鉄壁、ハサン号
ミオは呼吸を大きく整えた。
巨大な宇宙船がこちらに向かってきている。
多分向こうは、レーザー砲を装備しているだろう。
こちらの武器はロケットの積載量の関係で「コ・バーン」と「ソロバーン」の二つのみ。
となると、使えるのは霊子力パワーを使った技に頼るしかない。
向こうを無視して隕石を加速させるという方法もあるが、結局は妨害されるだろう。
『事前に話した通り、あの船は「マイドリウム」で動く船デス。ほとんど推進力にエネルギーを使ってイマスので「オーダンナー」のような奇跡は起こさないかもしれマセンが、パワーは互角。気を付けてくだサイ』
そして、アポロの助言が再確認のように届いた。
それは、事前に聞かされていた。
強力な星間エンジンを積んだ宇宙船と、それと同じ動力源を積んだロボット。
パワーは互角、だが、密度はこちらの方が濃い。
それならば。
ミオは出発前に作戦を決めていた。
「懐に飛び込む!」
ミオに迷っている暇はなかった。
いくつかの「クラバーン」を放出し、それぞれの方向に射出する。
ある者は小惑星に打ち込まれ。ある者はワイヤ―で引っ張られたそれは、様々なアングルからこれからの戦いをライブ中継してくれるだろう。
これが本当に霊子力の増幅になるのか?
ミオは半信半疑だったが、それは数秒後。
『ミオ、ええ感じや、コメ欄も温まってきたで』
と、言う父の言葉と同時に、霊子力ゲージが光り輝きだしたのを見て、それはどうやら嘘ではないのだとミオには思えてきた。
「嘘かホンマかわからんけど、みんなの声援が力になってる! そう言う事でええやんか!」
ミオはそう自分に言い聞かせるように言うと、オーダンナーを小惑星の地表に沿って加速させた。
相手は巨大な要塞のような船だが、懐に飛び込めば、こっちのものだ。
近づけば大きな大砲は、使えない。
だから、小惑星の岩陰から急接近する!
そしてミオは数秒後、どこまで進んでも先ほど見えた大きな船が視認できない事に気が付いた。
「……あれ?」
おかしい。
もう見えてもおかしくない頃だ。
向こうも動いてる?
そこまで考えた所で「クラバーン」の画像を解析したAIが警報を鳴らした。
「え?」
上に注意のマーカーが視界に急に現れて慌てて急停止するミオ。そして、それと同時に眼前にビーム光が降りそそいだ。
「しまった、上や!」
ミオが上を見るとそこには、こちらに艦首らしき方向を向ける巨大な船の姿があった。
『ごきげんよう。地球のスーパーロボットよ。ここまで来るとはいい度胸だ』
どうやら、向こうから通信で呼びかけているらしい。
ミオは、即座に上昇した。
『おいコラ!話聞け!』
なにか叫んでいるが知ったことではない。
どうせ言う事は判っている。
ミオはそのまま、相手の船に急接近した。
「知らんわ!食らえ!ソロバーンスクリュー・ドリルクラッシャー!」
ミオの叫びと共に、腕に装備された鉄杭がせり出し、腕ごと回転を始める。
そしてそれは、必中の距離で腕から射出された。
が
「な!」
ロケットパンチは、突然現れた光る壁に当たってむなしくはじき返された。
ミオはそれに、思わず声を上げたが、めげずに攻撃を加える。
「なんの! 霊子力ビーム!」
接近しながらの光線技、だがそれも突如現れた壁によって、船体には届かない。
そうこうしているうちに、今度は「オーダンナー」そのものがバリアに衝突する事になった。
「キャァ!」
思わず悲鳴を上げる、ミオ。
「オーダンナー」は反動で巨大宇宙船から弾き飛ばされる格好になった。
ぐるぐると周り、上下左右の感覚がおかしくなる。
だが、「オーダンナー」のオートバランサーがその回転を止め、ミオは、必死に小惑星の影に向かって加速した。
続けて追いかけてくるビーム光。
ミオは必死に加速し、小惑星の影に飛び込んだ。
吐き気がする。目が回る。
でも生きてる。
ミオは必死に呼吸を整えた。
『ミオちゃん大丈夫!?』
そして、チカの声が届く。
そして、返事を待っていられないのか、ベルタからの声が届いた。
『あれは、対デブリ用のバリアデス。多分「オーダンナー」の霊子力とものすごく相性良くない!』
「……ほなどないせぇっちゅうねん」
即座に返事が返ってこないことは判っているが、息も絶え絶えの中から思わずツッコミ声が漏れる。
『ミオ!気合や!気持ちで負けたらアカン!こっちもバリアで返したれ!』
そして、親父からの気合はともかく当てにならないエール。
ミオは呼吸を整えながら、通信の間隔が短くなっていると感じた。
時間がない。
ミオは片腕になった「オーダンナー」で「クラバーン」をさらに射出して、相手の船の様子を確認した。
向こうはどうやら方向を転換し、こちらに向かっているようだ。
『地球のスーパーロボットよ、どうやら「マイドリウム」を内蔵しているようだが。同じエンジンを使う、この「ハサン号」を砕くことなどできない! 諦めて投降するのだ! その勇猛ぶりを称え。命だけは助けてやる』
そして再び敵船、「ハサン号」から通信が届く。
「……そらどうも」
ミオはそれに、反射的に返事をしながら、必死に考えていた。
パワーの質が相手と相性が悪い?
じゃあ向こうも同じ?
親父の言う通り、こっちでバリアが展開できれば……?
「……おとんのアイデア、試してみるわ」
ミオは再度大きく息を吸い、操縦桿を握りしめた。
よくよく考えたら、さっきのバリアの衝撃でこちらが壊れていないのがそもそも不思議だ。
そう、今までも、ミオはずっと無事だった。
霊子力は、攻撃だけではなく、防御にも働いている。
バリアはある!
ミオはそう信じて、再度「ハサン号」の前に躍り出た。
『おのれ! まだあきらめんか! 撃て!』
そして通信機越しに、向こうの叫びが聞こえる。
ミオはこちらに向く砲塔群をカメラ越しに凝視した。
「霊子力フィールド!」
ミオが残った片腕をかざすと、飛来したビームが次々に光り輝く壁に跳ね返される。
やはり、相手が使えるならこちらも使える。
「いける!」
ミオは、そう叫ぶと、再度「ハサン号」に向かって加速した。
飛来するビーム光、それをはじき返す「オーダンナー」
そして、「オーダンナー」は、残った腕を、高速回転させた。
「食らえ!バリアブレイク!ドリルパンチ!」
ミオの叫びと共に残った腕は、バリアごと「ハサン号」に衝突した。
弾けるお互いのバリア。
旋回しながらドリルのように、バリアに抵抗するオーダンナーの腕、ミオはまさにそこに狙いを定めた。
「アンド!スクリュードロップキック!」
バリアに干渉した一点に更にオーダンナーの回転キックが炸裂する。
物理法則はともかく、それはミオのイメージを具現化し、一瞬でバリアを突き破った。
そしてオーダンナーは「ハサン号」の船体に突き刺さった。
オーダンナーのキックは「ハサン号」の船体を大きく揺らした。
「船体に穴が開きました!」
ブリッジでデマが悲鳴のような報告を上げる。
それに、ガイは信じられないと言った顔で、船体の被害状況を確認した。
「バリアを力づくで破壊しただと?あの未開な星の人間が?」
リャクが必死に姿勢制御を行う中、ガイは必死に考えた。
「何と言うパワーだ。このまま船体を食い破られたら……」
一刻も早く排除しなければならない。
慌てて、船内外の様子を確認していたガイは、その様子に、自分の焦りが杞憂であったことに気づく。
敵のスーパーロボットは、船体を突き破ったまま動いていない。
「どうやら、バリアを破って力尽きたようだな」
どうやら敵は「マイドリウム」ごとこちらに飛び込んでくれたようだ。
ガイはその様子にほくそ笑んだ。




