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商工戦士オーダンナ―  作者: 宮城 英詞
オーダンナー譲渡指令!

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18/22

裏切りの宇宙人

 会談当日、チカはトラックの中に仮設された指揮所の中にいた。


「デッチ」のコントローラを握るチカの隣には、オーダンナーのシステムをモニターするためデルタとアポロがパソコンをのぞき込んでいる。


 そして後ろにはヒロシ、そして高橋が会場の周辺の見取り図を挟んで座っていた。


 長田さんや荒田さんはじめ「スーパーロボット作ろう会」の皆さんは巻き添えを避けるため退避してもらっている、という事になっているのだが……。


『天王寺さん。カメラスタンバイバッチリです。もう生放送前なのに待機している人が山ほどいますよ』


 そんな声が、ヒロシのタブレットから、聞こえて来ていた。


 実は彼ら、今回の放送を生配信するために別行動なのである。


「……一応極秘任務なんだがな」


 と、高橋さんも仏頂面である。


 だが、ヒロシはご機嫌であった。


「まぁ、ええやないか。ワシらは政府の知らんとこで動いとる独立愚連隊なんやろ?ほんなら、政府が横やり入れるのも変な話やないか。動画再生で、広告費はもらえる。情報収集にもなるし、政府と「オーダンナ」の人気取りにもなるやないか、偉い人の黙認も取り付けたしんやから、ここは文句言うたらアカンって」


 どうも、上の方にヒロシがねじ込んだ結果らしかった。


 おかげで、高橋はカメラを止めることもできない。


「スーパーロボット作ろう会」の組織力は意外と侮れないかもしれない。


 チカは後ろの大人のやり取りを聞きながらそんな事をうっすら思っていた。


 そして、チカの意識は待機中のミオに向けられる。


 ミオは仮設台にどうにか立った姿勢で固定された「オーダンナー」の中で、不安げに周囲を見回していた。


「ミオちゃん調子はどう?」


 すると、話し相手ができて安心したのか彼女の表情に笑みがこぼれる。


 待機中のミオの話し相手になれるというだけでも、自分がここに居る意味があるのだと思った。


『ひとまず待機状態で、電池は消耗せんようにしてる。緊張するし。退屈でしゃぁないわ、話がまとまったらすぐにでも降りるんやけど』


 流石にエンジンだけで動かすには「オーダンナー」のフルパワーはあまりにも電力消費が大きい。


 内蔵電源と補助バッテリーが切れたら、パワーはある程度絞らなければならないわけで、それまでは極力電力消費を抑える必要があった。


 このため、現在「オーダンナー」はエンジンで充電しつつカメラなどを動かす最低限の電力で稼働している。


 もろもろの事態を想定して、今ミオはコックピットから出るわけにはいかない状態だった。


『もしかして、会議が始まったら終わるまでずっとここなんかな?』


 そう言うミオの言葉にチカははっとなった。


 そう言えば、なんだか破談になる前提で準備しているが、会議が穏便に始まればそう言う事も考えられるのだ。


「うまくまとまってくれればそれが一番なんだけどね」


 とチカは苦笑し、


「状況分かったら、随時連絡するね」


 とフォローも忘れなかった。


 そして、しばしの沈黙を切り裂いて、高橋の携帯が鳴る。


 どうやらメールが届いたらしい。


 高橋はその内容を確認すると静かに宣言した。


「来たぞ、このまま大阪湾に着水するコースだ」


 それは、宇宙人の船が大気圏に突入してきたという知らせだった。





「約束通り来たね」


 足元首相は、大阪湾に異星人の船が着水したとの報を聞き、感慨深げに、埋立地、舞洲の仮設会場から青空の海を眺めた。


 人類史上初の異星人との公式会談が始まる。


 安全を配慮してという名目で報道陣はほぼリモート中継なため、会場は限られた閣僚と官僚たちが駆け回るこじんまりした空気だった。


「大泉君。彼らは、ちゃんと話し合ってくれるかな?」


 足元は振り返って防衛大臣の大泉に問う。


 もろもろの事情でほとんどこの場に来なかった閣僚たちの中で、ここに来た数少ない閣僚である彼はそれにきっぱりと返した。


「おそらく、厳しい交渉になることは間違いないでしょう。彼らとは文化も、価値観も異なります」


 若い閣僚の答えは何度も繰り返されたものだった。


 確かに、この数か月交渉してきてそれは痛いほどよくわかっていた。


 しかし、今回は違う。


 ようやく相手はこちら側に来てくれた。


 そしてこちらにはカードがある。


 足元は、会場の目立つ場所に立たされた「オーダンナー」を見上げた。


「なるほど。その対策としての捕虜と「スーパロボット」という訳だな」


 首相の言葉に大泉は頷いた。


「異星人はなぜか「スーパーロボット」を警戒しています。パイロットが女子高生ともなれば、国内や地球に対しても反抗の旗頭となるでしょう。ここはできるだけ高く売りつけるべきかと、そうすることで相手の内情も見えてきます」


「大勝負だなぁ」


 まさかこんなことになるとは思わなかった。


 足元は天を仰いでぼやいた。


 そして、捕虜となった「リャク・ダーツ」と言う名の異星人を乗せたリムジンが入ってきた。


 やや肌色が青い以外は、地球人と変わらない。


 不安げに窓から周囲を伺うその姿に、足元はまた溜息をつく。


「結局、何も話しできなかったね」


「翻訳機が無くては、会話もままなりませんからね。手荒い事はしたくなかったのですが、脱走されても危険ですので、軟禁せざるを得ませんでした。交渉で悪い材料にならなければよいですが」


「誠心誠意、伝わらないなりにがんばったんだけどなぁ」


 二人とも彼に昨日会いはしたのである。


 だが、会話はおろかゼスチャーも通じているかは困難だった。


 いま世界中のAIを活用して言語解析をしているが、結局間に合わなかった。


 今回も返還の為にここに連れてこられたことが伝わっているかも怪しいものであった。


 そうこうしているうちに海の向こうに巨大な楕円形の物体が見えて来た。


 それは小型の船舶をも思わせる、大きなものだった。


「こないだのより、だいぶ大きいな」


 遠くを眺めながら、そう呟く首相に、大泉も双眼鏡でそのサイズを確認する。


「高さだけで8メートルほどありますね。奥行きも小型の船舶くらいはあるかと、「オーダンナー」を輸送するためのサイズとすれば妥当かと思います」


 そう彼が返答を返し終えると同時に、その船は六本足のランディングギアを展開させ、ゆっくりと埋立地に降り立った。


 その姿はさながら、巨大な甲虫のように見えた。


 横幅八メートル、全長18メートルほどのそれは、先端らしきものをこちらに向け、搭乗口らしきものを開く。


 そこからは何者も出てくる気配はなかった。


「どうしたのでしょう?」


 首を傾げる、大泉にしげしげと様子をうかがう首相。


 それに答えたのは、先ほどまでリムジンの中にいたはずの異星人だった。


「どきたまえ、私を助けに来たのだ」


 突如、背後から聞きなれぬ声が聞こえる。


 それに驚き、振り向く二人。


 見れば、リムジンの警備をしていたSPはすべて周辺で倒れていた。


「君!言葉が分かっていたのか!」


 そう言う首相に、リャク・ダーツはうっすら笑った。


「我々の科学力を甘く見てもらっては困るな。翻訳機も、通信機も、機械は体に埋め込まれていた。君たちに余計な情報を与えたくないのでね。知らぬふりをさせてもらった」


「そんな!交渉は?」


「君たちと取引することなどない。我々はスーパーロボットを手に入れ、我が目的を果す。君たちは我々に服従し、資源提供者となるのだ!」


「何だと!」


 首相がそう言ったと同時に、大泉が合図を送る。


 周囲のSP達が一斉に首相を取り囲んだが、デ・ノミは自分に近づくSP達を手で制した。


 SP達はその場で稲妻に打たれたように痙攣し、崩れ落ちる。


 どうやら、護身用の武器も隠し持っていたようだった。


「おっと!近づくなよ、レーザーがここを狙っているぞ。私に何かあれば、もろともここを焼き尽くすぞ!」


 そう言うと、彼は徐々に後ずさりしながら距離を取り、甲虫メカのタラップへと駆けていく。


 足元は、どうやら交渉相手とも思われてはいなかったようだ。


 首相は、SPに車に押し込められながら、歯ぎしりしていた。





 会場で何か騒ぎが起こった事は、ミオからも見えていた。


 ただ、音が無いので何が起こっているかよくわからない。


 SPが集まって来たかと思ったら、宇宙人らしき人間が船に乗り込み、首相が車に担ぎ込まれる。


「一体何があったん?」


 どう考えても穏便に交渉は進んでいない様子である。


 ミオは困惑して「死んだふり」を続けて良いのか戸惑っていた。


 そしてそれに答えたのは、指揮車に乗っていた高橋だった。


『向こうの方が一枚上手だったらしい、逃げろ!』


 その言葉を認識する前に、ミオの目には甲虫メカから、何かが射出されているのが見えた。


 それは、巨大な四本爪の形をしたアームだった。


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