【No Way!④】
戦線の火ぶたが切って落とされた。
数で劣勢に立たされているF4Fは左程攻撃する意欲はなく、うまくBf109の攻撃をかわしていた。
ちょうどそのころ、西の水平線上空にタエの飛行場を発進してきた部隊が見えたので、その距離と大まかな高度をアイクに伝えると、彼は「いいタイミングだ」と言ったあとコンスタンティンから出たF4F部隊に高度を下げてBf109を振り切って、いったん戦場から離脱して高度を戻すように指示をだした。
うまい戦術だ!
戦闘機同士の戦いは高度が高いほうが圧倒的に有利になる。
いまドイツ軍のBf109のパイロットたちは、急降下で逃げるF4Fを撃墜することに躍起になっていて自分たちの高度が下がっていることに気が付いていない。
このまま同じF4Fと戦うのであれば圧倒的に有利となるが、彼らにとって脅威になる新手はすぐ近くまで来ている。
しかも高度を十分に保った状態で。
これが彼らBf109のパイロットたちに、どのような悲劇を生むのか……。
タエの飛行場から出撃したパイロットたちは、攻撃圏内に入るまで彼らの動きを観察し、隊内で誰がどの部隊を狙うのか十分にコミュニケーションを取っていた。
そして攻撃圏内に入るや否や散会して、各々が狙うべきターゲットに的を絞り一斉に攻撃を始めた。
最初の攻撃で十数機のドイツ軍Bf109が、神様から何も知らされないまま炎を上げて海面に墜落した。
その後、新たな敵の存在を知った十数機が逃げる猫を追うのを止めたところで煙を上げた。
最後に自分たちのミスに気が付いた残りの十数機が、機首を上げようと試みて速度を落としてしまい自滅した。
運よく混乱の中で逃げ道を見つけた十数機だけが、戦場から遠のくという代償を払って逃げ延びることができた。
いっぽう海面すれすれに飛行していたドイツ軍のウォッケウルフFw190戦闘爆撃機隊は、新たなアメリカ軍の存在に気付き慌てて機首を上げて高度を整えようとした。
だか彼らは目の前で行われている自軍のBf109の凄惨な出来事に気を取られていて、振り返ることを忘れていた。
戦場から離脱したように大きく回り込んでいたアメリカ軍のF2Bが、すぐ後ろに迫って来ており爆弾を抱いた狼たちの群れを虎視眈々と狙っていたことに気が付かなかった。
気が付いたのは、後ろ上方から矢のような赤い雨が機を叩き始めたとき。
夕立ではないことは彼らもわかっただろう。
だが、どこで雨宿りすべきか、その場所を見つける事はなかった。
F2Bバッファローの群れに、完全に後部上空をとられ、行く手には山猫の群れが彼らを待ち構えていた。
狙うはずの獲物に前後を塞がれた彼らの生き残る道は、届けるはずの荷物を捨ててうまく戦場からの脱出を試みることだけ。
しかしそれも容易な事でなかったのは、言うまでもない。
低空で侵入してきた敵の状況に気を取られている暇はない。
もうレーダーが捉えているであろうアンナバーから南東の空の奥に、新たな航空機編隊の影が見て取れた。
これはチュニジアを南に山越えしてきた爆撃機隊。
更に低空から侵入してきた部隊の奥にも、戦闘機に護衛されたJu87ストゥーカ急降下爆撃隊がいて、この部隊は先に進入した自軍の惨状を目の当たりにして、既に十分な高度を取っていた。
いくらレーダーが便利だといっても、機種までは判別できないだろうからアイクに状況を報告すると感謝された。
チュニジアを越えて進出してきた爆撃機隊には、同じくチュニジア国境の南部にあるテブサの飛行場から出撃した部隊が爆撃機の後ろ方向から攻撃し、護衛の敵戦闘機が慌てて反転したところをまた狙い撃ちして撃退していた。
二段攻撃で遅れて地中海から侵入を試みたJu87ストゥーカ急降下爆撃隊には、遅れてやってきたべジャイヤの部隊がタイミングよく飛来して撃退した。
結局この日のドイツ軍の空からの攻撃は5度もあり、我々は全ての戦闘機を投入してこれらを殲滅した。
戦果はそれだけでなく、F4Fのパイロットが偶然潜水艦の潜望鏡に気付いたのをきっかけに私も協力してドイツ軍のUボートを探すと、この日5隻のUボートの発見に成功し、そのうち4隻の撃沈に成功し、取り逃がした1隻も後日駆逐艦が発見して撃沈した。
おそらくこのUボートたちは、この付近に空母が潜んでいると思って来たのだろう。




