【あたたかい客室乗務員の出迎え】
今回の作戦が終わった時点で、101式司令部偵察機も輸送機と一緒に日本に戻るように指示した。
長くいると、おそらくろくなことはないだろうから。
彼らが帰るときに、大本営と陸軍および海軍に部隊を派遣してくれたお礼の手紙を託した。
そして私がアルジェに戻る日には、まるで学校の卒業式のように花道ができて基地の人たちに握手を求められながら迎えに来たDC-3輸送機に乗った。
基地には軍楽隊なんてないのに、ありあわせの楽器や楽器もどきにコーラスをあわせてAuld Lang Syne(日本名、蛍の光)が歌われた。
日本の蛍の光は、4番まであり、特に3番と4番の歌詞は軍国主義的な一面もあるが、原曲のAuld Lang Syneは5番まであり、この4番と5番を聞かされて目頭が熱くなってしまった。
原曲の4番と5番の歌詞は以下の通り
〽私たちは、朝から日が落ちるまで水遊びをした。
けれども昔から大きな海が荒波を立てて私たちを隔てていた。
〽いまここに親友の手があり、私たちはお互いにその手を取り合う。
そしていま私たちは友情の杯を飲み交わす。古き昔のために。
(※これがAuld Lang Syneの4番と5番の、大まかな歌詞の和訳となります)
最後にアイクとハグを交わし、私はDC-3の機内へと入った。
機が飛び立ち、見えなくなるまで、彼らは手を振っていてくれた。
窓の外を眺めていると、背後から接客係の女性に「Can I get you a coffee?(珈琲をお持ちしましょうか)」と、声をかけられた。
私は彼女の問いに答えないで「Let's have a quick chat(少し話しましょう)」と彼女を誘った。
彼女は私の隣の席に座りながら「You're really such a playboy(あなた、プレイボーイなのね)」と甘い声で言った。
私はずっと窓の外を見ていた目を離し「You are the one(君は特別さ)」と言って、振り向きざまにその肩を抱き寄せた。
彼女は抱き寄せられるままに体をあずけ、私たちは唇を合わせた。
「声で分かったの?」
「いいや、雰囲気」
「雰囲気?……匂いとか??」
彼女は真顔で、服の袖を上げてクンクンと鼻を鳴らしていた。
“可愛すぎるぞ、薫さん!”
そう。
客室乗務員の服を着て、英語で話しかけてきたのは、薫さん。
私は、きっと薫さんなら、あのボビー大佐がどう言おうと迎えに来てくれると思っていたと言うと薫さんはそのボビー大佐が休暇をくれたのだと教えてくれた。
ボビー大佐の方からこのタイミングで休暇をくれたことを聞いて、薫さんがこのアメリカでもきちんと仕事をして周囲の人たちとちゃんとコミュニケーションをとることができたことを知った。
薫さんは日本にいたときから自由奔放で、なんとなくアメリカ的な人だと思っていて、私にとってはそれが逆に心配だった。
今回のようにお互いの交流が短期間の場合、積極的な交流を避けることでトラブルを防ぐことができる。
しかし薫さんはそのようなことをする人ではない。
もともと人とのコミュニケーションを大切にするタイプだし、今回の目的のために積極的に知識を得ようと頑張るタイプ。
女性はわりと男性の中ではうまくやれるが、女性の中ではいくつものトラブルが起こりやすい。
女性の敵は女性!なる言葉もよく聞く。
だから心配していたが、どうやら薫さんは女性の中でも上手に人間関係を築くことができる人だと分かりホッとした。
「珈琲を淹れてくるね」
薫さんは少しの間、私に甘えたあと席を立ち、珈琲を持って戻ってきた。
「では、再開に乾杯しましょう」
珈琲で乾杯とは珍しいと思ったが、アルジェに到着したあとも私はまだ仕事が残っているのでお酒を飲むわけにはいかない。
薫さんも、そこを考えてのことなのだろう。
お互いにカップを持ち上げた。
「Here‘s looking at you, kid(君の瞳に乾杯)」
カップを持ち上げた私が薫さんにそう言うと、彼女の大きな瞳にはウルウルときれいな水が満ちてきて、まるで大きなぬいぐるみのように私の胸を温めてくれた。
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