表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ  作者: なりちかてる
序の章:孤狼は巣をつくらず(Sola lupo ne konstruas kavernon)
3/14

第3話 アッシュウルフ討伐-その2-

 アッシュウルフたちの攻撃は、止まなかった。

 倒しても、倒しても、ウルフたちは仲間たちの死体を踏み越えて、牙を剥いてくる。


 数人が、重傷となってしまった。

 あっという間に、形勢逆転だ。


 うーん、こんな形で撤退はしたくないな。

 グレンに、何を言われるか、わかったものじゃない。

 というか、劣勢になっているのだから、何らかの手を打ってほしいものだ。


 おれは、池の端に腰を落ち着けている、金色の毛並みのアッシュウルフを見た。

 あれが、群れのリーダーなんだろう。

 金色なので、アッシュウルフではなく、ゴールドウルフ、といったところか。

 周囲のウルフよりもさらに大きく、毛並みも艶やかだった。


 あのウルフを倒せば、混乱するかもしれないが——ここからでは、たどり着くことは無理だろう。

 一度、森に戻って、態勢を整えるべきか?


 と思っていると、雷鳴が聞こえてきた。

 遠くから響いてくる——と思ったら、突然、耳の奥がつーんとなるほどの、大きな音が轟いた。

 落雷の呪文、だろう。

 もちろん、グレンからの支援攻撃だ。


 続けざまに、落雷は二度、三度と落ちる。

 稲妻はアッシュウルフを打ち、地面を抉った。

 岩が割れ、弾ける。

 落雷は、ウルフだけでなく、こちらの側にも落下した。


「うわ! 危ねぇ」

 直撃はしなかったものの、すぐ側に稲妻が落ちて、ひやりとした。

 ウルフを狙った——というよりも、大雑把に呪文を放ったとしか思えない。


 二番隊に命中しても構わない、と指示を出しているのかもしれない。

 ——やってられないね。


 思ったが、落雷の攻撃が止んだようなので、おれたちは反撃をはじめた。

 既にウルフたちは、ほとんどが地面に倒れ伏している。

 電撃で麻痺しているだけなのか、即死なのかは、今は調べる余裕がない。

 おれたちは、剣を構えて、進撃した。


 金色のウルフが、顎を開いて、睨みつけている。

 これを倒せば、アッシュウルフの討伐は完了となるのだが、その先はまだあるのだ。

 とりあえず、今はこの危機に集中しなければ。


「ヤー! プレズ・アルタ・フラグスヴィンガト!」

「ヤー! ヤー、ヤー!」

「ラウド・エスティ・アル・ヴィ。フラグスヴィンガト!」


 聞きなじみのある言葉が、響き渡った。

「三番隊、これより参戦する!」

 その声を聞いた時——どうして、と思った。


「隊長?」

「あ……あぁ」

 今はまだ、アッシュウルフとの戦いが続いている。

 気を緩めることは禁物だ。


 轟音が響いた。

 今度は落雷の音ではなく、銃撃の音だ。

 左手の斜面から、騎馬の兵たちが駆け下りてきている。

 馬の速度を緩めずに、きちんと隊列を組んだまま、ライフルを構えている。

 ライフルは、このメディシアン大陸の技術では、まだ開発されていないのだが、おれたち、アリアンフロッドの間では特別な遺物——ドリフテッド・シングスとして、使うことが許されている。


 扇状に広がり、騎兵たちはライフルを構えている。

 速度も斜面の起伏も計算に入れて、タイミングぴったりで銃撃をしている。


 それにしても、見事なものだ。

 おれは、馬に関しては移動手段として使う程度だが、あの練度は感心してしまう。


 三番隊は、銃士隊として組織された小隊で、馬の扱いとライフルの腕は、”旗を振るもの”のなかでも屈しのものとなっている。

 案外、騎士への昇格は三番隊の活躍があったからかもしれないな、と思った。

 それにしても、どうしてエレナたちは、このアッシュウルフの討伐に参加しているのだろう?

 これまでの繰り返しの生のなかで、彼女が討伐に加わってきたのは、一度もないのに。


 銃弾が、金色のアッシュウルフに命中していった。

 着弾する度に、肌に血が散る。

 それでも、金色のアッシュウルフは倒れなかった。


 姿勢を低くして、唸り声をあげながら、牙を剥いている。

 瞳は、赤く染まり、憎しみの視線を向けていた。


「フィル! すまない、ちょっと遅れた」

 エレナが馬上から、声をかけてくる。

 全身、板金鎧で武装していて、フルフェイスの兜を被っている。


「よっと」

 馬から降りると、おれと並んだ。


「久しぶりに、おまえと肩を並べて、戦いたくなった」

「おい、三番隊はどうするんだよ」

「大丈夫だ。指揮はイオに任せている」


 イオとは、三番隊の副官の名前だ。

 何が、大丈夫なのか、わからないが、銃士隊としての役目は既に終えている、ということだ。


 エレナとは、戦場を共にすることは多いものの、それぞれが隊長となってからは、こうして横に並んで戦うことは、ほとんどなかった。

 そんなことを言い出す——ということは、もしかすると、エレナも既におれが”旗を振るもの”から追放される、ということを知っているのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ