第二話 備えあれば
ギルドの受付へ向かい、依頼書を差し出した。
「こんにちは、レオンさん」
「こんにちは、ユリシアさん、コレお願い」
彼女は、俺が冒険者になった頃から世話になっている受付嬢だ。
けれど、当時から見た目が全く変わっていない。「年を取らないんじゃないか」と、冒険者の間ではもっぱらの噂だ。
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもないです!」
噂の真偽を考え込んで少し遠い目をしていたからか、不思議そうに声をかけられる。
「新ダンジョンの調査ですか…まだ情報が本当に何もありませんけど、大丈夫ですか?」
「だからこその調査でしょう?確かに俺が情報の無い場所へ行くのは珍しいですけど」
ユリシアさんは、俺が事前調査を欠かさない性格だと知っている。
だからこそ、今回ばかりは心配そうだった。
「大丈夫です。十二分に準備と警戒はしますから」
「そうして下さい。メンバーいつもの4人ですか?」
「はい、俺とガルド、ミナ、シオンの4人でお願いします。」
「はい、受付しました。無事に戻ってきて下さいね。」
ニッコリと笑顔で送り出してくれる。
営業スマイルだと分かっていても頬が緩む。
「お待たせ、受付済んだし準備しよう。」
「今回も鼻の下伸ばしてたねぇ〜」
「うるせぇ、男なら仕方ないんだよ」
ミナが少しからかってくるが、いつも通りに対応する。
「よっしゃ!なら、一旦解散だな!出発は明日の朝で良いよな?」
「おう、取り敢えず五日分で準備してくれ。日程としては、探索三日間で四日目に帰還予定で」
「なら、四日分で良いんじゃねぇか?」
「情報が何も無いんだ。不測の事態を想定しないと」
「確かにね、何か有ってからじゃ困るものね」
「そういうこと、ミナは荷物持ちすぎるなよ。工具とか工具とか」
「えー?四日も試作お預け?」
出発は翌朝。各自で五日分の準備を整え、集合後に荷物を確認すると伝えて解散した。
俺も食料や薬品をそろえるため、商店が並ぶ通りへ向かった。
新ダンジョン――知らない場所に向かう興奮と、それ以上の不安が胸の内で入り混じる。
翌朝、俺たちはギルドに集合した。
「ガルド……荷物少なくないか?」
「あぁ?こんなもんだろ?」
「食料は良い、ランプとか包帯とかも持て」
「その辺はお前が持ってるだろ?大丈夫じゃねぇか?」
「俺は自分の分だけで手一杯だよ!俺の物が壊れた時も考えろ……」
「分かったよ……しょうがねぇな」
まずは、ガルドの荷物を確認した。
ガルドは渋々ながらも言うことを聞き、足りない物を買うため売店へ向かった。
その背中を見送ってから、ミナに向き直る。
「ミナ、遠征中は修理と調整以外に必要な工具は持つなっていつも言ってるだろ」
「全部必要だよ?」
「嘘つくな、半分ぐらいは要らないだろ」
「むー」
「んな顔しても駄目なものは駄目だ」
「……分かった」
不承不承ではあるが、必要無い工具を宿に置いてくるため、いったんギルドを出ていった。
「シオンだけだよ。毎回ちゃんと準備してきてるの」
「あの二人も真面目にやってるのは知ってるんだけどね」
「だから、問題なんだけどな…」
真面目に準備してアレなのはどうかと思う。
二人に言った手前自分の荷物に不備が無いように再確認する。
五日分の保存食と、二日分の水。残りは携帯濾過器で補う予定だ。
予備の火打ち石。
水袋の漏れもない。
剣の刃こぼれもない。
包帯の枚数も十分。
「よし、問題無いな」
「買ってきたぞ」
「置いてきたぁー」
全員揃ったところで、出発した。
「確認だ。目的は、調査。マッピングと魔機械の実態調査を三日。四日目に帰還する」
三人の顔を見て続けた。
「新ダンジョンだから、いつもの様に事前情報はない。慎重に進む。最優先は、少しでも成果を持って全員で帰ることだ。質問や異議のあるやつは?」
「無いわ」
「大丈夫〜」
「早く行こうぜ!」
「よし、なら出発だ」
俺たちは、街の出口へ向かった。
目指すは、いまだ何の情報もない新ダンジョンだ。




