奇跡の価値は
「終わったな、完勝だ」
防衛大臣、大泉はリムジンの中、スマホの映像で甲虫メカが両断される様子を確認し、静かにほくそ笑んだ。
映像はリアルタイムで放送されていた。
これで、異星人の不義理は全世界に公開された事になる。
交渉決裂は誰の目にも明らかだろう。
「これから、この日本も容赦ない攻撃にさらされるかもしれない。だが、これは避けられない道だ。失点したのは宇宙人の側……これで内閣はしばし延命できるだろう、我々の勝負はこれからだ」
大泉はそう呟くと、もう一度、先ほどの動画を確認した。
現状ネットは騒然である。
噂通り、オーダンナは現れ、宇宙人に立ち向かった。
女子高生の乗るロボットが、地球の平和を守った。
全ては、思い描いたシナリオ通り。
大泉は、SNSの騒ぎを確認しながら、小さく頷いた。
だが、計算外のこともある。
あの「オーダンナー」の力。
あれは一体……?
「「作ろう会」のシナリオに無いパワーの覚醒と解放。これは国民が黙ってはいませんな。……さて、これは誰の書いたシナリオか……」
大泉は今後の展開に想いを巡らせると、どうしても笑みがこぼれるのだった。
チカたちが指揮車で駆けつけた時には、ミオはどうにか「オーダンナー」のコックピットから出られたところだった。
駆けつけた自衛隊の皆さんが周囲を取り囲む中、チカは元気に走って来るミオに一先ず胸を撫でおろす。
「……大丈夫?ミオちゃん?体なんともない?」
あんな無茶苦茶な事をして果たしてパイロットは無事なものなのだろうか?
だが、ミオはチカが恐る恐る聞く様子にキョトンとしていた。
「うん?大丈夫やで?まさか「オーダンナー」にあんな機能があるなんて思ってもなかったからだいぶびっくりしてるけど」
「……うん、私も」
どうやら、精神的に疲労するとか、体が溶けるそういうのは無いようである。
ミオは少しおどおどしながら様子を伺うチカを尻目に、感心したように駐車場に寝かされている「オーダンナー」を見上げていた。
「ホンマ凄いなぁ、ロボットと一体になったって言うの?ウチが思うとおりに動いて、なんか気持ちよかったわ」
「ああ……そう言う感じなんだ」
多分精神がなんらか作用したのだろう。
一体化したというのは錯覚ではないのかもしれない。
この状況を一体どのように説明したらいいのだろう?
戸惑うチカの背後から、上機嫌のヒロシがベルタ、アポロと共に歩み寄って来た。
「おかげで、生配信は大盛況や!ちょっと作戦と違ったけど、万々歳やな」
ミオの頭をくしゃくしゃと撫でながら、そう言うヒロシ。
そういえば、あれ配信してたんだ。
チカはその事実に、また頭を抱えた。
「いや、もうあれは、物議をかもすところを通り越して合成や演出を疑われる可能性があるのでは……」
何しろ妄想を具現化したせいで、あらゆることが出来過ぎていて、かつ不可解。
こんなもの、いくら宇宙人がやって来る時代とはいえ現実として受け止められるとは到底思えない。
おそらく今ネット上では、いまごろ陰謀論や妄想を混ぜ込んだ果てしない議論の応酬が繰り返されているに違いない。
この手の話で自分の顔を晒すと本当にヤバいのかもしれないと、チカも考えはじめていた。
そして、そんな一同に高橋が相変わらずの仏頂面で現れた。
「どうやら、異星人の乗組員は二人とも脱出したようだ。厄介な事に大阪市内での大捜索になりそうだが……まぁ結果は妥協点という所だろう。感謝する。」
彼は、つい今しがたまで、どこかとやり取りをしていた携帯をしまうと、「オーダンナー」の戦闘結果をこう評した。
あのような奇跡を見た後でも、素直に褒めない高橋に苦笑する一同。
この生真面目な人が、結果が異次元なものをこの人はどう評価するのだろうと、チカは思ったが、それは、周囲の人間の行動で露わになった。
気が付くと、周りは小銃を持った自衛官に取り囲まれている。
事の異常にミオとチカが気が付いた瞬間、高橋は静かにこう告げた。
「だが、我らを見くびってもらっては困るな?君たちの素性はあらかた調べがついている。あのようなものを見せられて、我々が怪しまないとでも思ったか?」
そして周囲の銃口が一斉に五人に向けられる。
やはり、力を示した代償はゼロではなかったようだった。
疑いの目がチームオーダンナー に向けられた。
その背後で明かされる異星人の実態。
そして、オーダンナーが抱える秘密。
渦巻く思惑の中、戦場は大坂城へ移る。
次回商工戦士オーダンナー
第三章『大阪城の攻防』
7月1日公開予定!
Not even justice, I want to get truth !
真実は見えるか!




