第4話 アッシュウルフ討伐-その3-
「……よっしゃ、それじゃ、久しぶりに暴れてみるか!」
おれたちは、頷きあうと、金色のアッシュウルフへと駆けだしていった。
「レイドアーマー展開。シェルコート、スプレッドアウト」
エレナが背中に手を回す。
指輪が赤く光った。
その光が全身へと広がり、そして、それまで身につけていた板金鎧が消えた。
より軽装の鎖帷子の下地に右腕や膝、胸当てなど、一部だけが金属で補強した姿となる。
そして、背中から両手剣を抜いた。
彼女が身につけているシェルコートは、防御力に特化した防具だ。
エレナはそれをストレージ——収納用の異空間からそれを直接、取り出して装備したのだった。
兜が消え、素顔が現われる。
赤毛をポニーテールにし、さらに前髪をアップにしている。
白い肌は一度も日焼けをしたことがないのではないか、と思わせるほどで、瞳の色は褐色。
可愛い、というよりも、美人という言葉が似合う。
自分にも他人にも厳しいので、煙たがられることもあるけど、おれとは意見がぶつかったことは、あまりない。
エレナと戦うのは、今世ではこれが最後だろう。
少し、彼女の顔を見つめた後、おれも少し遅れて、駆けだしていった。
数匹のアッシュウルフが牙を剥くが、脇目も振らなかった。
ただ、金色のウルフへと目指す。
エレナが振り上げた両手剣が、青い光に包まれる。
戦闘スキルを使ったのだろう——種類まではわからないが、標的に二重のダメージを与えるダブル・エッジあたりだろう。
おれは、『大地の加勢』でそれをさらに上乗せする。
と同時に、呪文を唱えた。
「汝がために、輝きは暁光より来たれり。実に英雄の剣は賞賛を受けて、敵へと振り下ろされん。勝利の賞を得るがために、古の神々よ、恩恵を我らに与えよ!」
おれは、大地と周囲に漂う血臭から、魔力を吸い上げ、それを「武運」の真呪へと流し込んだ。
真呪は、魔術を効果ごとにいくつか分けて具象化したイメージのようなもので、多岐に渡る呪文の効果をある程度、縫いつけるのに必要となるものだ。
「やぁあああああ!」
エレナが鋭い掛け声をあげる。
あの、背の低いエレナのどこに、そんな声量が溜められているのか、と思うくらいの叫びだった。
ざん! という音が聞こえてきた。
エレナの初撃が、金色のアッシュウルフの胸を切り裂いたのだ。
もともとの、エレナの戦闘スキルの効果もあったのだろうが、おれの呪文と『大地の加勢』もそれに上乗せさせられているのだろう。
かなりの深傷となったようだ。
エレナが、さらに、踏み込んでいく。
横薙ぎの一撃が、ウルフの顔面を捕らえる。
さらに、もう一度——今度は、脳天へと剣の刃を食らわせる。
鋭い振りに、風を感じそうになるくらいだった。
ウルフの巨体が、地面に落ちた。
頭部を切り裂かれ、金色のウルフは大地に伏した。
即死なのはもう、明らかだ。
血が死体から流れていく。
金色のアッシュウルフが倒されたのを知り、他のウルフたちが動きを止めた。
いっせいに、この場から退いていく。
——終わったな……。
残ったウルフの掃討もあるのだけど、ここまでの戦闘でアッシュウルフたちは半数以上、倒されてしまっている。
生き伸びたウルフたちも、このトゥラン街道にはもう、戻ってこないだろう。
「やった!」
「勝ったぞ」
「おれたちの勝利だ!」
その言葉に、おれは目を細めた。
エレナが、近づいてくる。
「お疲れさま」
「お見事!」
声をかけあうと、おれたちはハイタッチをした。
エレナの画像を挿入しました。




