第2章3 エキシビジョン個人戦
カァンッ、ガキッ! ガッガッ、ギャギャンッ!!
「くっ……」
ヘネスイア王国代表チームの1人、ジャーポンドルは一度間合いを開け、自分の鎧の肩あたりを伺う。
決して安手ではない金属鎧の表面装甲から薄っすらと湯気が立っている―――凄まじいパワーが、対戦相手の一撃に宿っていたことを物語っていた。
ワァァアァァァ……
アルタクルエ国際大会、闘技場。観客席は主に、参加国の賓客が中心となって埋められている。
とはいえ一般の観客はいないのでパンパンというわけではない。
ましてやスケジュール変更により本戦トーナメントではなくエキシビジョンのランダム対戦による個人戦。観客席の入りは8割といったところだった。
ブンブンブン……ザン!
「どうした。それでおしまいか?」
ガントは軽く大振りの剣を回して闘技場に突き立てる。
くじ引きで決まった対戦相手、ジャーポンドルとの戦いはなかなかで、尖ったモノはないものの、真っ当な戦士同士の決闘のような、なかなか猛々しくも見ごたえある内容で、観客の目を楽しませていた。
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「相手は随分と細長手ですわねぇ。あのようなお体でガントさんのパワーを受け止め、よくもまあ折れたりしないでいられますこと」
闘技場脇のルクシャード皇国代表チーム専用ベンチにて、自称支援団長のエステランタが感心というよりも呆れたように口にする。
ルクシャード皇国での選抜大会にて実際にガントと戦ったことがあるだけに、そのパワーを身をもって理解している彼女は、自分なら今の攻撃は絶対に避けますわね、と両肩をすくめた。
(※「第一編 10章 閑話:チーム・エステランタの善戦」参照)
「こ、この大会では木製武具じゃないので、防具も本格的なものですし。でもそれはガントさんも同じなわけで、ううん~……」
エステランタの隣で同じく支援団としてベンチ入りしているノヴィンが、緊張しながら戦いを分析する。しかし追いつかない。
エキシビジョンとはいえさすがは各国の代表選手だ。その動きや技はルクシャード皇国の選抜大会で見てたレベルとは比較にならない。
何せルクシャード皇国チームにおける実質最強といえるガントを相手に、対戦相手は当たり前のように渡り合っている。ノヴィンは何度も生唾を飲んでいた。
「防護・装身聖具……でしたでしょうか? あの魔導具の力があるとはいえ、武器も防具も実戦のモノですものね。とても―――」
そこでミュースィルは言葉を切ってしまう。
恐ろしいと続けそうだった呟きは、試合に臨む選手に対する無礼になる気がしたからだ。
「あ、動きだしましたっ!?」
ウリンが思わず発した言葉に引っ張られるようにルクシャード皇国代表チーム支援団の面々は、再び闘技場の上に視線を向けた。
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「うぉおおお!」
ジャーポンドルが覚悟を決めたと言わんばかりの表情でガントに向かう。
振り上げたバトルアックスは同種の武器の中では取り回しのしやすい小ぶりなタイプだ。
それでも重戦斧たる攻撃性を維持している。並みの者が用いてもその重量から相手を殺傷できるほど強力な一撃が放てる。
ジャーポンドル自身が細身とはいえ、振るい出される攻撃は確かな威力。
ブオオッ!!
「(たとえ熟達した将兵でもこのレベルを真っ向から受け止めるは難儀であろう、だが!)」
ガントは、大振りとはいえ巨大ではない両手剣をまっすぐに構え、シンプルな受けの姿勢を取る。
カッ! ギィイイーーーッ!!!
金属同士がぶつかり、そして滑って嫌な摩擦音をたてた。
「っう、まさか受け止めきるだなんて!?」
ジャーポンドルには自信があった。いかにしっかりとした剣であってもこの一撃を正面から受けきるのは難しいはずだと。たとえ受けきっても態勢は確実に崩れ、そこを狙って次撃を繰り出すつもりでいた。
しかしガントはというと―――不動。
1歩たりとも攻撃を受けた場より後ずさることもなければ僅かによろめきすらしなかった。
「今度はこちらの番だ。ぬぅんっ!!!」
ギャンッ、ビュ……ボッ!!!
受け止めたジャーポンドルのバトルアックスを上方に弾く。
しかしさほどの事もない。彼ならば1秒以内に防御可能な位置へと戻せるだろう。
だがガントの次手はその1秒を数えるを待つはずもなく―――
ドギャァンッ!!!
「ぐあはっぁああぁっっ!!!?」
ジャーポンドルをぶちのめし、ぶっ飛ばした。
ピピピピ……ビブー!!
吹っ飛ばされたその身体が地面につく前に防護・装身聖具が異音を発する。
同時に闘技場の場外4隅にある大きめの箱のような魔導具も同じ異音を発した。
「それまで。勝者、ルクシャード皇国代表、ガント選手!」
防護・装身聖具が、規定値の被ダメージ量に達した音を受け、審判が勝者を宣言した。




