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商工戦士オーダンナー  作者: 宮城 英詞
大阪城の攻防

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30/42

大阪城の攻防

 そしてその日の午後。


 刀と盾を持ったオーダンナーは大阪城公園の南西、大阪府警の前に現れた。


 周囲には、規制がかかっているはずなのに、カメラを抱えた報道陣や野次馬が集まってきている。


「……やりにくいなぁ。巻き添え食っても知らんで」


 仮設ハンガーの中でコックピットに乗り込んで正解だった。


 ミオがコックピット内でそうぼやくと、今度は頼んでもいないヒロシの激励の声が通信で届く。


『安心せい! 放送はネットを通じて全世界生放送中やで!』


「……プレッシャーかけてることに気づけよ」


 はしゃぐ父に、ミオは小さくぼやいた。


 続いて、高橋から段取りの確認が入る。


『いいか、公園内に入ったら戦闘開始だ。ベルタとアポロの『デッチ甲』『デッチ乙』が最初に索敵を行いながら、進み、「テ・ダイ」が露払いをする。「オーダンナー」はそれに続いて南方向のルートを目指せ』


 こういう時は現実的なチームプレイを指揮してもらえる方が安心する。


「よっしゃ! いくで!」


 ミオは高橋の言葉に頷くと、前進を開始した。


 先行した「デッチ」たちのデータがリンクしてミオのディスプレイにマーカーが表示される。


 どうやらそれぞれが、小型ドローンであるらしい。


 こちらの動きに気づいて群がってきたそれは、マーカー表示によってかなりの数がいることが分かった。


『よし!こっちも見つけた!ドローンは私に任せて!』


 そして、チカからの通信が入る。


 ミオが空を見上げると、上空から侵入してきた「テ・ダイ」の機関砲が火を噴いた。


 たちまち巻き上がる土煙と、吹き飛ぶドローン、そして砕け散る樹木。


「デッチ」とリンクした照準は恐ろしく正確で、ミオの視界から敵を示すマーカーが次々と消えていく。


 そして、盾を前にしながら公園内に侵入していく「オーダンナー」。


 行く手に群がるドローンの群れに、今度は「テ・ダイ」からミサイルが発射された。


 吹っ飛ぶドローン群と公園の樹木。


 さながら戦場のような光景に、ミオはさすがに呆気に取られていた。


「これ、ウチいらんのと違う?」


 そうぼやきながら、ミオはさらに前進した。


『この戦いは、お前がキングだ。易々と前に出てこられては困る』


 高橋はそういってさらなる攻撃を指示する。


 だが、そうもいかないらしい。


『大変や!』


 突然、通信越しに悲鳴にも似た叫び声が上がる。


 それは作戦室で様々なデータをモニターしていたヒロシの声だった。


「なに?こっちに異常はないで?」


 なにかの罠か?


 慌てて周囲を見回すミオ。


 ヒロシは、端的に事情を報告した。


『生中継のコメ欄が盛り下がっとる! 「オーダンナー」を出せと!』


「知らんわ!」


 高橋とミオはほぼ同時に叫んでいた。


『いや、ここは弾丸も、タダやないし。特訓の成果を試しにやるのもええやろ? みんな期待しとるし、ここは一発、頼むわ』


「……あのな、ウチは大道芸人ちゃうねん」


 うんざりしながらコックピットで肩を落とすミオ。


 だがそれは突如向こうの爆炎から飛来してきた飛行ドローンによって中断された。


 チカが撃ち漏らしたと思われるそれらは、こちらに向かってレーザー光線を放ってくる。


「危ない!」


 慌ててシールドでガードする「オーダンナー」。


 鏡面処理がされた「オーバーン」はレーザーをはじき返したが、掠めたレーザーが周囲の草花を燃やす。


 ミオはその攻撃を受けながら、半身を捻り、即座に反撃に転じた。


「真空斬り!」


 掛け声とともにバーン刀を横に薙ぐ「オーダンナー」。


 イメージがエネルギーに変わり、衝撃波を起こす。


 たちまちドローン群は、切り裂かれぶつかり、落ちていく。


 そして、ミオはさらにオーダンナーの胸を開き大声で叫んだ。


「霊子力ビーム!」


 掛け声とともに、なぜか「オーダンナー」の胸部から怪光線が打ち出された。


 光は周辺を一瞬で薙いだかと思うと、周辺に激しい爆発と土煙を巻き上げる。


 これぞ、アニメ漬けで過ごした日々と、昨日行った淀川での特訓の成果。


 不安定ながら、怪光線くらいはなんとか放てるようになっていた。


 しかも、練習の時よりいい感じに威力が高い。


 もちろん、ヒロシは大はしゃぎであった。


『やったぞミオ! コメ欄大盛り上がりや! 投げ銭も来てるで!』


 もうこいつは放って置こう。


 ミオはもう父の声援にいちいち返事を送る気が無くなっていた。


 そんなミオに、高橋から通信が入る。


『すまん、公園事務局から、その辺にある桜の木を何とか保護してくれないかと……』


「だから文句は敵に言えって!」


 頼むから有益な情報をよこせ。


 ミオは、歯ぎしりしながら。前進した。


 そして南側の道が、見えてくる。


 そこは並木道の坂。


 緩やかなスロープ状の道が外堀から天守閣に続く道を形成している。


 距離にして二、三百メートルと言った所。


 待ち伏せには格好の地形がそこにはあった。


 そして、それは突然やってきた。


「オーダンナー」の背後で爆発が起こり。強烈な衝撃がミオを襲う。


 後方から突然、突き倒された格好になったミオは、コックピット内でエアバックに勢いよく顔をうずめた。


 前方に転倒したらしく、視界が地面になる。


「なんなん?」


 狼狽えるミオ。


 それに高橋は、即座に状況を分析していた。


『おそらく天守近くからの砲撃だ!ドローンか何かでこちら観測しているぞ。動け!』


 ミオはその声に、慌てて「オーダンナー」を起き上がらせた。


 再び近くで降り注ぐ砲弾。


 つい先ほどまでいた場所に正確に落下したらしい。砲弾は、またミオとオーダンナーを揺さぶった。


「どうにかならんの?」


 盾を頭に掲げたまらず後退するミオ。


 それに答えたのはチカだった。


『私が空から何とかしてみる。待ってて!』


「お願い!」


 流石に見えない場所からの砲撃はどうにもならない。


 そちらは「テ・ダイ」のチカに何とかしてもらうしかないだろう。


 ミオは走りながら、混乱して判らなくなった方角を確認した。


 そして、振り向いた瞬間。


 背後から飛んで来た強烈な光がバーン刀に命中し、一瞬で解け落ちてしまった。


 振り向かねば、危うく胴体をやられていたかもしれない威力。


 光が来た方向を向くとそこには……


「え?」


 いない?


 視界には敵を指すマーカーのみがある。


「なにこれ?バグ?」


 理解不能の状況に頭が真っ白になるミオ。


 そして


『動け!』


 と叫ぶ、高橋の声に反射的に反応した瞬間。光の帯が再びミオのすぐ横を掠めた。


「え?一体んなんなんあれ? 全然見えへんねんけど!」


 逃げながら悲鳴を上げるミオ。


 それに高橋とアポロから通信が入る。


『おそらく光学迷彩だ。肉眼では恐ろしく見えにくカモフラージュしている』


『「デッチ」のセンサーには見えてマス。サーモセンサーに切り替えてくだサイ』


「コウガク……何やそれ? 聞いてないで!?」


 叫ぶミオの横でまた砲弾が炸裂した。


 どうやら、四の五の言っている暇はないらしい。


 ミオは舌打ちしながら、「オーダンナー」のセンサー表示を切り替えた。


 熱感知センサーで見渡す周囲は爆風と残骸で熱源だらけで真っ赤に染まっている。動きながらミオは必死に、動く熱源を探した。


 そして、振り返った瞬間、今度は通信に強烈なノイズが走った。


「今度は何?」


 唖然とするミオの目の前で「デッチ」が迷走し、落下してくるのが見えた。


 いくつかのセンサーは使用不能に陥ったらしい。


「……通信妨害?」


 それはミオにとって、手足をもがれたに等しかった。



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