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商工戦士オーダンナ―  作者: 宮城 英詞
オーダンナー譲渡指令!

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オーダンナー脱出せよ

「なんじゃあれは?」


 宇宙人の甲虫メカからそれが飛び出した瞬間、それを見たヒロシがつぶやいていた。


 それは四本爪の巨大な手のようなものだった。


 そして、高橋が「逃げろ」と言ったその瞬間、それは「オーダンナー」に向かって射出される。


 それはワイヤーのようなものにつながれた大きな爪だった。


「有線クローアーム!?」


 ヒロシがそう叫び、チカがミオに呼びかけようとしたその瞬間、「オーダンナー」はそのクローアームに反射的に反応していた。


「オー・バーン」の設置された腕が上がり、飛んで来たアームを振り払う。


 それは、さながら人間が反射したかのような素早さだった。


「……これは?」


『今、勝手に動いた?』


 待機モードから切り替える暇すらなかったのにこの反応。


 ミオもそれには驚いたようである。


 隣のベルタも、エネルギーゲージを見つめ驚いた顔をしていた。


 だが、それは出来過ぎなくらいこちらには都合の良い状況だった。


「電力、フルパワーで起動中デス!ダイジョウブ!」


「よっしゃ!アポロ。固定解除や!」


「ラジャー!固定解除!」


 ヒロシの指示で、アポロがスイッチを入れると、「オーダンナー」を固定していた台が分解し、解放される。


 なんだか段取りと違うが戸惑っている暇はない。


 チカは、ミオに向かって叫んでいた。


「ミオちゃん!逃げて」


 そして、もう一本のクローアームが、「オーダンナー」に向かって飛んでくる


『なんの!』


 ミオはそれを後退して「オー・バーン」で受け止めると、そのままダッシュローラで旋回し、逃走へ移った。


 足元の様々なものを吹き飛ばしながら、道路へ。


 あとはミサイルが飛んできても巻き添えを食わないように、遠く離れればいい。


 まさかこちらが急に動き出すとは思っていなかったようだ。


 道路に出てさらに加速を始めた所でミオはコックピットの中で、勝ち誇っていた


『悪いけど、タダで持っていかれるほどこっちは安ないねん!悔しかったら追ってこい!』


 だが、そう言って後ろの映像を確認したミオは、その笑いを引きつらせることになった。


 その映像の中で、メカがゆっくりと上昇していったのである。


『……まさか!』



 慌てるミオの通信に、高橋は冷静に応えていた。


「当たり前だ、向こうは大気圏外に「オーダンナー」を持っていくつもりで来ている。飛行くらいするだろう」


『そんなん聞いてへんで!?』


 絶叫するミオ、逃げる「オーダンナー」。


 甲虫メカは、徐々にスピードを上げると、再びアームを発射した。


「いかん!」


 どう考えても、逃げきれない。


 そして、アームは「オーダンナー」のバックパックに食い込む。


 急に後ろに引っ張られ、ミオは一度、前のエアバッグに顔をうずめることになった。


『捕まるか!』


 全力で加速する「オーダンナー」、引っ張るアーム。


 綱引き状態で睨み合う状況に、高橋は舌打ちしてミオに叫んでいた。


「もっと離れろ!これでは自衛隊も攻撃できん!」


 それは、深刻な警告だった。


 現状これでは、自衛隊からの攻撃ができない。


 かといって、このままではロボットごとさらわれる恐れがあるのだ。


 当然、ミオもそんな事は判っているようだった。


『そんなこと言ったって!』


 歯を食いしばり、ペダルを踏みこむ。


 パイロットが力んでも仕方がないが、ミオとしてはそうせざるを得ないのだろう。


 その様子にヒロシは慌ててベルタのパソコンをのぞき込んでいた。


「電池持つんか?」


 それに、ベルタは首を小刻みに振る。


「ワカリマセン!でもダイジョウブ!エネルギー出力振り切れてマス!」


 結果良ければすべてよしといった感じのベルタの報告。


 だがそれは、ヒロシにとっては歓迎すべきものではなかった。


「いかん!リミッターも外れたか?こんな出力やと数分も持たんぞ!」


「え!」


 それにはさすがにチカも叫んでいた。


 たしかに、宇宙人のメカと引っ張り合いするような出力を出せば、消耗電力は莫大なものになるだろう。


「なんでこんな天井知らずにパワー出せるようにしたんですか?」


 たまらず聞いたチカに、ヒロシは不思議そうな顔で首を振る。


「いや、そもそも電池ギリギリやのに、そんな機能つけるわけないやろ。こんな事したら電圧で回路がイカれてまうわ」


「へ?」


 だとしたら由々しき事態である。


 一瞬後にも、「オーダンナー」の電池はゼロになるかもしれない。


 チカがその事をミオに言おうかどうか迷っているうちに、それは起きた。


 大きな金属音がしたかと思うと、オーダンナーは急激な加速で走り出した。


 反対にクローアームはものすごい勢いで、巻き取られていく。


 そしてその瞬間を、チカはハッキリ見ていた。


「オーダンナー」の背後にあった「ショイコ」が引きちぎれたのである。


『よっしゃ!』


 逃げられたと確信して声を上げるミオ。


 だが、指揮車の中の一同の顔は青ざめていた。


 電源パーツがごっそり取れたのである。


 それを意味する事が何なのか、一同は理解していた。


『ん?なんか軽くなった?動きが速い』


 そして、何も知らないミオの声が届く。


 チカはどう言って良いか分からず、口を開閉させながら、後ろを振り向いた。


 頭を抱える高橋に、青ざめるヒロシ。


 チカは、「デッチ」で「オーダンナー」の後を追いながら隣のベルタに尋ねた。


「……あと、電池どれくらい持つんですか?」


 だが、ベルタはそれに笑顔でサムアップする。


「ワカリマセン!こちらのモニターではもうゼロ!でも出力ダイジョウブ!」


 全然大丈夫じゃない。


 チカはベルタの報告に言葉を失う。


「なんでまだこんな出力出せるんや……」


 それに、ヒロシも首を傾げていた。


 どうも、計器自体も当てにならないらしい。


 現状フルパワーだが、これもいつまで持つかわからない。


 そして甲虫メカは、やはりものすごいスピードで追って来る。


 明らかにスピードが違うので、追いつかれるのは時間の問題。


 もう黙ってられない。


 チカは、意を決してミオへ通信を繋いだ


「……ミオちゃん落ち着いて聞いて」


『なに?』


「さっき、脱出した時に、電源パックが外れたの。電池がいつまで続くかわからない」


『ええ!?』


 その叫びと共に、「オーダンナー」のエネルギーはゼロになった。


 そのまま惰性で道路脇に突っ込む「オーダンナー」


 チカの助言は間に合わなかった。



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