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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第六章 最後の抵抗、新たな支配

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第七十七話 対抗策

ラートリー邸宅、書斎。

夜の静けさの中、ラートリーは星図を眺めていた。


扉が開き、セリオンが入室する。


「父上、お時間よろしいでしょうか」


「ああ、構わん。どうした」


セリオンは真剣な表情で報告を始めた。


「シズクとトウガが、諜報を強めております」


ラートリーは星図を見つめたまま答えた。


「ほう」


「このままでは、いずれウララ陛下の居場所も、

 我らの思惑も暴かれるでしょう」


少し間を開け、セリオンは続けた。


「父上、

 あの者らは飼いならすことはできないと思います。

 やはりいっそのこと、二人の力を奪うべきではないでしょうか」


そこまで聞いて、ラートリーは振り返った。


「力を奪う?」


「はい。領地を削る、艦隊を削減する、

 あるいは爵位も奪ってしまえば……」


遮るようにラートリーは笑う。


「ふははは」


「父上……?」


ラートリーは首を横に振って

セリオンを見つめる。


「力を奪う?論外だ。

 俺は奴らを必ず飼いならす」


「……」


「しかし、確かにいつまでも諜報され続けるのは煩わしいな。

 ならばそんな暇を与えなければ良い」


ラートリーは星図を指差した。


「セリオン、奴らの真価を見せてやろう。


 この赤青の内乱で、帝国は乱れた。

 その隙をついて、二つの勢力が国境を侵し続けている」


星図に、二つの国家が浮かび上がった。


「メクト・パクス統制府と、ジソリアン同盟列藩国だ」


「はい、承知しております」


ラートリーはその二つの国家を順に指さして続けた。


「あいつらを奴らにぶつけよう。

 余計なことをしている暇すらなくなる」


「シズクとトウガを……」


「そうだ。シズクはメクト、トウガはジソリアンに当てる。

 この両国は銀河統一において、真っ先に障害になる。

 諜報にかまけるほど暇をしているなら任務を与えるまでだ」


ラートリーは星図を拡大した。


「まず、メクト・パクス統制府だ」


星図に、巨大な恐竜型の種族のホログラフが表示された。


「恐竜型爬虫人類による民主制国家。

 文化的には洗練されているが、種族としての性格は荒い。

 ニャーンを含めた異星人が捕食被害に遭うこともある」


セリオンは眉をひそめた。


「捕食……汚らわしい奴らです。

 諸国も奴らに対する反感は強いのですが……」


「うむ、奴らにはそれを力で押さえつけるだけの、

 技術力と国力がある。

 今まで大きな問題にはなっていない」


ラートリーは数値を表示させた。


「元より国力は神聖帝国の1.3倍。

 弱り切った今では倍近くの差があるかもしれん。


 神聖帝国の弱体化を見た統制府は、

 過去の些事に難癖をつけて、

 半年前、内乱中の神聖帝国に宣戦布告した」


星図の国境線が赤く染まっていく。


「これが現在国境を侵されている地域だ」


「厄介ですね」


「そうだ。

 だが、シズクならば奴らにも対処できる。

 あいつも常々メクト・パクスの動きは気にしているはずだ。

 嫌々やったとしても、誰よりも戦果を挙げるだろう。


 あのメクト・パクス相手では、あのシズクも全能力を注力せざるを得ない」


ラートリーは星図を切り替えた。


「次に、ジソリアン同盟列藩国だ」


星図に、虫型の種族のホログラフが表示された。


「虫人類による、名誉を重んじる戦士集団。

 軍事委員制を敷いている。

 彼らは純粋な戦闘民族で、略奪を繰り返す。

 過去二百年、一時の例外の期間を除いて、

 神聖帝国とは争い続けている」


「奴らは話が通じませんからね」


ラートリーも頷く。


「そうだ。

 文化が違いすぎて、外交での解決は不可能だ。

 奴らの考えは理解しがたい。

 戦って追い払うしかない」


セリオンは理解した。


「なるほど……それでトウガを」


「そうだ。トウガは突破力は銀河一だ。

 ジソリアンとの戦いは、奴に相応しい。


 そしてジソリアンは叩いても叩いても湧く。

 まるで害虫のように……だ。


 こいつらが相手ではトウガとて全力を注がねばなるまい」


「しばらく時間稼ぎをする間に、我らが外戚となって、

 帝国内の支配体制を盤石にすると」


「そうだ。

 銀河統一を為すためには、

 我らが帝国の中心に立ち、

 シズクやトウガを使いこなさねばならん」


ラートリーは神聖女帝と元帥の連名での命令書を作成した。


「メクト・パクスには、第1艦隊シズク、第4艦隊アルシアを差し向ける。

 占領された国境星系の奪取を命じる」


続いてもう一通。


「ジソリアンには、第2艦隊トウガ、第5艦隊カイを差し向ける。

 国境内にいるジソリアン艦隊を駆逐を命じる」


セリオンは深く一礼した。


「承知いたしました。すぐに命令を発します」


「各方面軍には各々の麾下艦隊に対する裁量権も与えよう。

 赤青が今度は外敵に向く」


「父上、さすがにそれは……。

 我ら元帥府に盾突く恐れも」


ラートリーは微笑んだ。


「お前もそう思うか?ならば大丈夫だ。

 シズクは深読みする。


 反撃できると思う状況を俺がそう簡単に作るとは考えない」


「深読み……?

 罠だと考えると?」


「そうだ」


さらに楽しそうにラートリーが続ける。


「あいつの悪い癖だ。

 一度認めてしまうと、過剰に相手を評価する。


 俺の罠を警戒しつつ、前線に出向くだろう。

 そうすれば、奴らは戦わずにはいられない


 メクト・パクスやジソリアンはそう甘くない」


「なるほど。

 ですがトウガ公はいかがでしょうか?


 あの方は単純です。

 今が我らを打倒する好機と短絡的に考えませんか?」


「あいつは単純ゆえに、陛下を押さえている限りは、

 下手な行動はとらん」


ようやくセリオンも警戒を解く。


「嫌々ながらもご両名は我らに使われると……」


「これで、奴らは諜報どころではなくなるだろう。

 銀河統一には奴らの力が欠かせぬ。


 セリオン。

 その間にウララとの婚姻の手続きを進めよ。

 多くの者が反対するだろう。

 調略は骨が折れるぞ」


「は、時間がかかりますが、やり切ります。

 お任せください。」


・ ・ ・


後日、シズクとトウガは辺境討伐の任を受けた。


指令を受領した後、二人は退出し、

その廊下で並び歩いている。


「シズク、この状況なら軍を動かせる。

 ラートリーを討つチャンスじゃないか?」


シズクはトウガの方を向かずに返事をした。


「単純な奴め。ラートリーが誘っていると思わんのか?

 奴はこんな状況を何の対策もなしに作らん。


 何らかの対策は打っているはずだ。

 迂闊には動くな。調べ上げてから動け」


「そんなものか?」


「それに陛下は奴の手中だ。

 お前が下手をしたら、陛下に危険が及ぶやもしれんぞ」


「……それもそうか。

 俺はあいつのために働くのはまっぴらごめんだ。


 陛下のために働くと思うことにするか」


「中途半端な気持ちで当たるな。

 私達の力を削ぐ目的もあるやもしれんぞ」


「ふん、舐めるな。

 やるからには全力で虫どもをぶちのめしてやる」


シズクはトウガを一瞥すると黙って歩き続けた。

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。

第七十七話「対抗策」、今回はラートリーさんの完璧な戦略が描かれました!

セリオンくんが「シズクとトウガの力を奪うべき」って提案したのに、ラートリーさんは「論外だ。俺は奴らを必ず飼いならす」って断言しました。

これってラートリーさんにとってシズクさんとトウガさんはココを慕う同志だからですよね。

セリオン君には到底理解できませんね。


そして、「諜報にかまけるほど暇をしているなら任務を与えるまでだ」って、シズクさんとトウガさんに外敵討伐を命じるとか、めちゃくちゃ賢いです!

メクト・パクス統制府(恐竜型爬虫人類)とジソリアン同盟列藩国(虫人類)、どちらも強敵ですね!

しかも、ラートリーさんは「シズクでさえ、メクト・パクス相手では全能力を注力せざるを得ない」「トウガとて全力を注がねばなるまい」って、完全に二人の戦力を見切ってるんです!

さらに、トウガさんが「ラートリーを討つチャンスじゃないか?」って言ったのに、シズクさんは「ラートリーが誘っていると思わんのか?」って冷静に返してるのが、シズクさんらしいです!

でも、結局、二人とも外敵討伐に全力を注がざるを得ないんですよね…。

ラートリーさんは完全に二人の性格を理解して転がしてます。

その間に、セリオンくんは「ウララとの婚姻の手続き」を進めるとか、ラートリーさんの策、完璧すぎます…。

次回も、絶対見逃せませんよ~!

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