表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第六章 最後の抵抗、新たな支配

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/81

第七十六話 盲点

シズク陣営は、

ラートリーの思惑が掴みきれていなかった。


極秘裏にウララの居場所は分かり、

身の安全も確認できた。


だが、逆探知されて隠し場所を変えられるわけにはいかない。


そのため、諜報は極めて僅かに限っている。

だからこそ、次の一手を探りかねていた。


シズクは一人、執務室で考え込んでいた。


(ラートリーほどの男だ。

 どこかでウララ陛下を廃して、ニャーリ朝を終わらせ、

 ヴァーダント朝神聖帝国を作るに違いない)


彼女は星図を見つめた。


(まずは元帥の政治実績を積ませて、

 逆にウララ陛下の無能感を演出するだろう。


 陛下はココ先帝陛下の血脈なので、人気は絶大。

 それを落とすには、何度も大失態を起こさせることだ)


シズクは拳を握りしめた。


(例えば、ウララ陛下が原因の反乱と、

 それを抑える元帥府という構図。


 その反乱の種として、

 私とトウガが生かされている……。


 そう考えるのが妥当だ)


彼女は深く息を吸った。


(だが、それだけか?

 私がそんな安っぽい挑発には乗らん。

 それくらいわかるはずだ。


 ラートリーは、もっと深い策を持っている。


 トウガか?


 あいつを導線にして、私を巻き込む気か?

 トウガはエリスのようには行かん。)


眉間に指を当て、考え込んだ。


(いや、待て。あいつは陛下に対する想いが強すぎる。


 もし、ウララ陛下を使ってトウガを追い詰めたら――

 一体、どうなる?

 

 エリスよりも、脆く、そして激しく狂うのではないか?


 あの馬鹿は……)


その日の夕方、シズクの私邸。

シズクとイレーネの定時連絡という名の謀略会議。


だが、今回はもう一人、客がいた。

レオン・クリムゾン。

トウガの四男、14歳の少年だった。


これはイレーネから、

レオンとバディになっていることを聞いた、

シズクの命令だった。


クリムゾンの若き英才ということだが、

子供ゆえに扱いやすいと判断した。


クリムゾン側の懐に入る楔として。


もちろん、最高機密を話す気はないが、

バディ感を演出するためにある程度は、

レオンとも情報共有することは織り込み済みだ。


その情報はトウガにも共有されるだろう。

なので、ウララについては「捜索中」としている。


扉が開き、レオンが入室した。

彼は緊張していた。

鬼と名高いシズク・アジュールとの初対面。


「レオン・クリムゾンです。

 お初にお目にかかります、シズク女公」


レオンは深く一礼した。


シズクは無表情のまま答えた。


「シズク・アジュールだ。

 イレーネから聞いている。座れ」


レオンは緊張しながら席についた。

イレーネは微笑んでいる。


「レオンさん、緊張しすぎですよぉ」


「……すみません」


シズクは静かに尋ねた。


「レオン、お前はミオリと仲良くしているか?」


レオンは少し驚いた。


「はい、毎日一緒に遊んでいます」


シズクの表情が、わずかに和らいだ。


「そうか。あの子は大人に囲まれていて、友達がいない。

 仲良くしてやってほしい」


「はい」


シズクは続けた。


「ミオリは、日常どう過ごしている?」


レオンは答えた。


「元気です。父上にとても懐いていますし、

 カイ兄様とも遊んでいます」


穏やかに見つめるシズクに少し警戒が解ける。


「父上は子供と遊ぶのが大好きですから。」


「そうか……、あの子は好き嫌いが多い。

 きちんとバランスよく食べているか?」


「はい、クリムゾンはその点は厳しいので、

 文句を言いながらも残さず食べています」


「それは良いな。

 ミオリはな……ミャルティカが好きなんだ。

 後でクリムゾンに届けさせよう」


「ミャルティカ?トロピカルフルーツの?」


「そうだ、出してやると際限なく食べる。

 少しずつだしてやってくれ」


「はい、父上と母上にはお伝えしておきます」


シズクはあまり感情を出していないが、

本心から心配しているのが見て取れた。

それはクリムゾンとは少し雰囲気が違う、

母親のそれだった。


レオンの中で、少しだけシズクの印象が変わった。


(シズク女公……冷酷だと聞いていたが、

 ミオリのことは本当に心配しているんだな)


シズクは話題を変えた。


「では、本題に入る」


イレーネが資料を広げた。


「はい、シズク様。現在の状況ですがぁ……」


シズクとイレーネは、

ウララ廃位阻止について議論を交わし始めた。


「シズク、トウガ陣営で地雷となりそうな者のリストです」


「ふむ。こいつらは事前に抑えておく必要があるな」


「治安悪化地域の先回り治安対策も必要ですぅ」


「そうだな。

 ラートリーに先手を打たれるわけにはいかん」


レオンは、二人の会話を黙って聞いていた。

そして、ふと疑問が浮かんだ。


「あの……」


シズクとイレーネが振り返る。


「何だ、レオン」


レオンは少し躊躇したが、口を開いた。


「お二方は反乱による陛下の失態をお気になさっております。

 ですが、逆にウララ陛下を取り込み、

 力をつけることは考えられないのでしょうか?」


シズクとイレーネは、少し驚いた表情を浮かべた。


「取り込む……?」


レオンは続けた。


「例えば……セリオン侯とウララ陛下の婚姻、外戚化は?」


一瞬、沈黙が訪れた。

シズクは冷静に答えた。


「それはない。

 外戚化は一定の効果があるが、

 私やトウガは奴の権威には従わぬ。

 それならば陛下を……、

 私やトウガと共に滅ぼして、

 ヴァーダント朝を作ることの方が、

 ラートリーにとって盤石の体制となるだろう」


イレーネも頷いた。


「そうですねぇ。外戚化よりも、

 最終的な手間と安定はぁ、

 直接皇帝になる方が確実ですぅ」


レオンは納得したように頷いた。


「そうですか……。


 もし廃位であれば父上やシズク女公が徹底抗戦するはずです。


 ですが、皇配としてセリオン候が公武合体すれば

 父上やシズク女公を使う立場になります。

 例え父上や女公が気概として、従うつもりがなくても、

 制度として従わざるを得ないのではないでしょうか」


だが、シズクとイレーネは、内心ハッとしていた。


(外戚化……そんな俗な方法を取るとは思わなかったが……)


シズクは心の中で呟いた。


(最悪、そこまでラートリーと皇室が密着したら、

 私やトウガも臣従せざるを得ないのではないか……?

 

 叛意は持ち続けるだろうが、大義がない間は我らを

 使い潰せる。


 その間に絶対的な立場と統一帝国を作り、

 セリオンの代で完成させる……

 それは十分考えられる)


イレーネも同じことを考えていた。


(レオンさんの幼稚な考え……

 だが、その可能性を完全に否定できない……)


シズクは表情を変えずに言った。


「レオン、良い視点だ。

 その可能性も念頭に置いておく」


レオンは少し嬉しそうに頷いた。


「ありがとうございます」


会議が終わり、レオンが退室した後。

シズクとイレーネは顔を見合わせた。


「イレーネ……」


「はい、シズク様……」


「レオンの指摘、無視できないぞ。

 ラートリーは我らを排除すると決め込んでいた。


 だが、奴は我らを従わせるつもりだとしたら。」


「えぇ……外戚化の可能性、考え直す必要がありますねぇ」


「実は直接ラートリーからそれに関わる話を聞いた。

 七縦七擒してでも、この私を従わせるとな。

 不愉快すぎて、頭から消し去っていた」


シズクは拳を握りしめた。


「もし、セリオンとウララ陛下が婚姻すれば……

 ラートリーは皇室と完全に結びつく。

 その時、我らは……」


イレーネは静かに答えた。


「表面上は臣従せざるを得なくなりますぅ」


シズクは星図を見つめた。


「方針を見直す。

 ウララ陛下への接触を優先する」


「はい……ですが、慎重にですぅ」


「分かっている。

 再び隠されては困る。


 時間をかけて、まずは陛下のお傍に足がかりを作る」


シズクは深く息を吸った。


(ラートリー……お前の考えが読めん。

 気持ちの悪い奴だ)

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。

第七十六話「盲点」、今回はレオンくんの鋭さが光りました!

シズクさんがミオリちゃんのことを心配してるシーン、めちゃくちゃ可愛かったです!

「あの子は好き嫌いが多い。きちんとバランスよく食べているか?」とか、「ミャルティカが好きなんだ。少しずつだしてやってくれ」とか、完全に母親ですよね!

レオンくんも「シズク女公……冷酷だと聞いていたが、ミオリのことは本当に心配しているんだな」って思ってて、シズクさんの印象が変わったのが良かったです!

でも、今回の一番の衝撃は、レオンくんの鋭い指摘でした!

「セリオン候とウララ陛下の婚姻、外戚化は?」って、14歳の少年が言うセリフじゃないですよね!

シズクさんとイレーネさんは「それはない」って最初は否定したけど、内心ハッとしてるんですよね。

「外戚化……そんな俗な方法を取るとは思わなかったが……」って、完全に盲点だったんです!

そして、シズクさんが「実は直接ラートリーからそれに関わる話を聞いた。不愉快すぎて、頭から消し去っていた」って言ってるのが、すごく重要ですね!

シズクさん、ラートリーさんから直接聞いてたのに、あまりにも不愉快すぎて無視してたんですね…。

次回も、絶対見逃せませんよ~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ