表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第六章 最後の抵抗、新たな支配

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/89

第八十五話 第1艦隊出陣

カイが「零五の奇跡」を再現した時より、四ヶ月ほど前に遡る。


・ ・ ・


軍務省の重厚な扉が静かに閉じた。

指令を受け取ったシズクとトウガは、

無言のまま長い廊下を並んで歩く。


磨き上げられた床に二人の影が伸びていた。

帝都の冷たい空気が、これから始まる遠征の重さを予感させる。


入口の階段を抜けると、地下駐車場へ続くスロープが現れる。

そこにはすでに二台の黒いリムジンが待機していた。


シズクは足を止め、横目でトウガを睨むように見上げた。


「中途半端な気持ちで当たるな。

 我々の戦力を削ぐための策である可能性もある」


その声音は低く、張り詰めていた。


トウガは鼻で笑い、肩をすくめる。


「ふん、舐めるな。

 やるからには全力で虫どもを叩き潰してやる」


不敵な笑みを浮かべると、リムジンへ向かって歩き出す。

乗り込む直前、振り返りざまに言い放った。


「シズク、お前こそモタモタするな。

 恐竜どもをさっさと駆逐して戻ってこい」


シズクは表情ひとつ変えずに答える。


「……あぁ。」


そのまま別のリムジンへ乗り込んだ。


エンジン音が重く響き、

二台の車はそれぞれの戦場へ向けて別方向へ走り去った。


・ ・ ・


帝都・アジュール邸。


執務室の扉を開けると、イレーネがすでに待ち構えている。

彼女は椅子に腰掛け、足をぶらぶらさせていたが、

シズクの姿を認めると、すぐに直立して見つめる。


「シズク様ぁ。

 聞きましたよぉ。

 これからメクト・パクス討伐に向かわれるんですねぇ」


シズクは無駄な感情を見せずに頷いた。


「そうだ。」


イレーネは肩をすくめ、わざとらしくため息をつく。


「メクトですかぁ。強敵ですねぇ。

 赤青の内乱で帝国が弱ったところを、

 ずいぶん深くまで攻め込んできてますよぉ」


「敵の戦力は調べてあるか?」


「もちろんですぅ」


イレーネは端末を操作し、星図を投影する。


「ニャドロット星系、ニャロンメラン星系、ペニャンドーク星系。

 この三つがメクトに占領されていますぅ。

 星系要塞は完全制圧済みで、ほぼ領有状態ですねぇ」


「戦力は?」


「はい、それぞれに第1狩猟艦隊、第2狩猟艦隊、

 第3狩猟艦隊が駐留してますぅ。


 さらに各狩猟艦隊には第1守護艦隊、第2守護艦隊、

 第3守護艦隊が付き従ってますぅ」


シズクは静かに頷いた。


「狩猟艦隊が我らの主力艦隊相当、守護艦隊が下部主力艦隊相当だったな」


「はぁい、その通りですぅ」


「我らは主力艦隊が二艦隊構成だ。

 各星系守備艦隊よりは強力だが……

 星系に攻め込んだ時点で、他の星系から援軍が向かう。

 そうなれば形勢は一気に逆転する」


「はぁい、二十日ほどで到着するでしょうねぇ。

 なので相当急ぐ必要がありますよぉ。」


シズクは腕を組み、目を細めた。


「急ぐと言っても、メクトはそもそも我らより強国だ。

 艦隊一つとっても我らより強力。

 よほど上手くやらねば、二十日で敵艦隊を打ち破るのは至難の業だ」


イレーネはにこりと笑う。


「いーえ、シズク様なら余裕ですよぉ」


シズクは首を横に振った。


「何を言っている。

 私は行かんぞ」


イレーネの笑顔が固まる。


「……え?

 ですが、第1艦隊に討伐指令が出ていますがぁ?

 さすがに無視はまずいですよぉ?」


「無視をするとも言っておらん。

 

 私はウララ陛下の救出を第一優先としている。

 それにラートリーの命令に従うのも癪だ。


 お前が私に化けて、第1艦隊を率いて向かえ」


「え?えぇぇ!?

 わ、私は謹慎中ですよぉ!?」


イレーネの動揺を意に介さず、シズクは淡々と告げる。


「ちょうど良いではないか。

 自分の艦隊を持っていたら、第1艦隊を代理で率いることもできまい」


イレーネが困り切った顔で額の汗を拭きながら猛反論する。


「えぇ!?本気ですかぁ!?

 私はぁシズク様ほど上手く出来ませんよぉ!!」


シズクが少しだけ意地悪な笑みをこぼしつつ断定する。


「私と同じ方法、同じ効率である必要はない。

 お前ならどのみち奴らをいなせる。

 部下で出来る仕事を私が自ら実施する意義はない」


シズクはイレーネを真っ直ぐ見つめた。


「イレーネ。お前が行け」


「そ、そんなご無体なぁ……」


最後の最後まで抵抗を試みるが……。


「わがままを言うな。

 その口調さえ誤魔化せば、お前なら十分に第1艦隊を扱える。

 メクトを各個撃破することも可能だ」


シズクは机に手を置き、低く続けた。


「私はその間にウララ陛下を救い出す算段を立てる。

 ラートリーが油断している今こそ、好機だ」


イレーネはしばらく黙り込み、やがて肩を落とした。


「……上手く出来なくても怒らないでくださいよぉ」


「提督室に籠れば、誰にも気づかれん。

 第1艦隊の参謀たちは私に絶対の忠誠を誓った者たちだ。

 お前を隠し、上手く運用することもできる。

 

 もし失敗したとしても私が何とでも揉み消す」


シズクは静かに言った。


「今は、お前しか信用できる者がいない。頼む。」


イレーネは観念したように息を吐いた。


「……わかりましたぁ。全力を尽くしますぅ。

 やるからには失敗はしないようにしますよぉ。


 はぁ……どうしてこうなるぅ……?」


・ ・ ・


十日の準備期間を終え、第1艦隊と第4艦隊はニャニャーンから出陣した。


第1艦隊の幹部、そして第4艦隊のアルシア提督のみが、

提督に座る者の真実を知る。


第1艦隊はシズクではなくイレーネが率いている。

シズクの厳命によって、イレーネの采配をシズクによるものとして、

アルシアも絶対的にイレーネに従うように言われている。


敵は一筋縄ではいかないメクト・パクスの主力艦隊。


イレーネは紅茶を片手に優雅に焦っていた。


(はぁ、気が重い。

 私がぁ、シズク様と同じ戦果なんて出せませんよぉ!)


ゆっくりと紅茶をすする。

傍目には全く焦りも見えない。


シズクがイレーネに全権を委ねたのは、信頼ゆえだった。

あの口調さえ隠せば、イレーネは第1艦隊を完全に掌握できる。

そしてシズク自身は、ウララ陛下救出に向けて動き始めた。

挿絵(By みてみん)

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


今回は「零五の奇跡」の四ヶ月前のエピソードでしたね!

トウガさんの奇跡演出とは同時世界線になります。


そして、今回の最大の衝撃は、シズクさんが「私はメクトには行かんぞ」って言ったことですね!

「お前が私に化けて、第1艦隊を率いて向かえ」って、イレーネさんへの無茶振りが最高でした!

イレーネさんの「え?えぇぇ!?わ、私は謹慎中ですよぉ!?」って動揺、めちゃくちゃ可愛かったです!

でも、シズクさんの「今は、お前しか信用できる者がいない。頼む。」って一言が、シズクさんらしくなくて、すごく重みがありましたね。


でもこれがシズクさんにとっては最大の攻め口だったわけです。

だってラートリーさん達は、シズクさんを最前線に送り込めば、ウララさん救出の諜報にかまってられないっておもってますよね。

これ完全に油断ですから!さすがシズクさん、敢えて出陣させられる振りをして影武者を立てちゃいました。これもシズクさんの陣営の層が厚いからですよね。

自分の代わりになる部下がいる!強いです!


ちなみにイレーネさんが「どうしてこうなるぅ……?」って嘆きながらも観念するのが、本当に愛されキャラですね。

次回も、絶対見逃せませんよ~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ