くため息をつき、椅子に腰かけた。
「……そんな」
打つ手なし。
むしろ、安全を考えれば、これ以上の抵抗は無駄。
認めたくはないが認めざるを得ない。
チカもその場に崩れ落ちた。
ミオは霊子力の保護が無いせいか、コックピットの中でぐったりしている。
安野はそれを確認して、やれやれと立ち上がった。
「こうなったら、我々も降伏を認め、小惑星の軌道を反らすよう彼らに頼むしかない。彼らの科学力がどれほどのものか分からないが、もはや落下阻止は困難な状況になり始めているはずだ」
もともと駄目ならどうなる予定だったのだ。
チカは冷静な安野の言葉に、頷かざるを得なかった。
一体地球はどうなるのだろう?
彼らが、ワープゲートを開いたその先は?
地球は植民星にされてしまうのだろうか?
それともさらなる戦争?
いずれにしろ厳しい未来が待ち構えているだろう。
だが、認めざるを得ない。
チカは悔しくて、ただうつむいて唇をかみしめる事しかできなかった。
が、
「アカン。諦めたら、そこで試合終了や」
そんな空気の中、一人そう声を上げた男がいた。
一人、腕を組みデータを見ていた男、ヒロシである。
それには、チカも、安野も、アポロ、ベルタ他「スーパーロボット作ろう会」の一同すらも賛同しなかった。
ただ負けを認めず、意固地になる往生際の悪い男。
皆にヒロシにはそう映っていた。
だがヒロシは、それすら構わぬと言った様子で通信のスイッチを押した。
それは、ミオへの通信回路だった。
「ミオ、残りの「クラバーン」を全部放出するんや。みんなに応援してもらえるようカメラを増やせ」
「ちょっとお父さん!」
あまりの事に思わずチカが声をかける。
だが、ヒロシは至って真面目であった。
彼は、さらにライブ配信のスイッチも入れた。
そして、振り返り一同に向かって語りかけたのである。
「ええか?『オーダンナー』の力の源は、精神力、すなわちみんなの夢の力、意志の力や、こいつは今、みんなの想いを背負っとる。みんなが諦めたら、『オーダンナー』の霊子力はそこまで。逆に言えば、みんなが諦めなんだらオーダンナーは絶対に負けんのや。それが霊子力の正体!」
確かに、「オーダンナー」の今までの挙動にはミオの精神力だけでなく、明らかにライブ配信や、ギャラリーの精神も影響している。
それを意図的に高揚させ、一方向へ向ける。
チカはヒロシの導き出そうとしている結論が何なのか、わかった気がした。
「まさか……!」
「そう、応援するんや! 全世界で! ミオを! オーダンナーを!」
この時、霊子力ゲージをモニターしていた、ベルタはのちに語る。
ヒロシが全世界に向かって、そう言った瞬間、モニターしていた霊子力ゲージに明らかな反応が起きていた、と。




