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心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ  作者: なりちかてる
第1章:鳳は空の青さを知らず(La fenikso ne konas la bluon de la ĉielo)
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第12話 襲撃者たち-その1-

 荷台の硬いシートに背中をぶつけながら、おれは何度目かのうめき声をあげた。

 シートベルトで身体を固定され、隣や向かい合わせに座っている護衛たちも、同じように顔をしかめている。


 窓の向こうでは、風景がぐらぐらと揺れ、走り去っている。

 トラックがかなりの速度を出しているのが、わかるだろう。


 ラディウス地方をふたつに分断しているリア河——それを渡りきると、景色も人々の暮らしも一変する。

 東部は治安が悪く、争乱の原因に事欠かない、というのが一般的な常識だ。


 ——しかし、ある程度、覚悟はしていたが、こんなにも早く、トラブルに巻き込まれるとは、ね。

 おれは、ため息をついた。


 リア河から東部へ移動する——というダイキニ人の武装キャラバンと交渉し、故郷のアリハタナ村の近くまで護衛として、隊商隊に乗り込むことにしたのだが、一日と経たずにレイダーたちから襲撃を受けることになってしまった。


 襲撃は朝も早い時間——野営をしていたところに、突然、レイダーたちが砲撃してきたのだ。

 キャラバンは三輛編成だったのだが、その時に二輛の武装トラックが破壊され、残る一輛のトラックに飛び乗り、おれたちは逃走を開始した。


 武装トラックは、カートライナーとも呼ばれ、かなり強力な防御用の呪工(エンチャント)がなされているはずなのだが、たった一度の砲撃で撃破されているので、その場で戦うよりも、逃げたほうがいい判断なのだろう。


 後ろから追いかけてきたのは、同じく武装トラックだが、屋根の上に砲塔が載せられている。

 ただし、走っている間は砲撃をすることは出来ないらしい。

 速度をあげて、こちらのカートライナーへ迫ってくる。


 こちらは、車体は頑丈ではあるものの、速度はそれほど、出せないみたいだ。

 間もなく、追いつかれてしまった。

 横に並んで走り、何度も車体をぶつけてくる。

 その度に、カートライナー全体が浮き上がり、バウンドした。


 レイダーは、遺跡などから勝手に強力な古代の兵器を拝借して、略奪をしている連中だ。

 捕まれば、まず、助からないだろう。


 そして、二輛の武装トラックとカートライナーは、丘の斜面を走り抜けていった。

 片側が丘の頂きで、反対側は谷間となっている。

 少しでも、ハンドル操作を間違えたら、谷間へと滑落してしまうだろう。


 こんなところで死にたくはないが、死に戻りの経験が、おれを冷静にさせているのかもしれない。

 ここで死亡しても、また死に戻りをする、という確約はないのだが——荷台のほうにいるおれとしては、すべては運転手に託すしかない。


 武装トラックは、後ろから、数回、体当たりをしてきている。

 そして、カートライナーが悪路をはみ出しかけ、ハンドルを急に切ったところへ、後ろから武装トラックが突っ込んできた。


 カートライナーは斜面側へとぶつかり、それから、大きく跳ねた。

 ふっと、身体が軽くなる。

 今度は、カートライナーは斜面へと軸先を向け、谷間への斜面を走り抜けようとした。

 が——斜面に生えている木に数回、ぶつかると、そこまでだった。


 身体がシートから浮き、そして、がくん……とベルトによって引っ張られた。

 車体が完全にひっくり返り、ぐるぐると回転した。

 おれは身体を丸くして、頭を抱えるようにして、身を守った。

 ようやく回転が止まると、おれは逆立ちをしているように、天井を下にして、シートベルトで固定されていた。


『ひどいドライブでしたねぇ』

 ソフィの文句を無視して、おれはシートベルトを解除した。

 天井に降りる。


 怪我は何とか、していないようだ。

 護衛たちの声をかけ、早いところ、ここから逃げ出すように言う。

 すぐにでも、レイダーたちはこのカートライナーを取り囲んでくるだろう。


 荷台のなかは、完全にひっくり返り、貨物のコンテナがあちこちに落ちてはいるものの、歩くのに邪魔にはならなかった。

 後部ドアまで近づくと、歪んだそれをちょっと、開けてみる。

 耳を澄ましてみるが、レイダーたちはまだ、谷間へはたどり着いていないのだろうか。


 後部ドアから地面までは、飛び降りるのにちょっと勇気がいるが、そのくらいだった。

 おれは、身を乗り出して、無事、着地を成功させた。

 残りの護衛たちも、飛び降りてくる。


 谷間は木々が密生し、枝葉を広げていた。

 少し、緑の匂いがきつい。

 頭上をちらりと見上げると、双陽が朝早い日の光を放ってきている。

 振り返ると、カートライナーは完全に地面の凹みに車体をめり込ませており、もうこれを走らせることは、出来そうになかった。


「護衛の方、護衛の方!」

 カートライナーの陰から、小柄なマントを肩にかけた人物が飛び出してきた。

「運転していた、ワタクシの相棒は亡くなってしまいました。どうか、ワタクシを助けてくださいませ!」


 小柄——とは言うが、背丈はおれの腰までぐらいしかない。

 子供ぐらいにしか見えないが、そうではない。

 ダイキニ族は、これで成人なのだ。


 くちばしと、黒くて大きな丸い瞳の持ち主で、サイズを別にすると、直立した鳥の雛に似ている。

 獣人をはじめとする、メディシアン大陸に住んでいる種族のひとつで、商取引に才能があるのが、ダイキニ族だった。


 荒事などには向いていないが、団結力が高く、大陸の都市と都市を結ぶ交易ルートにはすべて、ダイキニ族が関わっている、とされていた。

 アドニは、この武装キャラバンの主人で、おれの依頼主でもある。


「大丈夫だ。おれから、離れるなよ」

「はい! アドニ、フィルさまから、離れません!」


 言葉使いが、どうも幼いので、調子が狂うのだが、機嫌を損ねさせてしまうと、ダイキニ族は実にやっかい相手でもある。

 ここは怪我をさせずに、乗り切りたいところだ。


「よし……まずは、カートライナーから離れよう。レイダーたちは、貨物を略奪するほうを優先させるかもしれない」

 おれは、腰に抱きついてきているアドニの頭をぽんぽん、と撫でてやると、谷間を移動することにした。

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