表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ  作者: なりちかてる
第1章:鳳は空の青さを知らず(La fenikso ne konas la bluon de la ĉielo)
23/30

第23話 死闘の後で

 おれも、座り込みはしなかったが、レッドの言う通りと思った。

 脱力し、しばらくはその場から、動けなかった。


 それにしても——セラスはどこから、変形する義手なんてものを手に入れたのだろうか。

 また、この自走エクスカーベターそのものを、どこで入手したのだろう。


 謎は尽きないが、おれたちはひと息つくと、エレベーターを何とか操作して、下の階に残っていた”八月の涼風”のメンバーと合流した。

 その後——おれたちは、エクスカーベターの内部を探索した。

 レイダーたちの残党とは、もう遭遇することはなかった。


 そして、おれたちは、エクスカーベターの集中制御センターと呼ばれる場所まで、やって来た。

 エクスカーベターのほぼ、中央あたり——上部構造物のなかで一番、高い場所にあり、ガラス張りなので、周囲の風景を見渡すことが出来た。


 センターの一番手前にある制御卓で、画面と文字盤を使って、エクスカーベターの機能をすべて、制御できるみたいだが、おれにはさっぱりだった。

 制御卓は、エーテル・リンケージを大きくしたものらしいが、コレットが、詳しいようだ。


 コレットは、“八月の涼風”のメンバーのなかでも、魔道回路や魔道機が専門のようで、手慣れた様子で、文字盤を使いこなしていた。

 まずは、移動を続けていたエクスカーベターを停止させ、馬を預かっていたミュウを迎え入れることにした。

 外は既に夕暮れ時を過ぎ、双陽は地平線の下に沈もうとしていた。


 予定がすっかり狂ってしまったが、エクスカーベターのなかで休憩をして、朝になったらまた、これからのことを考えればいい。

 コレットは、エクスカーベターのデータを調べているらしく、制御を終えた後も、夜遅い時間まで文字盤をかちゃかちゃと叩いていたようだ。


 そして、朝になり、朝日を浴びて、おれは目を覚ました。

 警戒はしていたが、特にこれといったことは、起らなかったようだ。


 レイダーたちが使っていたキッチンで、朝食を作ると、”八月の涼風”のメンバーたちと共に食事をすることにした。

 目玉焼きや黒パン、干し肉やチーズ、それに乾燥させたナッツなど。

 どれも、長距離を移動する時に必ず、口にするものだが、それでも、火を通すだけで、ずいぶんと美味しく感じられる。


「みんな——ちょっと、聞いて」

 食事を終えた後、リンがそう切り出してきた。

「コレットがここの制御装置を調べてみた結果、わかったことなんだけど——このエクスカーベターが発掘された遺跡の場所が特定できたみたいなんだよね」

 メンバーたちが、顔を合わせた。

 すぐには、誰も喋ろうとしない。


「んでっ、どうだろう。その遺跡に、向かってみたいと思わない?」

「ちょいと、お待ちよ。リン、アタシたちの本来の目的、忘れてないかい」

 レッドが、おれを見た。


「あー、うん。それなんだけど、もちろん、忘れてないよ。帰郷を急ぎたいんなら、そっちを優先させるけど」

「そんな言い方——断りづらいじゃない」

「……いいんじゃないか? 遺跡の探索、楽しそうじゃないか」


 おれは、視線を浴びるのを感じながら、ゴブレットに残りわずかとなったワインを飲み干した。

「リン、本当にいい加減にしなよ。一度、言ったことには責任持ちな」

「だから、送り届けない、とは言ってないでしょ。後回しにする、というだけで。それじゃ、小隊を分ける?」

「だめだよ。どっちも危険なことに巻き込まれる可能性が高い」

「でもっ、遺跡だよ、遺跡。お宝が眠っているかもしれないじゃん」

「どうせ、掘り尽くされているよ。レイダーたちが見つけた遺跡なんだろ?」


 リンとレッドはさらに、ああでもない、こうでもない、と討論を続けている。

 が——おれは、レッドも本当は遺跡探索をしたいのだろうな、と感じた。

 ただ、リンの思いつきだけで突っ走ってしまうと、後々、問題が生じてくるので、レッドはブレーキ役を買って出ている、ということなのだろう。


 リンが言うように、遺跡にはどんな財宝が眠っているのか、計り知れないものがある。

 無駄足と知りつつも、実際に脚を運んで目にしたい、とは誰でも思うことだろう。

 おれ自身、とても興味を惹かれてはいた。


 その後——結局、遺跡へ向かうことが決まった。

「ごめん、フィル。なんか、無理矢理、付き合わせることになっちゃって」

 朝食の後、リンが話しかけてきた。

「あーうん。別に、いいんじゃないか。特に急いでいるわけじゃないから」


「遅れた分、きちんと埋め合わせはするから」

 と、手を合わせてくる。

「いいよ、いいよ。おれも、遺跡って聞いたらつい、わくわくしちゃうからよ」


 それは、本心からの言葉だ。

 このまま、リンたちの”八月の涼風”の小隊に入隊してもいい、とも思っているのだが、まだ、しばらくの間はどこにも所属せずに、行動してみたい、とも考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ