第2話 アッシュウルフ討伐-その1-
今回の作戦だけど、三番隊を除く、すべての小隊が参戦していた。
各小隊の連携をフルに生かして、グレン自身の指揮能力を見せつけるつもりなのだろう。
まずは、おれたち二番隊の出番だ。
アッシュウルフの巣がある場所はだいたい、当たりをつけている。
ウルフの巣は複数あるが、そのなかでも一番、大きいものを狙う。
各個撃破していって、残りは数の少なくなったアッシュウルフを包囲して殲滅する——というのが、グレンの考えた作戦だ。
オーソドックスだが、内容としては、まずまずだろう。
さて——アッシュウルフだが、巣を中心にして、五、六匹で集団を作っているようだ。
ウルフは、一対一では”旗を振るもの”のメンバーではやや、苦戦するぐらいの実力差がある。
なので、ウルフを牽制しつつ、数の差で押しきり、一匹ずつ、片づけていく、というのが基本となる。
ウルフの数は、おれの見立てでは、二十匹はいないだろう。
それに対して、”旗を振るもの”のメンバーは四十人くらいいる。
よほど、グレンが下手なことをしない限り、アッシュウルフの討伐には成功するだろう。
おれはまず、馬の扱いの巧い三人に先駆けをさせた。
短弓を装備させ、奇襲に驚いたウルフに攻撃させる。
倒す必要はなく、混乱させるのが目的だ。
「よし! 行くぞ」
おれは、残りの二番隊に声をかけ、出撃させた。
徒歩で巣のなかへと目指す。
歩きなのは、おれの天恵『大地の加勢』を生かすためだ。
これで、おれの周囲にいる二番隊のメンバーの能力が強化される。
おれは片手剣に、スターリー・ジャケットという武装の組み合わせだった。
スターリー・ジャケットは、速度に特化した防具で、その名の通り、真っ黒なカラーリングとなっている。
肩と胸、右腕と両脚だけ、金属で補強してある。
二番隊は、任務で使用する武器は統一しておらず、それぞれのメンバーの自由にさせていた。
対して、一番隊は厳格にグレンが決めており、三番隊はメンバーがエレナの武器や鎧を真似ているので、不揃いなのは二番隊だけだった。
腰から剣を引き抜きながら、おれは自分が騎士になるのは、無理だよなぁ、と思った。
騎士ならば、馬に騎乗しての行動が基本となる。
それが、いちいち、馬から降りていては、作戦もままならないだろう。
おれは、騎士になるのは目的じゃないし、グレンから離れられるのなら、それで満足だった。
アッシュウルフの唸り声があがった。
木々の陰から、銀色の姿が見え隠れしている。
獣道が続いているので、おれはそのまま、辿っていった。
右手から、アッシュウルフが飛びかかってきた。
鋭い爪が振り上げられる。
おれは、脚を踏んばると、剣で爪を受けた。
キン! と金属音が響く。
「隊長!」
後ろに控えていた、二番隊のメンバーのひとりが、突っ込んでくる。
長槍が、アッシュウルフを貫く。
さらに、後方から呪文を唱える声が聞こえてきた。
「……汝が高きところ、低きところを進む時、その光輝を遮るものなし。勝利の賞に富む汝の名を我は讃える。オルウェの怒りをもて、我が怨敵を屈服せよ!」
森の奥から、光の奔流が走り抜けていった。
それが、ウルフを打った。
ぎゃん、と悲鳴をあげる。
木々を薙ぎ倒して、それから、地面に叩きつけられた。
銀色の身体を血塗れにして、それっきり、ウルフは動かなくなった。
おれは、部下たちに合図を送る。
三人がかりだが、強敵のアッシュウルフを倒すことが出来たようだ。
さらに、アッシュウルフと戦うために、おれは森の奥へと脚を踏み入れていく。
ウルフの討伐は、順調だった。
深追いはせず、怪我も軽傷程度で、決して一対一にはならずに、倒していく。
やがて、おれたちは森を突っ切り、見晴らしのいい場所へとやって来た。
右手は池が占め、いくつか、飛び石のように、足場のようなものが浮かんでいる。
森はまだ、続いているが、左手と池の対岸では斜面が視界を遮っている。
その場所に脚を踏み入れた途端、左右からウルフが攻撃してきた。
おれは、右のほうのウルフを迎え撃った。
スキルを操作して、防御力を強化、剣で牙を受けると、踏ん張った。
さらに、筋力を上昇させる。
ウルフを撥ねのけると、剣を横に薙ぎ払う。
致命傷を与えることは出来なかったが、肩口を切り裂くことは出来た。
地面を蹴ると、おれは追撃をした。
ウルフも、こちらへと迫ってくる。
おれは、保留していた、『大地の加勢』の力を、防御力を消して、攻撃力と筋力に割り振った。
正面から、おれは振り上げた剣を叩きつける。
剣の刃が、ウルフの頭部に一撃を与えた。
力を込めると、ウルフは地面に伏した。
もう一度、おれは剣を振り上げ、頭部を粉砕した。
血がびちゃっと、飛び散る。
しかし、それで終わりではなかった。
ウルフは次々と現われ、攻撃してくる。




