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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第六章 最後の抵抗、新たな支配

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第七十五話 瑣末な抵抗

囚われを悟ったウララ。

彼女は、なんとかしてシズクとトウガに、

コンタクトを取ろうと考えた。


だが、その手段が思い浮かばない。


誰が敵で誰が味方かもわからない。

いや、実際は自身の周りは全員敵と見た方が正しい。


ウララは窓の外を見つめた。


(どうすれば……?)


そこで、ウララは対抗策を思いついた。

一個一個は瑣末な行動だが、

それが積もればあるいは――


・ ・ ・


ウララは、担当官に申し出た。


「ずっと屋敷に篭りきりで気が滅入ります。

 外出したいのですが……」


担当官は即座に答えた。


「申し訳ございません、陛下。

 それは、セキュリティ上……」


「でも、せめて少しだけでも……」


「お気持ちは分かりますが……」


ウララは諦めなかった。


翌日も、その翌日も、同じ要求を繰り返した。

担当官は困り果て、ついにセリオンに報告を上げた。


「陛下が、外出を強く希望されておりまして……」


セリオンは少し考え込んだ。


「病気になられても困るな。限定的に許可する」


「ありがとうございます」


セリオンは条件を提示した。


「リムジンでの惑星内の周遊のみ。

 降車は原則禁止、こちらが指定した場所でのみ

 可とします。


 外からは中が見えないガラス付きの、

 完全防音リムジンを使って極秘裏に周遊すること。


 特務官ルチアとマイケルを同乗させること。


 これが条件だ」


「承知いたしました」


・ ・ ・


ウララは、この条件を喜んで受け入れた。


リムジンに乗り込むと、外の景色が見えた。

平和そうな街並み。

人々が笑顔で歩いている。


ウララは嬉しそうに窓の外を見つめた。


「平和……本当に平和なのね」


特務官ルチアが微笑んだ。


「はい、陛下。

 内乱は完全に終結しております」


ウララは様々な質問をした。


「民衆の生活は、どう?」


「安定しております。

 元帥府の統治により、治安も回復しました」


「戦後の復興は?」


「順調に進んでおります」


ウララは安心した表情を浮かべた。


「そう……良かった」


そして、何気なく尋ねた。


「ところで、この星はどこなの?」


ルチアは即座に答えた。


「それは、セキュリティ上申し上げられません」


ウララは少し残念そうに頷いた。


「そう……では、誰が領主なの?」


ルチアは少し考え込んだ。


(これくらいなら、大丈夫だろう)


「陛下の直轄地でございます」


ウララは頷いた。


(皇帝直轄地……銀河の各所に点在しているわね。

 第二皇子以降が政治から遠ざけられ、

 隠遁生活するために建てられた宮殿が多い。

 この200年で何万ヶ所と建設されているから、

 直轄地というだけでは、特定できない……)


ウララは窓の外を見つめた。

周りは田舎で、どこまでも田園地帯が広がり、

軍事関係の施設すらない。


むしろラートリーの息がかかっていない地域のようだった。


(だからこそ、シズク女公も見つけられないのね)


ウララは微笑んだ。


「ここはのどかね」


ルチアは嬉しそうに答えた。


「えぇ、私はこの星の出身ですが、

 本当に良いところです」


ウララの瞳が一瞬だけ輝いたようだったが、

その話題をサラッと流した。


「そうなのね」


ルチアもマイケルも、

自分の失言に気づいていなかった。


そして、何気ない会話をしながら、

外出は終了した。


・ ・ ・


離宮に戻ったウララは、すぐに行動した。

皇帝権限で宮内庁軍人の情報にアクセスする。


ルチアの情報を確認すると――


「辺境惑星ニャーレンのストーニャン区出身……」


ウララは小さく微笑んだ。


(これで、居場所が分かった)


・ ・ ・


それから1週間後、セリオンが面会に来た。

ウララは寂しそうに言った。


「セリオン大将……話し相手がいないので、

 何かを飼ってお友達にしたいのですが……。

 そうね、小鳥が良いわ。」


セリオンは少し驚いた。


(鳥……?)


彼はウララのことを軽く見ていた。


(未来の妻のためにご機嫌を取るか)


「構いませんよ、陛下。

 可愛い小鳥をすぐにご用意いたします」


ウララは喜んだ。


「本当ですか!ありがとうございます」


・ ・ ・


その夜、ウララは準備を始めた。

五大将のみ知るパスワードで暗号化された映像データを作成する。


内容は、自分の所在地を伝えるメッセージ。


「私はニャーレン惑星のストーニャン区近郊の離宮に幽閉されています。

 シズク女公、トウガ公、助けてください」


そして、パスワードのかかっていない映像データも作成した。


「私は神聖女帝ウララ・ニャーリです。

 これをシズク大将の軍に届ければ、

 千金を褒美に与えます」


ウララは、この二つのデータを保存した

ホログラフィックメモリーを、

鳥の足につけた。


そして、明け方、窓を開けて鳥を逃した。


「お願い……届いて……」


・ ・ ・


数日後、ニャーレン惑星の農村。


一人の農民が、鳥を保護した。


「なんだ、この鳥……足に何かついてるぞ」


ホログラフィックメモリーを再生すると、

ウララの映像が映し出された。


「私は神聖女帝ウララ・ニャーリです。

 これをシズク大将の軍に届ければ、

 千金を褒美に与えます」


農民は驚いた。


「陛下……!?」


民衆には英雄女帝ココの忘れ形見である、

女帝ウララの人気は凄まじい。


農民は、すぐにビデオメッセージに従った。

シズク派の軍人に正直に渡し、千金を得た。


・ ・ ・


そして、ビデオメッセージはシズクの元に届けられた。

シズクは、暗号化された映像を開く。


パスワードを入力すると、ウララの姿が映し出された。


「私はニャーレン惑星のストーニャン区近郊の離宮に幽閉されています。

 シズク女公、トウガ公、助けてください」


シズクは、無表情のまま映像を見つめた。

だが、その目には、静かな怒りが宿っていた。


「ウララ陛下……ここまでするほど追い詰められているのか」


(しかし、このような形であれほど苦労した陛下の所在が知れた。


 せっかくのチャンスだ。

 所在が分かったことがゴールではない。

 むしろ、ここからお会いすることの方が難しく、

 工作に時間と手間を要するだろう。


 真偽の確認を徹底して、

 一度しか会えないかもしれんチャンスを

 最大限活かせるタイミングで接触せねばならん。


 トウガにはしばらく伝えるわけにはいかん。


 あのラートリーが最も油断するタイミングで、

 陛下にお会いし勅命をいただく)


・ ・ ・


後日


「あの……セリオン」


「どうなさいましたか?陛下」


「申し訳ありません。

 扱いに慣れていなかったせいか、

 頂いた小鳥を逃がしてしまいました……」


見透かすような目でウララを見つめるセリオン。

だが、力なくも悲しそう俯くウララを見て、

内心は鼻で笑う。


(鳥一羽すら、懐けられぬか。

 神聖女帝といえども堕ちたものだ)


「それは残念な事でした。

 代わりの鳥をご用意いたします」


「いえ、セリオン。鳥は逃げます。

 子犬をください。

 私にも懐いてくれる子犬を……」


(……犬がお前の唯一の騎士か。哀れだな……)


「はい、かしこまりました。

 可愛い子犬をご用意いたします」


「ありがとう、セリオン」


そういうとセリオンは踵を返して去っていった。


(父の命だ、あれを妻とせねばならん……)

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。

第七十五話「瑣末な抵抗」、今回はウララ陛下の賢さが光りました!

ウララ陛下、囚われの身でありながら、諦めずに抵抗してるのがすごいです!

外出を何度もお願いして、やっと許可を得て、そこで何気ない会話から特務官ルチアさんの出身地を聞き出すとか、めちゃくちゃ賢いですよね!

そして、宮内庁軍人の情報にアクセスして、自分の居場所が「ニャーレン惑星のストーニャン区」だと特定したのも、本当に頭いいです!

さらに、小鳥を飼いたいってセリオンくんにお願いして、その小鳥に暗号化されたメッセージを付けて逃がすとか、完璧な作戦ですよね!

しかも、二つのデータを用意して、一つは「千金の褒美」で農民を動かし、もう一つは暗号化された真のメッセージで、シズクさんにだけ届くようにするとか、本当に周到です!

そして、シズクさんがメッセージを受け取ったシーン、すごく緊張感がありました!

シズクさんの「一度しか会えないかもしれんチャンスを最大限活かせるタイミングで接触せねばならん」って、本当に慎重ですね。

そして、「トウガにはしばらく伝えるわけにはいかん」って、シズクさん、一人で動くつもりなんですね…。

次回も、絶対見逃せませんよ~!

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