第13話 襲撃者たち-その2-
木々の間には、獣道がついていて、それが奥へと続いていた。
おれたちは、警戒しながら、その上を歩いていく。
獣道の上には、特に足あとなどはついていない。
土を踏みしめながら、おれたちは歩いていった。
しばらくすると、視界が開けた。
木々が退き、少し広い空間に出る。
上から日光が直接差し、明るくなる。
ずっと向こうには小川があり、草がまばらに生えている。
ひとりの若い護衛が、気が緩んだのか、ふらふらと光が当たっているほうへ歩き出していく。
声をかけようとする前に、銃声が響いた。
胸に命中し、血が噴き出した。
そして、その若い護衛は地面に倒れ込み、それっきり動かなくなった。
すぐに、おれはアドニを抱えると、木の陰に隠れた。
他の護衛たちも同様、木を盾にする。
雷鳴のような銃声が、続けざまに響いた。
木の幹が抉れ、地面に跳弾したが、おれたちに命中することはなかった。
アドニが、しがみついてくる。
おれは、姿勢を低くして、しばらくの間、じっとしていた。
「ど……ど、どうしましょう。フィルさま。ワタクシ、死にたくありません!」
地面に伏せて、アドニが言った。
「おれもだよ。まだ、故郷にもたどり着けていないからな」
銃声が突然、止んだ。
数秒のことだが、ずいぶんと長いことのようにも感じる。
「おーい。おれたちに、反撃するつもりはない。カートライナーと貨物はそのままにしておくから、黙って見逃してくれないか」
声をかけてみる。
返答はない。
だが、これが通用するほど、甘くはないだろう。
レイダーは顔や姿を見られなかったとしても、討伐依頼を出されないように、その場にいた者を生かしてはおかないからだ。
ライフルで攻撃してきているのは、複数いるようだが、銃痕の数や方角などを考えると、狙いはあまり正確ではないようだ。
その気になれば、レイダー程度なら、力押しでも充分、対応できるはずだ。
おれ以外の護衛たちの腕がどのくらいのものかは、わからないが、あてにはしないほうがいいだろう。
「アドニ。今から、仕掛けるから、そこで静かにしていてくれよ」
おれは、そう話しかけると、木の幹に沿って、立ち上がった。
「レイドアーマー展開。ヴァンガード・アーマー、スプレッドアウト」
呟き、脇腹へと左手を持っていく。
中指に嵌めている指輪が光り、そして、全身が黒い闇の色に包まれていった。
闇の色が薄れ、そして、さっきまで旅装束だったおれの姿が、黒地に紫でカラーリングされた軽装の鎧姿へと換装されていく。
ヴァンガード・アーマーは布がベースだが、回避と呪文の行使に特化しているタイプの防具だ。
ライフルの銃弾も、命中しなければなんということもない。
おれは、左手に現われた斬奸刀「剣王の矜恃」を握り直した。
幅広の、板剣と呼ばれている武器だ。
斬奸刀——というのは、アリアンフロッドが天賦を放つための、強力な武器だ。
レイダー相手に使うのは正直、もったいないが、まぁ、運がなかった、ということで諦めてもらうしかない。
「汝が意によりて、風神は駿馬の威力を全天に轟かせしめよ。風の力は我に矢を届かせることなく、守護の力を示すものなり。なれば、あらゆる呪いを彼方へと吹き飛ばせ!」
この場に漂う風の地脈の力を集め、呪文を唱えると、それを庇護のイメージへと流し込んだ。
そして、おれは木の陰から飛び出していった。
——たぶん、おれひとりでもレイダーどもの始末はつけられるはずだ。
銃弾の痕から、だいたい、レイダーたちが隠れ潜んでいる場所は想定している。
空き地の反対側の、林のなかだ。
はっきりいって、こんな風に飛び出すだなんて、無謀でしかない。
護衛たちが数人、援護のためか、木の陰が飛び出してくる。
戻れ、と口にしても、今さら遅いだろう。
——あぁ、もう!
「ソフィ、全員のステータスを強化。ポイントの配分は、おまえに任せる」
『仕様が変更されております。『大地神の祝福』の下位スキルから、お選びください』
ソフィが、機械的な棒読みで、そう告げる。
——そう言えば、そうだった。
おれの天恵が『大地神の祝福』になってから、いくつか、下位スキルを獲得しており、そちらから、効果を細かく選ぶことができるようになっていた。
「防護陣を使用する。アドニも含めて、全員だ」
そして、おれは今度こそ、地面を蹴って、走り出していった。




