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第二話:斯くして彼が『見た』ものは

皆様おはぐるみでございますわよ!


現在、IRIAMで活動しております、

とある事情で参加した実験で物に憑依する存在になった元人間

被検体NO.09 - ステフドールでございますわ~!


本作品は元人間だったお人形さんが『被検体NO.09 - ステフドール』となるまでの過去のお話。

今回は、第二話でございます。


今後とも『被検体NO.09 - ステフドール』の物語を

ぜひ、お楽しみくださいませ。

 突然その顔色の悪さに似合わぬハイテンションで登場した、ハカセと名乗る女性に対して、男は何ともの言えない表情で見つめている。


「悪い人ではないですよ」


 男の表情に、医者もなんとも言えない表情で言葉を返す。


「まぁ、そうなのかもしれんが...」

「なんだい?反応が悪いね~――まぁ、いいや。先にボクとこの研究所について軽く説明をしておこっか!」


 男の反応には対して興味がないというように、さっさと切り上げたハカセは話を続ける。


「”奇病”については彼から聞いているよね? 『人を指さすものではありまs――』 ここは”奇病”と、その治療法を研究するための研究所――そしてボクが、その研究をしている研究者だよ!」


 自分に指をさしたハカセに対して文句を言う医者を無視して、彼女は無い胸を男に向けて張ってそういう。


「ここでは研究者であるボクと、被検体たちだけで生活している――どこから情報が洩れるかもわからないし――何より、他人に気を遣う必要がないからね!」


 その彼女の発言からは、情報管理に対する考えもあるようだ。しかしそれとは別に、明るい性格に見せかけてどうやら対人面が苦手――というより面倒だと思っているような印象が見て取れる。

 研究者というものは、大抵は人格面に難のある人間ばかりだと言うし、それと似たようなものだろうと男は結論付けると、ハカセの話に耳を向けなおす。


「研究と言っても別におかしな事はしないから安心して!採血したり、毎日の健康チェックとか、治療薬の治験とかそのくらいだよ~!」


 医者からの説明とすり合わせるように彼女の言葉を聞いていた男は――ふむ――とただ頷きながら答えていた。ハカセは気にせず話を続けているのだが、医者は男の反応が薄いことが気になっていた。

 結局医者は、先ほど男が自分で話していたように、他人にも自分にも興味がないからだろうと結論づけたのだが――男はとあることを考えていた。

 先程から説明をしてくれている彼女――ハカセは最初から変わらず元気に話しているのだが、男は彼女の様子に違和感を抱いていたのだ。言葉では言い表せないが、確かに何かを感じ取っていた。


「まぁ今のところ”奇病”の治療の目途はたってないんだけどね!――流石に症例が少ない状態じゃ夢のまた夢さ~!」


 彼女の明るい後ろ向きな発言に、医者は『また適当なことを……』あきれながら呟いている。

 実際、ハカセの言う通り症例が少なければ治療方法の確立など難しいだろうと男も理解している。だかろこそ特に彼女の言葉に反応することはない――のだが、男が反応を示さないのは別に理由があるからだ。

 先ほどから抱いていた違和感。彼女の話を受けるごとに、彼女の声を聴くごとに、そして話している彼女の表情を見るたびに――その違和感が強くなっていく。


「あっ、そうそう!最後にここでの絶対の決まりを話さないとね!」


 男の抱く違和感など知らぬ博士はそのまま最後の説明を始める。男も流石にそれは聞くべきだと、違和感を振り切って彼女の言葉に耳を傾けることにした。


「ここではボクも他の被検体たちも、そして君も本名で呼び合ってはいけない。ボクのことはハカセ。他の被検体のことは番号で呼ぶんだ――」


 それまでの明るくおどけた様子など一瞬で消し去った真剣な表情と声で、男に言う。

 彼が『なぜ?』――そう聞く間もなく、ハカセから答えが告げられる。


「――ボクも、彼らも、お互いに情などが湧かないように」


 彼女の言葉はそう締めくくられた。

 ハカセを除いて、この施設にいるのは人であるとは言え、男を含めて全員が”被検体”。あくまで研究対象なのだ。いつ死ぬかもわからない状況で情でも湧いてしまえば、別れはつらいだろう。

 だからこそ、名前を呼ばないという絶対的な決まりが設けられているのだと、理由を聞くまでもなく、男も理解する。

 そう理解した男は――


「ははっ」


 ――そう、短い笑い声を漏らした。


「ああ、すまん、ちょっとな」


 医者は彼に人外の存在でも見るような目を向け、ハカセは逆に、面白いおもちゃを見つけた子供のような目を向ける。


「なるほどな……」


 男が漏らしたその言葉は、ハカセの言葉に対しての納得などではない。自分が彼女に対して抱いていた違和感。その理由に気付いたからである。

 男は、自分に人を見る目などあるとは思っていない。他人になんて興味がないのだ。人を見る目などあるわけがない。それでも男には、おどけた態度を見せる彼女の瞳のその奥に――強い覚悟と、更に深くに隠れた”諦め”の色が見えていた。

 一瞬にしておどけた雰囲気を消し去った様子を見て、そう確信したからこそ。何よりその瞬間自分に沸いてきた”モノ”を理解したからこその言葉だった。


「なぁ、ハカセ」

「なんだい?」


 突然男から呼ばれたハカセだが、彼女に驚く様子はなく、ただ、男の口から出る言葉をキラキラとした目で待っていた。

 一瞬言葉を止めた男は、そんなハカセの瞳を見つめて、再び口を開く


「楽しくなりそうだな」


 自分の人を見る目を、彼女の瞳に隠れたその覚悟、そして”諦め”――それが何なのか、気になって仕方がなかった。

 二十と数年。生きてきた中で、そこまで強く感じたのは男にとって初めてのことであった。他人への興味。そして自分への興味。

 彼女への違和感を経て抱いたのは、一種の一目惚れ――恋情の類などではない。今までの退屈が払拭される予感に、その予感を与えてくれた女性に魅入られてしまったのだ。


「あっはははは!――改めてようこそ” 被検体NO.09(ナンバーナイン) ”。君の期待にボクが答えてあげよう」


 そんな発言をする男に対してハカセは、心の底から笑顔を浮かべ、無邪気な笑顔でそう答えたのだった。

 ハカセには男の考えや気持ちなどは分からない。男にも彼女が楽しそうに笑っている理由などわからない。それでも彼らは互いの瞳を見つめ握手をする――『これから長い付き合いになりそうだ』そんなことを考えながら。

被検体NO.09 - ステフドールでございますわ~!


今回は男の心情の変化のお話でございました!

ハカセに魅入られてしまった男は今後どうなるのか!?

彼らは今後、どんな物語を見せてくれるのか、ぜひお楽しみくださいませ。


投稿頻度は不定期となりますが、今後もお楽しみにしていただければ幸いです。

ではまた次回、また遊ぼうね~!

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