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紅凰の学園戦活  作者: ろーくん
第二編:アルタクルエ国際戦技大会

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第2章4 上が出張れば揺らぎはしない



 観客席からは素直に興奮と称賛の声が上がる。

 だが、各国選手たちからは戸惑いの声が少なくなかった。


「ルクシャード代表は何を考えている?」「事前のお遊び試合にチームリーダーが出るとは?」

「戦闘スタイルは皇国内での試合と変わってないらしい」「本戦前にたやすく手の内を晒すとは、まさか何も考えていないのか?」


 どこの国の選手団も当然、主戦力選手はこの個人戦には出てきてはいない。本戦トーナメント前に手の内を明かしたくないのは皆同じだ。

 しかしルクシャード皇国代表チームはなんと、チームリーダーのはずのガントが出てきて、当然のようにその腕前を披露していた。




「それまで! 勝者、ルクシャード皇国代表、ガント選手」

 そうこうしている内に、ガントの2戦目も終わる。


 どこの国も絞りに絞って仕方なく、手の内がバレても問題ないであろうセカンダリーからの比較的弱いメンバーが出場しているおかげもあって、ガントは当然のように勝ち星を重ねてゆく。

 その様子に他チームの中には、ルクシャード代表は本戦での名誉よりもこの突発的な個人戦で勝ちを集めることで世にアピールする安い腹積もりなのだろう、などと嘲笑するような声も出始める。


 だが実は、各国代表はこの個人戦のせいで少しチーム内がギクシャクしていたのを、ルクシャード皇国代表をあざ笑う事で誤魔化そうとしていた。




「―――不和、ですか?」

 ミュースィルが少し不思議そうにしながら、自分が用意してきたサンドイッチを頬張っているシオウに問いかけた。


「ふぁあ……モグモグモグ、ゴクン。どこのチームも手の内は明かしたくない。と、なると半ば犠牲を差し出すような形で、チームで一番戦力にならない(・・・・・・・・・)と判断したヤツを、この個人戦に出してきた。それがどういう事かは、ミューなら何となく想像つくだろう?」

 単純に戦力として比較したとき、当然ながらチームのメンバーでも差があるのは当然。しかしそれはあくまで “ 戦力 ” という物差しだけで測った場合だ。


 チームメンバーは全員人間である。強さ弱さの前に、人と人との関わり合いというモノが存在する。ましてやこれから大会で一定期間ともに戦う仲間同士だ。


「ふぁぐ、ムグムグムグムグ……。たとえば“お前が一番弱いから”とか“お前が一番戦力にならないから”って理由でこの個人戦に出場させられたら当然、その本人は傷つくな? ……だけど、その言われた本人にもチーム内での人間関係ってものがある―――仮にミューが、お前はお荷物だ! なんて他のヤツに言われたら、スィルカはどう思う?」

「そんなモン、言ったヤツはその場で蹴とばしますねー」

 言いながらスィルカは、シオウの言わんとしている事を理解した。


「そういうこと。仲間同士で不和が生まれるってわけだ。もちろんその温度差はピンキリだろうが、いくら試合中は個人戦でもチームで3勝しなきゃあ次へは上がれないトーナメントが待っている中、その不和は大小関わらず影響を及ぼすだろうな」

 特に試合順などのチーム戦略という点において、問題となるだろう。そう言葉を結ぶとシオウは、3つめのサンドイッチをミュースィルのヒザ上バスケットから取り出し、食べ始めた。


「はー、なるほどですー。それでガントさんが適任ゆーことですかー。ヘンに本戦への影響を考慮せーへん方が、チーム内の不和を招かない……それに、ガントさんのスタイルやったら、幅広い戦闘に対応できるんで個人戦でもウチはそれなりに戦績も上げられるしー」

 この個人戦は、最終的に何ら大会成績には結びつかない。とはいっても客は各国来賓ばかりだ。ルクシャード皇国代表として、ここで勝ちを重ねることは国の威信という意味では多少なりとも貢献するので、手の内をさらすリスクはあってもまったく実入りがないわけではない。


 スィルカはそう評価したが、シオウはそれに対して60点と答えた。


「ガントのヤツが適任なのは、アイツのあのスタイルがどれだけ事前にバレたところで問題ないからだよ。それが一番大きい」





―――同じ頃。


 リッドとジクーデン、ジッパム、モーロッソの4人は闘技場の外、大会で使用する武具について承認をする部署に訪れていた。


「はい、確かに承認いたしました。お運び入れしていただいて結構です。……しかし、なかなか重厚な武装ですねぇ、使用にはさぞパワーが必要でしょうに」

「まーなまなー。でも心配はむよよんですよーっと」

 ジクーデンは、相変わらず妙ちくりんな言葉遣いで審査官に応対しながら、箱の一部に手をかける。

「実際、それだけに到着が少し遅れたわけですが、スケジュールがズレたおかげで本戦には間に合います、ありがとうございました」

 ジッパムが礼儀正しく審査官にお礼を述べつつ、ジクーデンとは対面する角を持ち上げる。


「よいしょ……と。ふう、しかし4人がかりですか……この重さ、確かに心配されるのも致し方ないですね」

 運びはじめてすぐに、モーロッソがその重量に驚いた。


「ま、アイツならコレでも問題ないんだろうさ。だからこそわざわざ特注で作ってもらったんだろうしなー」

 能天気に話すリッド。モーロッソの反対側を持つその手には、4人で運んでいてもズシリと重みを感じてはいる。

 しかしさほどの事はない。これで戦うという者が他でもない、あのガントなのだ。

 そして何より、この武装を勧めたのが我が悪友殿なのだから何一つ、懸念する必要はないと、リッドは気楽に箱の運搬に取り組む。


 布に包まれた箱の中で隙間から差し込んだ光を、その重厚な金属の表面でもってしてギラリと照り返すその武装は、己の出番を今はまだ静かに待っている……。




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