宇宙の呼ぶ声
陸揚げ作業を行い、トラックで種子島宇宙センターへ。
ミオ、チカを始めとする、「スーパーロボット作ろう会」の一同はミーティングルームに集合していた。
ミッションの説明にあたり、まず、チームリーダーの安野が見せたのは太陽系の全体図だった。
「現在、小惑星帯から、ありえない速度で、小惑星が移動してきていることが観測されている。これがアンゴルモア星人の仕業とみて間違いないだろう。小惑星の直径は十キロ。これが地球に落下した場合地球に深刻な被害をもたらす。落下後の地震や津波、気候変動まで合わせれば、人口の九割が死滅。恐竜の絶滅と同じように生態系も大きな影響が出るだろう。計算によると残された時間はおよそ10日余り。我々には時間がない」
安野の言葉に合わせCG画像で小惑星が地球に落ちていく映像が映し出される。
その光景に会議室に居た一同はため息を漏らした。
嫌がらせとしては、深刻過ぎる話だ。
それにアポロが声を上げる。
「これは我々の中でも禁止されている方法デス。戦争でもこんなことしまセン」
「邪魔する奴がおらんから、この際行けるところまでやったれってところか」
ヒロシの言葉にアポロとベルタが頷いた。
彼ら基準でもどうやらとんでもない事をしているらしい。
しかもこちらは、宇宙船もないので止めようもない。
万が一交渉が決裂しても、人類が壊滅した後に、「マイドリウム」を拾って帰ればいいのである。
「と、いわけで対策だが」
安野はそう言うと、次の映像を示した。
それは対抗策を模索したシミュレーション映像だった。
「まずは、核ミサイルによる隕石の破壊が上げられるが、残念ながら効率的な箇所に命中するよう軌道を計算する時間が無い。当然、アンゴルモア星人の妨害も考えられるので条件はさらに悪化する。また、破壊したところでバラバラになった小惑星が地球に降り注ぐだけなので、正直あまり意味が無い。大気圏で燃えつきる大きさにすべて砕くのは理論上不可能だ」
そして、バラバラになった隕石が地球に落下する映像が映る。
核による破壊は結構現実的な方法と思ったが、そうでもないようである。
複数の隕石が地球中に降り注ぐイメージに、ミオはぞっとする思いがした。
「と、いうわけで、今回のミッションでは「オーダンナー」を宇宙に送り、敵の妨害を排除しつつ、小惑星に接触し、これを加速させる」
「加速させんの?押し返すんとちごて?」
ミオの疑問に安野は頷いた。
「そうだ、アニメでは、小惑星は押し返すものとされているが、あれをやるにはそれこそ膨大なエネルギーが必要だ。それをするなら計算上は加速させた方が効率がいい、こうすることで、小惑星は地球の重力を振り切って、地球に落ちることのないまま宇宙の彼方へ飛んで行くこととなる。敵異星人も、地球に落とすために最後は小惑星を減速させるはずなのでそれを妨害することも有効だろう」
「……なんかよー分からんけど、イメージできてきた」
とりあえずイメージできれば、オーダンナーの操縦は宇宙でもなんとかなる。
なんとかCG画像を見ながらイメージを叩き込むミオ。
操縦は妄想がイメージが全て。
ミオはこの数回の戦いでそう学んでいた。
「よろしい。では、どうやって「オーダンナー」を小惑星まで送るかだが……」
安野はそう言うと次の画像を映し出す。
どうやら、ミオ達がここに来るまでに、いろいろ検討していたようである。
そこには、オーダンナーのデータがしっかりと列挙されていた。
「まずもって、「オーダンナー」の霊子力に注目したい。出力法則は未解明ながら、ほぼ無限のパワーで比推力も気にしなくていいこの夢の動力、これを使わない手はない。そこで我々はこのようなプランを用意した」
そこで映し出されたのは、円盤の先頭にオーダンナーの頭部だけくっついたようなデザインだった。
「カメみたい」
とチカが言うと、ヒロシが
「UFOロボやな」
と、良く分からないカテゴライズを持ちだす、
どうも、円盤状の強化パーツにオーダンナーを入れるプランのようだ。
「核熱ロケットの動力をそっくり応用したプランだ、霊子力エンジンで水素を反応させ推進剤とする。うまくいけば、難なく宇宙へ飛んで行けるだろう」
「うまくいけば?」
なんだか不安そうな言葉が引っかかるミオ。それに安野は大きく頷いた。
「この方式は動力の調整と各種パーツの耐久力の調整に時間がかかるのだ。しかし、時間は無いし霊子力エンジンは出力の上下の調整が難しい。ほぼ一発勝負でやることになり、万が一暴発などという事態になったら、最悪のケースで種子島の半分が壊滅状態になるほどの爆発が起きることになる」
「……さすがに危険すぎるやろ」
「もっと安全な方法ないんですか?」
そんな危険な事やってられるかと言いたげなミオに、流石に代案が無いか聞くチカ。
そんな二人の様子に、安野は頷いて、別の画像を表示した。
「と、いうわけで、構造がシンプルで事故を起こしても、そこまで酷い事にならないプランとして、エネルギーを磁力に変換、リニアレールで加速して宇宙に打ち出すリニアプランを考えた。出力次第に変わりないが、暴発の危険性はない」
「ええやん」
「ただ、宇宙に打ち上げる速度、秒速7・9キロにいきなり到達した場合。空気との抵抗で「オーダンナー」はバラバラに砕け散る。仮に機体が無事でも、強烈なGでパイロットは押しつぶされ、原型をとどめない状態になるだろう」
「いや、アカンやろ」
「どうにかならないんですか?」
冗談じゃない、というミオに、代案が無いかと尋ねるチカ。
そんな二人の様子に、安野は頷いて、別の画像を表示した。
「このため、リニアレールを延伸し、滑走距離を長くするプランを立ててみた、5G程度の加速度で秒速7.9キロまで加速する。これならば機体やパイロットに多少の負担で宇宙に打ち出せる」
「ええやん」
「だが、この場合、計算上必要な距離がおおよそ640キロ。これだけのリニアレールを建築するのは容易な事ではない。加えて音速を突破した辺りで周辺に衝撃波が生じるため、建築場所も限られる。地下に建設せざるを得ないが、数十年単位のプロジェクトになるだろう」
「そらアカンわ」
「もっと別のプランは?」
どう考えてもこんなもの机上のプランだ。
呆れるミオに代案を訪ねるチカ。
それに、安野は頷くと、重々しいため息を吐いた。
「……そう、我々には時間が無い。そう言った経緯があり、我々は最終手段を使う事にした」
「……最終手段?」
どうやら、今までの話はただの前置きだったらしい。
全員が見守る中、安野は覚悟を決めた顔で、次の画像を提示した。
それは、多段ロケットの図解映像だった。
「今ここにある、我がJAXAのH3ロケットで、普通に打ち上げる。ペイロード、安全性、確実性、すべてを考慮すると、これが最も確実、最適なプランだ。地球の危機に際して、無尽蔵の動力と予算を湯水のように使えるいい機会なのだが……この際、背に腹は代えられない」
「どつくぞ、おっさん」
実に悔しそうに語る安野に流石に声を上げるミオ。
前置きは長かったが、結局、オーダンナーは今ある化学ロケットで打ち上げられるという事になった。
地球滅亡まであと十日。
「スーパーロボット作ろう会」とJAXAのスタッフ全員が、不眠不休での準備を始めた。




