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ニャニャーン大乱記  作者: ひろの
第六章 最後の抵抗、新たな支配

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第七十四話 囚われの女帝

隠蔽された離宮、ウララの私室。

窓の外には、いつもと変わらぬ美しい庭園が広がっていた。


だが、ウララの表情は晴れやかだった。


侍女が報告書を手に入室する。


「陛下、元帥府からの報告でございます」


「読んで」


侍女は報告書を読み上げた。


「元帥ラートリー・ヴァーダント公爵の指揮のもと、

 帝国全土において停戦が成立いたしました。

 赤青内乱は完全に終結し、民衆は平和を取り戻しております」


ウララは目を輝かせた。


「本当に!?」


「はい、陛下。

 セルドニャ、ミャルナ、ニャレット、ニャーレン……

 全ての星系で戦闘が停止しております」


ウララは立ち上がった。


「ラートリー公……やってくれたのね!」


「はい、シズク女公、トウガ公も元通り序列第一位と第二位を

 維持し、和解の上、元帥府に名を連ねております」


彼女は窓の外を見つめた。


「これで、もう誰も傷つかない。

 シズク女公とトウガ公も、和解できたのね。

 良かった。

 ラートリー公も含めたこの三人には、

 これからも帝国を支え続けてもらいたいわ」


侍女は微笑んだ。


「はい、陛下。元帥府の力は偉大でございます」


ウララは心から安堵した。


(良かった……本当に良かった)


それから数日が経った。

ウララは、ふと気づいた。


「ねえ、そろそろ帝都セレニャールに戻れるかしら?」


侍女は困ったような表情を浮かべた。


「陛下……それは、まだ……」


「まだ?でも、もう戦いは終わったのでしょう?」


「はい、ですが……元帥府からは、まだ危険が残っているとの報告が……」


ウララは首を傾げた。


「危険?どんな?」


侍女は言葉を濁した。


「それは……詳細は、元帥府からの正式な報告を……」


ウララは不安を感じた。


(おかしい……戦いは終わったのに、なぜ帝都に戻れないの?)


さらに数日が経った。

ウララは、別の報告書を読んでいた。


「元帥府、正式設立……。

 第1艦隊、第2艦隊を統合した規模の元帥艦隊を新設……。

 提督はラートリー元帥……。

 第3艦隊提督には新たにセリオン大将が就任……」


ウララは眉をひそめた。


(元帥府……確か、有事の際の臨時組織だったはず。

 戦いが終わったのなら、解散されるべきでは……?

 なぜラートリー公の軍権が強化されているの?)


彼女は侍女に尋ねた。


「元帥府は、いつ解散されるの?」


侍女は戸惑った表情を浮かべた。


「陛下……それは……」


「答えて」


侍女は小さな声で答えた。


「元帥府は……当面、存続するとのことでございます」


「当面?」


「はい……新たな法により、元帥府は帝国の恒久的な組織として……

 大政奉還されるまでは、軍事政権を維持致します」


ウララは驚いた。


「恒久的……?」


(そんな……元帥府は有事の際の臨時政府のはず。

 エルウィン元帥の時も、有事が終わればすぐに解散されたと聞いていたのに)


その夜、ウララは一人で考え込んでいた。

窓の外を見つめながら、様々な疑問が浮かんでくる。


(なぜ、私は帝都に戻れないの?

 なぜ、元帥府は解散されないの?

 なぜ、元帥艦隊はあんなに巨大なの?)


彼女は報告書を何度も読み返した。


「元帥府の権限……全軍の統率、軍事予算の決定、

 軍人事の掌握……」


ウララは息を呑んだ。


ニャニャーン神聖帝国は軍国主義国家であり、

政権内における軍事の比重が重い。

軍関連を統括する元帥府はすなわち――

政府その物と言える。


(これは……私の権限よりも……)


翌朝、廷臣の一人がウララに謁見を求めてきた。


「陛下、ご機嫌麗しゅう」


「ええ。何か用?」


廷臣は恭しく頭を下げた。


「はい、実は……元帥府からの要請でございまして……」


「元帥府から?」


「はい。今後、陛下へのご報告は、全て元帥府を経由して行うよう……」


ウララは眉をひそめた。


「どういうこと?」


廷臣は困ったような表情を浮かべた。


「つまり……陛下への直接のご報告は、控えるようにとのことで……」


「私に直接報告してはいけない……?」


「はい……元帥府が、情報を整理した上で、陛下にお伝えする方が……」


ウララは立ち上がった。


「待って。それはおかしいわ。

 私は女帝よ。廷臣が直接報告するのは当然のことでしょう?」


廷臣は頭を下げたまま答えた。


「申し訳ございません、陛下。

 ですが、これは元帥府の……いえ、元帥閣下のご命令でございまして……」


ウララは言葉を失った。


(元帥の命令……?

 それは、私の命令よりも優先されるということ……?)


廷臣が退室した後、ウララは一人、呟いた。


「おかしい……何かがおかしい……」


彼女は窓の外を見つめた。

美しい庭園。

だが、それは彼女を閉じ込める牢獄にも見えた。


(私は……囚われているの……?)


ウララは、ようやく気づき始めていた。

自分が、ラートリーによって操られていることに。


ある日、ウララが離宮内を歩いていると、忠臣の一人を見かけた。

笑顔を作って呼びかける。


「ラッツ」


「これは陛下、ご機嫌麗しゅう」


「今日はお願いが一つあります」


「何でございましょう?」


「シズク女公とトウガ公と面会したいのですが……」


「……も、申し訳ありません。

 私はラートリー閣下に呼ばれておりまして、

 急がねばなりませぬ。

 このお話は、また別の機会に。

 それでは失礼致します」


いままで忠臣として、信じていた廷臣ラッツでさえ、

ラートリーの顔色を窺い、ウララとは距離を置き始めた。


ついに、ウララは確信を得た。


(私は……囚われている。

 また、失策をした……)

★★ライト層読者さんへの簡単説明コーナー★★

挿絵(By みてみん)

はーい!作者子ちゃんによる、簡単に説明するコーナー!

硬派な人はスルーしてくださいね。ちょっとやってて恥ずかしいので…。


第七十四話「囚われの女帝」、今回はウララ陛下の視点で描かれました!

ウララ陛下が、少しずつ真実に気づいていく過程が、本当に辛かったです…。


最初は「戦いが終わった!」って喜んでたのに、「なぜ帝都に戻れないの?」「なぜ元帥府は解散されないの?」って疑問を持ち始めて。


そして、廷臣が「今後、陛下への報告は、全て元帥府を経由して行うよう」って言われたときの、ウララ陛下の表情が目に浮かびます…。

一番切なかったのは、忠臣だと思っていたラッツまでもが、ラートリーさんの顔色を窺って、ウララ陛下と距離を置き始めたことです。

ウララ陛下、完全に孤立してるんですね…。

そして、最後の「私は……囚われている。また、失策をした……」って、ウララ陛下、ついに気づいちゃったんですね。

でも、もう遅いんです…。

ラートリーさんの完璧な情報統制の中で、ウララ陛下は何もできない「囚われの女帝」になってしまいました。

ウララさんって善良なんです。素直で平和を願い、民の幸せを願い。

名君なのですが、政治慣れだけはしていませんでした……。


ラートリーはウララの血脈しかみていません。

ウララさんが可哀想すぎる。

次回も、絶対見逃せませんよ~!

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