激闘は憎しみ深く
戦闘メカ「イン・フレ―」で天守閣前で砲撃体制を取っていたデマは困惑していた。
向こうの飛行戦闘メカから防御するため、通信妨害を依頼して以降、通信に返答が無いのだ。
それは通信妨害が終わったあとも同じだった。
「同志リャク。戦況はどうなっているのでありますか?」
何度呼び掛けても返答がない。
デマは、疲れ果てた顔で大きく息を吐いた。
「腹減った……眠い。母星で無くてもいいから船に帰りたい……」
地球に降りてからというものロクな事はない。
食べ物が無いわ、腹を壊すわ、二交代制の警戒態勢で体調も精神もボロボロである。
今日もそうだった。
一自転周期内に攻撃を行うと言うので、休んでいたらいきなりの戦闘開始である。
おかげで、お互いに配置に着くまでの間、ほとんどの無人ドローンを防壁に使わざるをえず、結果的に事前に立てていた作戦が滅茶苦茶になってしまった。
しかし、この苦労もあと少しだ。
デマは、必死に気力を振り絞った。
戦闘の音も聞こえない。
電波妨害が解除され、砲撃要請も無いという事は、決着が付いたのだろうか?
デマは、状況が気になり、「イン・フレ―」を南側の入り口に向けた。
そして門に続く曲がり角を覗き込んだその瞬間、同じようにこちらを覗き込もうとしていたメカにばったり出くわす。
全長に六メートルほどの人型のロボット。
それは、間違いなく「オーダンナー」の姿だった。
「うそ!こんなところに?」
「イン・フレ―」と鉢合わせて、驚いたのはミオの方も同じだった。
通信が回復したものの、墜落した「デッチ」の援護は不能との事。
最悪、着陸している宇宙船を叩けば、相手は出てくるだろうと警戒しつつ、内堀を渡って門をくぐったらこの鉢合わせである。
待ち構えているという想定からは、明らかに違う遭遇の仕方だった。
よほど慌てたのか、一回こちらにぶつかってから全速力で後退するクモ型メカ「イン・フレ―」。
ミオは一瞬呆気にとられたが、向こうの砲塔らしきものが動いたので、慌てて石垣に身を隠した。
レーザー光線が乱射され、石垣を焼く。それは狙いを全く付けない。乱射のような打ち方だった。
「危なっ!なにすんねん!」
どうにか避けたミオは、乱射されるビーム砲に木が吹き飛ばされるのを見て声を上げた。
その様子に高橋から冷静な分析が入る。
『恐らく動揺しているか、練度が低いのだろう。気を付けろ、それはそれで何をするかわからん。しかも、周囲は文化財だらけだ』
「……簡単に言うてくれるなぁ」
相変わらず制約の多い話にうんざりするミオ。
だが、通信が回復してからというもの、オーダンナーのパワーは絶好調だ。
自分も調子に乗っているのが分かる。
それなら!
ミオは、すぐに行動を起こした。
石垣の陰に隠れながら、半分解け落ちた「オーバーン」を取り外した。
そして、盾を石垣の向こうに放り投げ、様子を伺う。
やはり練度が低いのか反応は予想通りだった。
強力な光線が煌めき、盾を打ち抜く。
ミオはその隙を逃さなかった。
「目の良さが命取りや!」
すかさずダッシュで石垣の影から飛び出すと、距離を詰めるミオ。
動揺しているのか判断の遅れた「イン・フレー」は一瞬で格闘戦の距離に迫った。
「必殺!烈風!正拳突きぃ!」
突進のエネルギをそのままに「オーダンナー」のズームパンチが繰り出される。
「イン・フレ―」は、回避するよりパイロットを射出することを選んだようだった。
パイロットを射出した「イン・フレー」は「オーダンナー」の拳に粉砕され、四散して砕け散った。
「よっしゃ!成敗!」
「オーダンナー」は天守閣を背に、勝利のポーズを決めた。
「いよっしゃぁ!ようやったミオ!」
クモ型メカ「イン・フレー」の破壊と共に、指令室は歓喜に包まれた。
ベルタとアポロは、ハイタッチをし、ヒロシは、もはや贔屓の球団が勝った時のような喜びようである。
途中から見守るしかなかったチカもほっとした顔で微笑んだ。
長田さんから転送されてきた生放送のコメント欄は、今やお祭り騒ぎである。
「地球の勝利ですね。」
そういった指令室の中で高橋はこれからの事を考えているようだった。
内心はどうあれ、彼は静かに頷くと、落ち着いた口調で指示を送る。
「これから自衛隊がそちらに向かう。脱出したパイロットがその辺に居るはずだ。しばらく「オーダンナー」の中で待機していろ」
『わかった』
ミオは、それに同意すると、改めて周囲を警戒する。
脱出したパイロットはどこへ行ったのか?
その逃亡先はすぐに判明した。
ミオが、ようやく捨てられたコックピットの椅子らしきものを発見したその瞬間。
すぐ横にいた宇宙船がゆっくりと上昇し始めたのである。
高橋はそれを見て、即座にミオに声をかけた。
「待て!攻撃するな!」
『え?』
案の定、ミオは攻撃態勢に入っていたようである。
「オーダンナ」のガンカメラから、浮上する宇宙船とファイティングポーズを取る拳が見えていた。
高橋は、改めてミオに声をかけた。
「負けたら帰ってもらう、そう言う取り決めだ。警戒しつつ、こちらから仕掛けるな、暴発すると何をするかわからん」
確かにそう言う約束だが、果たしてこの異星人はそれに従うのだろうか?
チカは、そんな不信が拭い去れないでいた。
今までがそうだったし、そもそも彼らには後が無い。
ここで負けを認めれば自滅するほかはないのである。
だが、そんなチカの心配をよそに、アンゴルモア星人の船は、南側に飛んで行く。
そして、もう一機のパイロットらしき人物を回収すると、勢いよく炎を噴射し、空の彼方へ飛び去って行った。
それを見送りながら、チカは拍子抜けした顔で首を傾げた。
「今回はあっさり逃げていきましたね。なにかあったんでしょうか?」
高橋はそれに、険しい顔のままでうつむいた。
「わからん。だが、敵にもいろいろな考え方の者がいるのだろう……あるいは、相当疲労していたか……」
「このまま、心折れて終わってくれればいいんですが……」
今後を思い、心配するチカ。
だが、高橋は部屋の向こうで祝勝会の準備を始めたヒロシのように楽観はしていなかった。
「無理だろうな。ああいう奴らは、やると言ったらとことんやる」
高橋は政府以上に悲観的な予測をしていた。
「……何という事だ。負けてしまうとは情けない」
ガイ・アーツは、帰ってきた二人の部下からの帰還を憮然とした顔で迎えた。
だが、彼らからは返事が無い。
よく見ると、二人の顔は、完全に疲れ切っていた。
「同志ガイ、お叱りは後ほど受けます。まずは、休息と食事を……」
そう言うと、デマ・ゴークはその場に崩れ落ちる。
重症のリャク・ダーツは満身創痍で、立つのがやっとという状況だった。
「消耗しすぎてしまった。我々に残されたのは戦力はこの母船のみ……。」
その言葉に、率先して降下したリャクが悔し涙を流す。
彼は、うつむいたまま膝を着き、やはりそのまま崩れ落ちた。
彼らはしばらく医療タンクに入れねばなるまい。
ガイは険しい顔で振り向き、足元の地球に目を落とした。
「こうなったら我々も手段を選んではいられない。どのような手を使ってでも、我々は母星に帰るのだ」
ガイはそう呟くと、二人を医療タンクに運び込む作業を始めた。
翌朝、アンゴルモア星人から改めて宣言が出された。
それは、地球人類の抹殺か、降伏かを迫る脅迫。
彼らはいまだ心折れてはいないようだった。
君たちに最新情報を公開しよう!
ついに最終手段に出るアンゴルモア星人。
迫る地球の危機に、「オーダンナー」はさらなる強化、そしてミオと共に宇宙へと駆けていく
次回。商工戦士オーダンナ
最終章「オーダンナよ永遠に」
にファイナルフュージョン承認だ!
これが勝利の鍵だ!→→→「ペンライト」




