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第一話:斯くして彼は『思う』のか

皆様おはぐるみでございますわよ!


現在、IRIAMで活動しております、

とある事情で参加した実験で物に憑依する存在になった元人間

被検体NO.09 - ステフドールでございますわ~!


本作品は元人間だったお人形さんが『被検体NO.09 - ステフドール』となるまでの過去のお話。

今回は、前回のプロローグを経た、第一話でございます。


『被検体NO.09 - ステフドール』の物語の第一歩。

ぜひ、お楽しみくださいませ。

 医者の車に乗せられて男が来たのは、周りを木々に囲われた山。

 ここまでの道は分からない。目隠しこそされてはいないが、車の中から外は見えないようにされていたからだ。男は普通ではない経験はそこそこしているものの、流石に車の動きから位置を把握することなどできないのだから。

 男と医者のいるのはその山の側面にポツンと作られた扉の前――平均はある男の身長の二倍はあるのではないかというほどの、大きな扉だった。


「ここが彼女の研究所です――国家公認の機関ではありますが……こうして隠されている理由もあるので、そのあたりは察していただければ」


 そう医者は男に告げる。

 場所を知ってさえいなければ、たどり着くこともできないであろうその場所にある研究所。おそらく、今回男の罹った類の――架空のものとされている類の”奇病”については世間に公表されていない。少なくとも男は知らない。

 その研究所が国家公認の機関であることは予想外ではあったが、隠されているのはそういう理由があるのだろう。未知の病への恐怖は、人々の心を蝕む病となりかねないのだから。


「それにしても意外でした」

「……何が?」


 医者が間をおいて発した言葉に男はそう聞き返す。

 何が言いたいのか分からないといった男の心情を読み取ったように、医者は話を続ける。


「すでにこの研究所にいるのは、この”奇病”の研究をしている彼女が直接声をかけて集まった方々です」


 医者の言葉から彼の言った心当たりのある人物は女性であることが分かるが、男としてはそんなことはどうでもよかった。それよりもただ、無言で医者の言葉を待っていた。


「しかしアナタは、私がこうしてここに連れてきた――普通、知らない人間から教えられた怪しい話にのる者などいないでしょう?」


 続けて耳に届くその言葉に、男は『なるほど』と得心がいった。

 普通なら、医者の言うことは当然だろう。しかし、男は”普通”ではなかった――別に”奇病”罹っていたからではない。それよりも前から、”奇病”に罹る前から、男は”普通”ではなかったのだ。

 男は医者に応えるように口を開く。


「俺は……他人に興味がないんだが……それ以上に自分に興味がない。俺がこの身体を動かしている自覚はあっても、これが俺だとは思えない」


 それは、いつからか、男が感じていたことだった。

 男曰く、例えるなら『ゲームのキャラクターを操作しているのと似たようなもの』なのだ。感情移入することもなく、ただ、”己”を俯瞰して、その身体を操っている。それだけに過ぎない。


「誰がいつどこで死のうが、俺がどこでどう死のうが、どうでも良い。俺は誰にとっても1ミリも価値があるとは思わないし、俺も俺自身に対して一切の価値があるとは思わない。俺は俺がどうでもいい。でもこの身体に起こった”ナニカ”に興味があった。だからここにいる」


 何に対しても、自分のことにすら興味が持てない人間。

 にも関わらず”奇病”に罹って多くの医者を訪ねたのは、男にとって、ソレがたまたま興味の対象となったからだ。ゲームのキャラクターに起こったことや過去に興味を持つのと同じ。

 ”己”と乖離しながら、”己”に起こった現象に興味を持った。そんな矛盾を抱えた”普通”ではない人間だからこそ、この場にいる。


「そうですか……アナタに贈る言葉として正しいかはわかりませんが、アナタの行く末に幸があらんことを」

「医者のくせして、神父様診てぇなことを言うのな」

「信仰は自由ですからな」

「そうかい」


 そんな”何の価値もない”やり取り。”何の価値もない男の話”が終わったその後には、沈黙が訪れる。

 神父のごとき言葉を吐く医者と、”己”から乖離した男。彼らの代わりにさめざめと泣くような音を、風に吹かれた木々たちが――ただ、鳴らしていた。


「キミ達!な~に辛気臭い話をしてるのさ!!ここは命を救うための施設だよ!!」


 いつの間にか音もなく開いていた扉。

 先の薄暗い通路、扉の外からではよく見えない通路の奥から聞こえた女性の声は、沈黙を破る。

 無邪気な子供のようで、それでいて成熟した女性の空気を含んだその声に、神父のごとき言葉を吐く医者も、”己”から乖離した男も、その声の方に目を向ける。


「やあやあ!はじめまして、被検体NO.09(ナンバーナイン)!助かる保証はできないが、ボクがキミを価値ある者へと変えてあげよう!」


 先ほどの二人の会話を聞いていたかのような言葉を、無邪気に響かせながら出てきたのは――無邪気な子供でも、成熟した女性でもない、明らかなオーバーサイズの白衣を羽織っている女性。

 栗色のボサボサの長髪に、隈が濃く鋭いながらも目じりの垂れ下がった目。辛うじて露出した箇所から見て取れるのは、触れれば折れてしまいそうにも思える細い身体。


「ボクがこの研究所の主だ――ぜひとも”ハカセ”と呼んでくれたまえ~!」


 これが、男の人生を変えることになる――そして、男が様々なものを背負うきっかけとなる”ハカセ”との出会いだった。

被検体NO.09 - ステフドールでございますわ~!


今回は男の話、そして”ハカセ”との出会いのお話でございましたわね。

今後、ハカセと出会った男が、どんな人生を送るのか、どんな選択をするのか、ぜひお楽しみいただければと思いますわよ~!


投稿頻度は不定期となりますが、今後もお楽しみにしていただければ幸いです。

ではまた次回、また遊ぼうね~!

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