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商工戦士オーダンナ―  作者: 宮城 英詞
オーダンナー譲渡指令!

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放てミオ!必殺Vの字斬り

 

「エネルギー出力、計測振り切れてマス!計測デキマセン!」


 急激に上昇するエネルギー出力に驚くベルタの声にチカは息を飲んだ。


 カメラ映像では、確かに「オーダンナー」が光り輝いているように見える。


 そしてカメラの向こうで「オーダンナー」は飛び跳ねるように起き上がった。


 まるで、ロボットではない、俊敏な人間に近い動き。


 さらにそのまま「オーダンナー」は飛んで来たクローアームを素早い速度で躱した。


 まるで、武術家のような無駄のないモーションで、迫りくるクローを躱すその姿に、チカは一瞬、合成画像を疑いたくなった。


「すごい、オーダンナーってこんな事できるんですね……」


 唖然とするチカ、それにヒロシは感心して頷いていた。


「いやぁ、口から出まかせでも言うてみるもんやなぁ」


「え?」


 まるで他人事のようなヒロシの言葉に、チカは言葉を失った。


「一体、どういうことだ?」


 同じく信じられないと言った面持ちの高橋。


 それに、ヒロシは頷いて答える。


「いやな、さっきから、「オーダンナー」はミオの精神に反応しとるんやないかと思ったんや。バッテリーが切れたと思えば止まり、そこを気にせんかったら動く……」


「じゃあ、「オーマックス」モードと言うのは……」


「うん、適当にそれっぽいのでっち上げただけやで、再起動くらいするかと思ったけど、ホンマにハイパーモードになっとるのはおどろきやな」


「……じゃぁあれは、パイロットの気のせいで動いているのか!」


「……噓でしょ?」


 流石に、そんな馬鹿な事あるのかとチカも高橋も思ったが、実際そうなっているのだから仕方ない。


 衝撃の事実に、思考停止になりかけるチカが見るモニターの向こうで、「オーダンナー」は素早い速度で、もう一つのクローアームを回避していた。


『このぉ!』


 そしてそのまま踏み込み、アームとメカとをつなぐワイヤーを赤熱するバーン刀で両断する「オーダンナー」


 どんな材質でできたワイヤーかは分からないが、それはハサミで糸を切るようにあっさりと切れた。


「……攻撃力も上がってる?」


 それは、自衛隊のミサイルをはねのけたメカとは到底思えないような脆さだった。


 訳が分からない。


 でたらめな状況に困惑して、もう一度振り返るチカ。


 背後で、ヒロシはその光景に興奮して声を上げている。


「ちょっと! 一体なんでこんなこと起きるてるか説明してくださいよ!」


 悲鳴に近いチカの言葉にはっとなると、ヒロシは今度は開発者とは思えない表情で考え込み始めた。


「よー分からんけど、心当たりっちゅうなら多分『霊子力エンジン』ちゃうかなぁ?」


 それは、チカが、いや、ヒロシさえも組み込んでいたことを忘れていた部品だった。


 チカはその部品の事を数秒かけて思い出し、やはり困惑した表情で、オーダンナーが、走り回る状況を見つめる。


「そもそも一体何なんですか?そのエンジン」


 チカの当たり前の疑問に、ヒロシは顎を撫でながら必死に思い出しているようだった。


「確か、アポロとベルタが集めてきた部品の中にあった奴でな。良くわからん法則で不安定に発電するから、空いてたスペースに試しに組み込んでみたんや」


「なんでそんな不安定なものを?」


「いや、どっか謎めいてたほうがええかなと」


「なんなんですか?そのテキトーな理由はっ!」


 呆れていいか感心していいかわからない話に、頭を抱えるチカ。


 だが実際うまく動いている状況にヒロシは満足げである。


「まぁ結果オーライでええやないか、謎の動力積んどるのは、スーパーロボットのお約束やろ」


「ちょっとぐらい怖いとか思ってくださいよ!」


 得体の知れないパワーを発揮するロボットに無邪気に喜ぶ開発者。


 一体これは制御可能なものなのかすら分からないというのに能天気が過ぎるとチカは思うのだが、ヒロシは構わず立ち上がり方針を示す。


「今は何を言うてもここで引き下がるわけにはいかん。おぼろげながら法則が分かったんやから、ここはとことん調子に乗るべきや!」


「……いや、調子に乗るって、どうするんですか?」


 作戦指示とは思えないあまりに抽象的な指示に、戸惑うチカ。


 それにヒロシは、満面の笑みで答える。


「ミオにしばらく勘違いしてもらう」


 チカはヒロシの言葉に、気を失いそうになった。


 そうこうしているうちに、ミオはもう一つのクローアームのワイヤーを両断していた。


 攻撃する手段がなくなったのか。今度は、ゆっくりと「オーダンナー」の頭上の位置に飛んでくる。


 それを見上げるしかないミオは、警戒しつつ指示を仰いだ。


『空飛んでたら、こっちからは攻撃できへん。どうしたらええの?』


 それにどう答えようかチカが考えたその時、甲虫メカに動きがあった。


 メカの底から謎の光線が発射され、地上の物体が、甲虫メカに吸い寄せられている。


 メカ自体が、掃除機のような状態になった甲虫メカが、「オーダンナー」の頭上に迫って来たのである。


 近くの車が、吸い上げられる様子に、高橋が状況を理解したようだった。


「いかん、磁力か何かの牽引ビームだ!直下に入るな!」


『なんやねん?それ!』


 どうやら、何としても、「オーダンナー」を回収して行くつもりらしい


 ミオはそれに状況を察し、慌ててメカから遠ざかる。


 直線スピードでは向こうの方が早いので、フェイントをかけて曲がるを繰り返し、「オーダンナー」は駐車場内でぐるぐる走り回る事になった。


『くそ!ウチはUFOキャッチャーのぬいぐるみちゃうねん!』


 走りながら、逃げ回るしかない状況に思わず叫ぶミオ。


 その状況に、ヒロシは、静かにミオに語り掛けた。


「ミオ、『オーバーンクラッシャー』を使うんや」


 真顔で言うヒロシに思わず振り返る一同。


 だが、ヒロシは再び黙るようゼスチャーで指示すると、


『そんなんできるん?』


 と尋ねる、ミオに話を続ける。


「そう!「オー・バーン」に回転を加え、ブーメランのように撃ち出す『オーバーンクラッシャー』!今なら、助走をつけた「オーダンナー」の射出力で威力は五倍!敵の吸引力も加わり効果は10倍だ!……イメージしろ!叫べミオ!」


 どんな計算したら数十倍になるかさっぱりわからないのだが、ここで水を差すわけにもいかずチカは、頭を抱えながらも黙るしかなかった。


 そして全くアドリブで作った必殺技をイメージしたミオが答える。


「よぉし!食らえ!オー・バーンクラッシャーァァァァ!」


 加速をかけてメカに突進した「オーバーン」が円盤投げの姿勢で腰を回転させ腕を振り上げる、すると固定されていたシールド「オー・バーン」が回転し、光り輝き始めた。


「嘘?」


 その光景に目を疑うチカ。


 そして、固定されていたはずの「オー・バーン」は円盤投げモーションで「オーダンナー」の腕から射出された。


 それは、ヒロシが言った通り、吸引ビームに誘導され、さらに加速がかかった状態で甲虫メカの底に突き刺さる。


 数秒の時間を置いて、甲虫メカの底面にスパークが走り、火花が上がった。


「効いてる?」


「ミサイル効かなかったのに……」


 妄想が現実になっている。


 その光景に、チカも高橋も呻くような声を上げていた。


 どうやら、調子に乗らせておくというのは、正しい選択のようである。


 そして、そんな一同を他所に、ふらふらと高度を下げていく甲虫メカの動きが鈍くなったことをヒロシは見逃さず、さらなる指示を出していた。


「今や!必殺「バーン刀Vの字斬り」や!」


『よっしゃぁ!』


 幼い頃からの英才教育の賜物だろうか。


 父の言葉に、娘が答える。


 その瞬間、どうしようもなく調子に乗った二人の息がぴったり合った。


「オーダンナー」が右手のバーン刀をかざし、エネルギーを集中させる。


 ただの電熱剣だったはずの剣は、赤熱とは違う光を放ち始めていた。


「必殺!バーン刀!Vの字斬り!」


 ミオの言葉と共に、バーン刀は光り輝く刃を甲虫メカに向かって放ち、その光の刃は甲虫メカをVの字に切り裂く。


 ミサイルを跳ねのけたはずのメカは、次の瞬間、豆腐のように切り裂かれた。


『成敗!』


 ミオがそう言い放った瞬間、甲虫メカは大爆発を起こした。


 多分、燃料か何かに引火したのだろうが、そのタイミングは、もうなんだかどこかで見たそれであった。


「……勘違いと妄想でここまでできたって事?」


 ミオは、勝利したという事より、もう訳が分からないという困惑で言葉を失っていた。


「ワシらの夢と愛の成果や……」


 涙を流して頷くヒロシに、チカは本気で何を言って良いのか判らなかった。






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― 新着の感想 ―
初めまして。 HARIMAと申します。 SF空想科学の週間順位で、私のお隣さんでおられたので。 試しに読ませて頂いたら………楽しい御作品! 主人公が17歳の女子高生という点が同じで、そちらさんは操縦型…
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